ボトルに詰めた香りとともに、広がるビール好きコミュニティの輪


東京・二子玉川の地ビールとして注目を集める「ふたこビール」は、ビール作り経験ゼロのわずか2名のスタッフでスタート。

 

現在では基本の4種類に加え季節限定のフレーバーがあり、多彩な風味を楽しめます。

 

そして、ただの飲み物を越えて、街を巻き込んだ大きなムーブメントへ――。

クラフトビールの可能性は、ここまで大きいんです!

 

 

街の花の名を冠したデビュー作


―― 初めはどのようなテーマでビールを作ったのですか?

 

女性ふたりで始めたので、女性らしく上品で華やかな、お花を想起させるような香り高いビールにしたいと考えました。出来上がったのが「ハナミズキホワイト」というホワイトエールです。



二子玉川の街の花、ハナミズキをイメージしたホワイトエール

 出典  Funmee!!編集部


―― ハナミズキは二子玉川の街の花ですね。どのくらいの生産量から始めたのでしょう。

 

最初は100ℓくらいから少しずつ始めようと思っていたのですが、そのサイズの機材が調子が悪く使えなかったんですね。次のサイズの仕込み釜は、10倍の量の1,000ℓ。まあ、なんとかなるだろうと思ったのですが……。

 

 

―― なんとかならなかった?

 

作ることは決めてしまったけれど、そもそも私たちはふたりとも売り方すら知らなかったんです。自分の醸造所で作れば、卸免許がなくても卸すことはできたのですが、私たちは「ファントム」という手法で始めたので小売店に卸すことができなくて。そのせいもあって、初めは販路が全くなかったんですよ。



ビールを通した偶然の出会いに助けられて


―― では、どうやって売っていったんですか?

 

まずは、二子玉川の小さなお祭りなどのイベントに出店していました。あるとき、サーバーの調整に必要な道具を忘れてしまって、近くの出展者にお借りしたんです。そのお礼にビールを差し上げたのですが、その方がたまたまお酒の卸しをしていた方で、気に入ってくれて流通していただけるようになりました。

 

 

―― それはすごい偶然ですね。パブなどお店の方はどうでしょう?

 

私たちは営業の仕事経験もないし、何もツテはなかったので飛び込みです。初めは、二子玉川に一軒だけあったクラフトビールが飲めるお店に「すみません、ビール作ったんですけど……」って持ち込んだんです。そうしたら、試飲もせずに「いいよ」って言ってくれて、嬉しかったですね。その後も人づてにじわじわと声をかけてもらっています。



目指すのは、二子玉川で作られ、二子玉川で楽しんでもらえる地ビールだった

 出典  Funmee!!編集部


―― 改めて、偶然の出会いを含め、ビールの人をつなげる力を感じますね。

 

こんな小さな出会いから注文が入るようになるなんて、思いもよらないですよね。細々とでも続けていくことが、何かにつながっていくんだなと感じました。正直、大変で辞めたくなることもあるんですけど、副代表の小林とは細々でもいいから、火を灯し続けようって話しています。



なんでもおもしろがって、人に伝えることで夢は叶う


―― 今後は「ふたこビール」を、どのように発展させたいと考えていますか?

 

二子玉川駅の近くに、新しい醸造所と、そこにビールを飲めるスペースを併設したブルーパブという形での出店を目指しています。来年には具体的にカタチにしていきたい。そして、お店ができたら、周りの仲間に料理教室をしてもらったり、作品を売ってもらったり、やりたいことはたくさん考えています。

 

 

―― 市原さんが携わってきた、様々な人とものをつなげる“編集”という仕事が活きそうですね。

 

私は仲間内では「迷プロデューサー」と呼ばれていますから(笑)! なんでも面白がりつつ、妄想して、人に伝えることが大切なんだと考えています。結果的に自分の思うイメージと違うことはあるけれど、妄想を周りに伝えるうちにどんどん形になっていくんです。



松陰神社前や用賀で世田谷産のホップを育てるプロジェクトも進行中

 提供  市原尚子さん


――「ホップ畑を世田谷に作りたい」という夢もお持ちだとか。

 

そうなんです。今、世田谷のいろいろな方が協力してくれて、自家製ホップの栽培も始めています。近いうちに自分たちで育てたホップで作ったビールを、ホップ畑で飲む会も開催したいと思っています。



ふたこビールを手がける「ふたこ麦麦公社」代表の市原尚子さん。二子玉川付近の多摩川の河川敷にて

 出典  Funmee!!編集部


―― 製造、販売、栽培、イベント……さまざまな苦労がありそうです。

 

うーん、今は苦労に見合うくらい、毎日いろいろな新しい経験ができたり、出会いがあることが面白い。これはお金じゃ買えないことだし、すごい経験を毎日しているなと思います。


 

―― それもこれも、ビールを作り始めたことが全てですね。

 

淡々と過ごしていた日常も、それはそれで良かったかもしれません。けど、その生活ではお会いすることのなかったたくさんの人たちと、ビールをきっかけに会うことができました。ビールが人と人、物事をつなぐ力ってすごいなと、日々しみじみと実感しています。




■プロフィール

市原尚子さん

 「ふたこ麦麦公社」代表。二子玉川に暮らし、働きながら、ビール作り経験ゼロから立ち上げた地域密着型のクラフトビール「ふたこビール」が、大きな注目を集める。一児の母として、子育てにも奮闘中。


 

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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:池田圭

写真:宇佐美博之



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Funmee!!編集部

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