#14 ランチア・デルタHFインテグラーレ・エボリューション(スペック編)
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【趣味人ジドウシャ部】︎

#14 ランチア・デルタHFインテグラーレ・エボリューション(スペック編)


クルマの新旧や機能だけでなく、趣味性の高いクルマ、さまざまな趣味への汎用性が高いクルマを紹介するこの連載。14台目は「ランチア・デルタHFインテグラーレ・エボリューション」です。

 

1980年代後半から1990年代初頭にかけて、WRC(世界ラリー選手権)を6連覇。伊ランチアのラリーカーの原型となったこのモデル。クラシックカーブームがひと息ついたとはいえジリジリと相場が上昇する現在、狙っているのならいまがラストチャンスと思われます。



世界初となる技術革新のオンパレード、それがランチア

低く身構えた野生動物のようなスタイルが、開口部の多さと相まってスパルタンなルックスを産み出しています<br />
 出典  Funmee!!編集部
低く身構えた野生動物のようなスタイルが、開口部の多さと相まってスパルタンなルックスを産み出しています


ランチアといえばイタリアの小型車ブランドと認識している人も多くいるかも知れませんが、同社はフィアットグループ内で高級車を手掛ける自動車メーカーでした。

 

創業者はヴィンチェンツォ・ランチア。フィアットのレースドライバーとして頭角を現し、その後、開発部門で要職を務めた後、1906年にトリノで創業。同社のエンブレムは槍(イタリア語でランチア)と、そこにはためくランチアの旗、そしてステアリングの3つがモチーフとなっています。



ランチアのエンブレムも時代の流れに呼応しデザインの変貌があります。この時代まではトラッドな4本スポークのステアリングの図柄が残っています<br />
 出典  Funmee!!編集部
ランチアのエンブレムも時代の流れに呼応しデザインの変貌があります。この時代まではトラッドな4本スポークのステアリングの図柄が残っています


ランチアは技術革新の代名詞のようなブランドです。いまでは一般的なモノコックボディと独立式サスペンションを1922年に市販車の「ラムダ」で実現。1937年には狭角のV型エンジンと風洞実験による初のプロダクションモデル「アプリリア」をデビューさせています。



上方から見たランチア・デルタHFインテグラーレ・エボリューション。ルーフエンドのテールゲートスポイラーは可変式(アナログな固定調整式)です<br />
 出典  Funmee!!編集部
上方から見たランチア・デルタHFインテグラーレ・エボリューション。ルーフエンドのテールゲートスポイラーは可変式(アナログな固定調整式)です


ランチアとしてモータースポーツに参戦するのは2代目となるジャンニ・ランチアの時代で、ミッレ・ミリアやタルガ・フローリオ、そしてF1へと進出しました。

 

F1は志半ばで資金難となり、エンジニアとマシンをチームごとフェラーリへ譲渡することに。処女作ランチアD50はデビュー戦となる1954年のスペインGPでポールポジションと最速ラップを記録していただけに大変悔やまれます。



メルセデスが新参のランチアに冷や汗をかかされたというほど速かったF1マシンのD50。資金難から1955年シーズンでその幕を閉じることに。<br />
 写真提供  FCA
メルセデスが新参のランチアに冷や汗をかかされたというほど速かったF1マシンのD50。資金難から1955年シーズンでその幕を閉じることに。

 

世界ラリー選手権で大暴れ。黄金期がやってきた

ランチアの歴代ラリーカー。後方左からフルビア、ストラトス、037ラリー、デルタHFインテグラーレと並んでいます。最前列のモデルは1989年シーズン途中から投入された16バルブエンジン搭載車です<br />
 写真提供  FCA
ランチアの歴代ラリーカー。後方左からフルビア、ストラトス、037ラリー、デルタHFインテグラーレと並んでいます。最前列のモデルは1989年シーズン途中から投入された16バルブエンジン搭載車です


今回は車名が長いので以後「ランチア・デルタHF」と略させていただきますが、この「HF」の二文字は同社の高性能モデルに与えられる特別なエンブレムでした。

 

赤い象の絵柄は「フライングエレファント」と呼ばれ、象は力の象徴ということからアイディアに盛り込まれます。

 

このエンブレムを生んだのはWRCで「ランチア・スクアドラ・コルセ」を、F1でエンツォ・フェラーリ亡き後、「スクーデリア・フェラーリ」を率いたチェザーレ・フィオリオ。



ヘッドライト上部の僅かなスペースも冷却対策に活用。こうした機能的なディテールもランチア・デルタHFシリーズの魅力を高めています<br />
 出典  Funmee!!編集部
ヘッドライト上部の僅かなスペースも冷却対策に活用。こうした機能的なディテールもランチア・デルタHFシリーズの魅力を高めています


学生時代からレース活動をしていたフィオリオは、1962年のモンテカルロ・ラリーに参戦するためプライベーターながらチーム「HFスクアドラ・コルセ」を結成。卒業後もレース活動を続け、やがてその活動がランチアの目に止まり、ワークスチームを任される事になります。

 

若き闘将フィオリオは、やがて名車となるランチア・ストラトスを見出し、開発時にはモデナに乗り込みエンツォ・フェラーリに直談判。そして、ディーノ用2.4ℓ V6エンジンを譲り受けることに成功します。

 

結果、このストラトスは1974年から1976年まで3連覇をもたらします。こうしたフィオリオの功績から「フライングエレファント」をあしらった「HF」のエンブレムはランチアの高性能モデルを飾ることになるのです。



変哲のない5ドアハッチバックから生まれた栄光

ハイライトに注目していただくとブリスターフェンダーの凄みがご覧いただけます。躍動感がヒシヒシと伝わるようです<br />
 出典  Funmee!!編集部
ハイライトに注目していただくとブリスターフェンダーの凄みがご覧いただけます。躍動感がヒシヒシと伝わるようです


モータースポーツであるラリーは節目節目で大きなルール改正が行われます。なんといってもこの競技の人気を支えるのはクルマのカタチです。よって、多くの時代が市販車に近いカタチであることを要求されます。

 

WRCに参加するには市販車がベースであることが前提条件ですが、時代により年間生産台数、エンジンやサスペンションの基本構成のモディファイに制限が設けられます。


1987年にWRCデビューしたランチア・デルタHFの時代は、大幅に規制された時代で、それ故に市販車の基本性能が勝敗を左右する時代でした。



一般公道を利用し、悪路から舗装路まで、様々なコンディションで戦うのもWRCの見所。動物との衝突に備え大型のバンパーを追加したサファリ仕様もイケてます!<br />
 写真提供  FCA
一般公道を利用し、悪路から舗装路まで、様々なコンディションで戦うのもWRCの見所。動物との衝突に備え大型のバンパーを追加したサファリ仕様もイケてます!


新たなレギュレーションの導入にどのメーカーも短期間に新型車を開発できず苦慮していましたが、ランチアが同社のラインナップで目をつけたのが変哲のない5ドアハッチバックのデルタでした。



こちらが原型となる1979年に誕生したランチア・デルタです。なんとなく面影は残りますが、その歴史はまさにエボリューションと言わざるを得ません<br />
 写真提供  FCA
こちらが原型となる1979年に誕生したランチア・デルタです。なんとなく面影は残りますが、その歴史はまさにエボリューションと言わざるを得ません


1979年デビューのこのモデルは、ランチアがVWゴルフを追撃すべく送り出したモデルで、デザインはジウジアーロが担当しました。全長は4mに満たず、前後のオーバーハングを極力切り詰めた秀逸なデザインが特徴です。



最高出力165hpから始まった2ℓ直列4気筒ターボエンジンは、最終的に215hpまで向上しました<br />
 出典  Funmee!!編集部
最高出力165hpから始まった2ℓ直列4気筒ターボエンジンは、最終的に215hpまで向上しました


開発陣はこのモデルに高性能の2ℓ直列4気筒ターボエンジンと4WDシステムを組み合わせ急ピッチで開発・生産を始めます。この荒業を実現したのはフィアットのモータースポーツ部門を担っていた当時のアバルトでした。

 

アバルトといえばサソリのエンブレムで有名ですが、その起源はフェリー・ポルシェ指揮の元、あのチシタリアを開発したメンバーが創設したエンジニア集団です。

 

WRCを統括するFIA(国際自動車連盟)から1986年のクリスマスまでと期限を切られたランチアでしたが、なんとか許可が降りる初年度3,800台の生産枠をクリア。無事、デビューにこぎ着けます。



アナログのメーター類がずらりと並び、まさにコックピットの様相を見せるインパネ周り。スポーツ心をくすぐります!<br />
 出典  Funmee!!編集部
アナログのメーター類がずらりと並び、まさにコックピットの様相を見せるインパネ周り。スポーツ心をくすぐります!


1987年から1992年まで、ランチア・デルタHF は破竹の勢いで6連覇を飾りワークス活動を終了します。あまりに勝ちすぎたのでしょうか、親会社のフィアットは当時人気の高かったDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)に1993年からアルファロメオで参戦を決めていたのです。



4つのフェンダーさえ膨らんでいなければ、ごく普通の5ドアハッチバックにしか見えません。クラシックな佇まいも魅力を高めているようです<br />
 出典  Funmee!!編集部
4つのフェンダーさえ膨らんでいなければ、ごく普通の5ドアハッチバックにしか見えません。クラシックな佇まいも魅力を高めているようです


「ランチア・デルタHFインテグラーレ・エボリューション」の特徴的な膨らんだフェンダーは毎年改良を必要とした航跡であり、ひと目見て分かる進化のカタチです。

 

市販モデルは最終的にレース活動終了後もその人気から1993年にエボリューションIIへと発展。1995年に惜しまれつつ生産を終了します。

 

限りなくレースカーに近い市販車。そして栄光に満ちたストーリー。ランチア・デルタHF シリーズの魅力はその点に集約されるのです。



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■撮影協力

ヴェローチェ


フィアット、アルファロメオ、ランチア、マセラティなど、さまざまなイタリア車を扱う専門店。車両販売は本国直輸入の新車まで幅広く対応でき、メンテナンスで預かった車両は、作業終了後に屋内保管するなど、丁寧な対応を心掛けています。レアなパーツのストックもあり、イタリア車オーナーを万全のサポートで迎えてくれます。

 

千葉県船橋市習志野5-2-3

TEL:047-472-8777

営業時間:9: 00~18: 00

休み:水曜、祝祭日、GW/夏期/年末年始休業



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文:教重誠一(Seiichi Norishige)

写真:新井康介(Kosuke Arai)


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2017年12月19日
Funmee!!編集部
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