生まれ育った葉山で、唯一の女性漁師として生きる畠山晶さんの地元愛【前編】


漁師=男性という固定観念はもう古い。
たまたま出会った女性漁師のかっこよさに憧れて、自らも漁師の道を志したという畠山さん。
生まれ育った葉山町で、紅一点の漁師として奮闘する彼女の日常を取材しました。


葉山町・真名瀬(しんなせ)漁港。
20名ほどの漁師が操業する、昔ながらの小さな漁港が畠山さんの仕事場です。
26歳でベテラン漁師に弟子入りし、独り立ちしてもうすぐ4年。
一人前になるまでの努力や苦労、葉山で漁師として生きる喜びについて教えてくれました。

実は漁師になるなんて、夢にも思っていなかった!

 出典  Funmee!!編集部

――女性の漁師さんはめずらしいですが、なぜ漁師になろうと思ったのですか?

高校は水産高校だったんですけど、別に漁師を目指していたわけじゃないんです。卒業後は漠然と「海に関わる仕事がしたい」と思ってダイビングショップで働かせてもらっていたんですが、その頃に鎌倉で漁師をやっている女性と出会ったのがきっかけですね。3人のお子さんを育てながら女一人で漁に出て、大変なはずなのにいつも笑顔でがんばっている彼女の姿を見て、「かっこいい! 女性でも漁師ってできるんだ」と衝撃を受けたのがはじまりでした。



――葉山で生まれ育った畠山さんにとって、漁師はもともと身近な存在でしたか?

幼い頃から海は身近にありましたが、漁師の家に生まれたわけじゃないし、ほとんど接点はなかったですね。だから将来、自分が漁師になるなんて夢にも思わなかった。でも、性格的に会社勤めには向いていないと自覚していました。結婚式などの司会業をした時期もありましたが、それも「何か違うな」と感じていましたし。


門前払いされても、頭を下げ続けた日々

 出典  Funmee!!編集部

――漁師になると決めてからは、どのように行動したのですか?

「漁師をやるなら葉山で」と思って地元の漁業組合へ相談に行ったんですけど、漁業とはまったく無縁の人間で、しかも女性ということもあって最初は信用もなく受け入れてもらえませんでした。それでも何度も組合に通って、のちの師匠・矢嶋四郎さんにも「本気でやりたい」と伝え続けて、3~4か月後にようやく見習い漁師として働くことを認めてもらえたんです。1年間の見習い期間中は、師匠から網の作り方や掛け方、掃除の仕方などを一から教えてもらっていましたが、「手が遅い!」と怒られてばかりでしたね。


――その見習い期間を経て、4年前に独り立ちされたのですね。

担い手がいなくて捨ててしまう船を譲ってもらってのスタートでした。最初の頃は何をやるにも緊張しましたね。荒れた海に船を出して、岩場に乗り上げてしまったこともありました。私、結構無鉄砲なところがあるんです(笑)。シケの時でも他の漁師仲間に「船、出さないのかよ」と挑発されると「じゃあ出すよ!」と無理して出て行って心配されたり。


四季折々の自然美を感じつつ、働ける幸せ

 出典  Funmee!!編集部

――葉山は漁場として理想的な環境といえるのでしょうか。

最近は魚が減ってきていて、正直あまり良い環境とはいえないかもしれません。でも、生まれ育った場所だから、ここでやっていきたいという思いはあります。冬の朝、澄んだ空気の中にたたずむ富士山の美しさとか、夏の山から聞こえてくるセミの大合唱とか、四季折々の自然美を肌で感じながら漁ができるこの場所が好きなんです。それに、人とのつながりが深いのも葉山のいいところ。大きな産業がなく、電車も通っていないせいか、いい意味で人と人との距離感が近いんです。移住してきた人も多いですけど、新しい人も含めてみんながつながっている感じがして、いい町だなぁと思います。いくらデジタル社会だと言っても、やっぱり人とのつながりがないと生きていけないですからね。


――その葉山の海で、普段はどんな漁を行っているのですか?

主に刺網漁でサザエや伊勢海老、カサゴなどを狙っていますが、合間にタコ漁をしたり、2~3月のシーズンにはワカメ漁、伊勢海老が禁漁になる6~7月は素潜りでアワビなどを獲っています。時期によって魚種や漁の方法が違うので、一年中楽しいですよ。


 出典  Funmee!!編集部


――葉山には魚市場がないと聞きましたが、魚はどこに卸しているのですか?


逗子や横須賀の魚市場に持ち込むこともできますが、そうすることはほとんどなくて、近隣の飲食店に直接卸しています。配達も自分でやるので大変ですけど、顔が見える距離で販売したいんです。あと、毎月第2土曜日に港の近くで朝市も開催しています。葉山は魚屋が少ないので、地元の人に地元の新鮮な魚を食べてもらいたいと思って、漁師仲間に呼びかけて始めたんです。時間がある時はお客さんに魚のさばき方を伝えたりもしています。



食は生きることの基本。葉山唯一の女性漁師・畠山晶さんが伝えたい自然への思い【後編】


■プロフィール

漁師:畠山晶さん

葉山・真名瀬漁港を拠点とする漁師で、船名は『桜花丸』。26歳で見習い漁師となり、1年間の修行を経て独立。その後、準組合員として2年の経験を積んだのち正規組合員へ。現在は葉山町漁業協同組合の監事も務める。


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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:古田朱美(Akemi Furuta)

写真:柳田由人(Yoshito Yanagida)


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