1日10分の世話で、確実に暮らしは豊かになる。『品品』店主・小林健二さんの、盆栽ライフのススメ


盆栽作家の小林健二さんは、盆栽ショップ「品品」を営業する傍ら、盆栽教室も開講しています。そこで今回は、「盆栽をはじめてみたい!」という方に向けた初心者のためのハウツーから、盆栽や植物が暮らしにもたらすメリット、小林さんの代表的な作品、今後の展望などについてたっぷりと語っていただきました。



“内面”や“家”が大事――盆栽は人と同じ。

 出典  Funmee!!編集部


―― 盆栽をやってみたいという人は、まず何から始めればいいのでしょうか。


盆栽を始めたいという方によく言われるのが、「何か簡単なものはないですか」という質問です。育てやすさに目が行くんですね。でも、その前に考えるべきは目的です。緑が見たいのか、花が見たいのか、実が見たいのか……。結局、どの植物もお手入れは必要です。まずは自分の欲しい植物を決めてもらうといいかもしれませんね。

 


―― 盆栽はお手入れが難しそうなイメージがありますが、初心者がいきなりできるものなのですか。


木によっても育て方、水のあげ方、置き場所、剪定の仕方など、学ぶことがたくさんあります。剪定※一つとっても、ある程度経験がないと、枝のどこを切れば美しくなるのかがわかりません。本で学ぶこともできますが、実践で木を切って学んだ方が近道ではあります。なので、できれば教室に通ってもらうといいかもしれませんね。

 

※樹木の枝を切り、形を整えたり、風通しを良くすること。

 


―― 小林さんも教室を開いていますが、生徒さんには、初めにどんなことを教えるのですか?


まずは土のことを話します。土は植物が長く生きるための家ですから、とても大事です。植物の根をほぐさないと、その根が健康的なのか不健康なのかわからない。人と一緒で、見た目や雰囲気で判断できないんです。人間だったら、「この人、普段はおとなしいけどお酒を飲むとすごく変わるな」とかってあるでしょう(笑)。盆栽も、表面に見えない部分が大切です。根や土の状態を見極められるようになると、より楽しくなってきます。



 出典  Funmee!!編集部


―― 日常的なお手入れは、どれくらいのペースでやるものなのですか。


水やりは植物が乾いたらやる、というのが基本です。何よりも大切なのは、木のコンディションを知ることです。春夏秋冬は人間の一日にもたとえられて、春は朝、夏は昼間、秋は夕方、冬は夜に該当すると言われます。植物も夜は寝たほうがいいので、冬になったら落葉樹の葉を落としてしっかり休ませるとか、そういう勉強が必要ですね。

 


―― 鉢はどのように選ばれているのですか。


うちの場合は白と黒が多いです。どんな暮らしをしているご家庭でも合わせやすいので。いろんな鉢を使って、どのような材質のものが暮らしに溶け込むのか試してほしいですね。



盆栽は生活を彩る「添え」。毎日の世話で心にゆとりが

 出典  Funmee!!編集部


―― 暮らしの中において、盆栽はどのような役割を果たしているとお考えですか。


生活の中における盆栽は、主役ではなくて「添え」だと思うんですね。緑はインテリアとして映えますし、見ていると癒されます。毎日10分世話するだけでも心にゆとりができ、それが暮らしの豊かさにつながるはずです。なので、盆栽をぜひ身近に置いてほしいですね。自分がつくった作品は可愛いものですし、世話を続けると愛着も湧いてきます。

 


―― なるほど、盆栽のある暮らしはとても楽しそうですね!


いいでしょう? 僕はお風呂から上がったあとにビールを飲む習慣があるんですけど、夜の11時半くらいに盆栽を持って外に出して、水をやりながらビールを飲みつつ眺めるんです。その時間が非常に気持ちよくてね。

それから朝までは盆栽を外に出しておくのですが、夜に水をやっておくと、土が保水して新鮮な酸素と水を早朝に吸ってくれます。夜は涼しいからカビも生えません。早朝の2、3時間で光合成も出来るので、夜に外に出して、朝になって出勤する前に取り込むと具合がいいんです。逆に言うと、植物の弱る原因は置きっぱなしにすることです。ほったらかしだと虫もつきます。どんどん動かして、手で触ってあげるといいですよ。



植物が身近にある暮らしの魅力を広く伝えていきたい


―― 盆栽と対峙しているときは、無心になって打ち込まれている感じでしょうか。


植物のスタイリストになった気分ですね。人間だったら、髪型を変えていつもと違う服を着たら、周囲の反応が変わりますよね。植物を見た時に、「この子はどういうふうにしたら美人になるかな、カッコ良くなるかな」ってイメージする。そして、その先に「こんな暮らしの人にはこんな木があったらいいだろうな」っていうのを想像してつくり込みます。



 出典  Funmee!!編集部



―― そんな小林さんの代表作はどんな盆栽ですか。


はりねずみ、亀、ひなどりなど、苔を動物の背中に見立てたシリーズは根強い人気があります。ほかにも、手のひらサイズのミニ盆栽なども好評です。みなさんが思い描くイメージを具現化したり、抽象的な形にしたりするものが多いですね。



―― 今年で独立して17年目ですが、「景色盆栽」という概念の普及をはじめ、ある程度やりたいなと思っていたことは実現できましたか。


正直にいえば、まだまだこれからだと思っています。でも、テレビや雑誌にも出させていただけるようになり、盆栽に興味を示してくれる方々が増えてきたのは素直に嬉しいですね。うちの教室に来るのは男性より女性が多いのですが、これも喜ばしいことです。盆栽の世界は男社会ですが、植物を愛でるのに性別は関係ないですから。

今後も、盆栽や植物が身近にあると暮らしが豊かになるということを、もっと広く伝えていきたいですね。




■プロフィール

小林健二さん

長野県小諸市出身。造園会社などでの勤務を経て、2002年に盆栽ショップ『品品』をオープン。植物によって人々の生活を豊かにすることをテーマに、モダンでシンプルな「景色盆栽」というスタイルを確立。盆栽作家として精力的に活動している。著書に、『プチ盆栽 おしゃれでかわいい緑のインテリア―景色盆栽入門』(新星出版社)、『はじめての景色盆栽 景色を鉢の中で表現する発想とコツ』(誠文堂新光社)などがある。

 

品品

東京都世田谷区奥沢2−35−13

TEL: 03-3725-0303

営業:10:00〜19:00

休み:水曜



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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:吉田勉(Tsutomu Yoshida)

写真:山本祐之(Yuji Yamamoto)

 


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Funmee!!編集部

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