
#10 ケータハム・セブンスプリント(ディテール編)
クルマの新旧や機能だけでなく、趣味性の高いクルマ、さまざまな趣味への汎用性が高いクルマを紹介するこの連載。10台目は「ケータハム・セブンスプリント」。
英国生まれのライトウェイトスポーツカーとして60年の歴史を持ち、軽快な走りと色褪せることのないクラシカルなスタイルが人気のクルマ。ディテール編ではドライビングフィールやディテールなどについて紹介します。
見て、走って、楽しむ。“ネオ・レトロ”なスポーツカー
1957年から現在に至るまで、基本となるスタイルは変えず、時代に伴った進化を遂げ、現代においても確固たる存在感を放つセブン。
1973年からは「ケータハム・セブン」として販売され、圧倒的な速さを誇り、ドライバーを刺激する620Rからカジュアルにスポーツドライブを楽しめる160モデルまで、幅広いラインナップで今も尚、ファンを魅了しています。

ケータハム・セブンは、英国伝統のライトウェイトスポーツカーとして、クラシカルなスタイリングを継承しつつ、モデルチェンジを行うたび性能を高め、その地位を築いてきました。
そして、2014年に日本仕様として、スズキ製のエンジンを搭載した「160」モデルが登場し、爆発的にヒット。今回撮影に使用した車両は、その160をベースとし、1960年代のエッセンスを満載したオリジナルセブンの発売から60周年を祝う記念モデルとなっています。

「ケータハムのラインナップの中で、日本で圧倒的に売れているのは160です。国内販売の7割という圧倒的な人気となっています。購入される方は以前からセブンの存在を知っていて憧れていた、少し年齢が高めの方が多いですね。2台目の趣味クルマとして購入される方が多く、軽自動車仕様というのはその点が良かったのかも知れません。晴れた週末に走ることを楽しむクルマ、それがセブンです」と語る、LCI株式会社ケータハム担当のジャスティン・ガーディナーさん。

美しい見た目と純粋に走りを楽しむクルマとしては、高いポテンシシャルを持っているセブンですが、現代のクルマと単純に比較をすると、エアコンやオーディオもなく、幌の付け外しの手間もあり、また乗り心地も路面の凹凸を受けやすいダイレクトな感じなので、快適な移動手段という部分からは程遠い存在となってしまいます。
夏は暑く、冬は寒い、そして走行中はエンジン音や風切り音で隣の人との会話も難しいかもしれません。しかし、それはあくまで快適な普通のクルマを求めている人の話。もちろん、所有することに覚悟はいりますが、趣味人であれば、それを超える楽しさが見出せ、これもこのクルマの味だと思えるはずです。
ライトウェイト&オープンならではの疾走感

普段、あまりクルマに乗っていなかったり、乗るとしても一般的な乗用車等に乗り慣れている人にとっては、ケータハム・セブンの走りがどんなものかは想像もつかないと思います。それを知るには、まずは乗ってみることです。
一般的にセブン・オーナーは、幌を取り去ってフルオープンにした状態で乗るのが基本といいます。正直、この状態で乗るとかなり目立ちます。
まずはレザー仕様のドアを外し、跨ぐ感じで乗り込みます。シートに座り、足を伸ばすと身長170cm強の筆者でも少し狭く感じる程です。先端に行くほど足下は狭くなり、ブーツのようなゴツいシューズではクラッチ操作が難しいため、運転をする際には足先がシャープな形状のシューズがベストです。

実際に乗り込んで、一番驚くのは視点の低さです。横を見ると歩く人の膝が見え、道路の縁石が近く、普通に地面に触れられるほどです。オープンなので、解放感もバツグン。
そしてエンジンをかけると、ちょっと荒々しいマフラー音とエンジンの振動がしっかりと響き、気分を盛り上げてくれます。実際に走ってみると、500kgを切る超軽量ボディなので、軽自動車のエンジンでも十分にスポーティかつ快適な走りを楽しむことができます。
また、車高の低さが体感速度を上げてくれ、時速40~50kmでも飛ばしている気分を味わうこともできます。風を受けながら走るのは気分も良く、セブンがよく「四輪バイク」と表現されるのもうなづけるほど、走りと運転をする楽しさはオートバイに近いものがあります。

ステアリングはノンパワステで、ブレーキはフロントはディスク、リヤはドラムブレーキで、さらにこの低車高なので、通常のクルマとはかなり違ったフィーリングを味わうことができます。取り扱いも基本は普通のMT車と同じなので、MT車に乗りなれている人であれば問題がなく、あまり乗り慣れていない人でも、少し練習をすれば楽しく乗れます。
「購入する時は、少し高価な車両かなと思う人も多いのですが、実はセブンはランニングコストに優れていて、車重が軽いということは、タイヤやブレーキも減りも少なく、燃費もリッター20km程走るので、十分楽しむことができます。また、万が一、手放さなければならなくなった時も、セブンは大幅な値下がりがしないというのも魅力となっているんですよね」とジャスティンさん。
正直、クルマの性格上、2台目とするのがベストなクルマ。家族と楽しむファミリーカーと別に、週末や気持ちの良い夜などに、パートナーと一緒に、または一人でドライブを楽しむには最高の相棒だと思います。普通のクルマでは味わえない、ドライブフィールとロースピードで楽しめる走り、一度手に入れたら、手放せなくなる。セブンはそんな魅力を持ったクルマなのです。

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■撮影協力
英国ケータハムカーズの日本における正規輸入代理店としてケータハム・セブンシリーズの輸入・販売を行っている。
・インポーターオフィス
東京都大田区石川町2-1-1
・テクニカルセンター
埼玉県入間郡三芳町北永井258
※お問い合わせはケータハムカーズ・ジャパンホームページより
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文:安室淳一(Junichi Yasumuro)
写真:銭田豊裕(Toyohiro Zenita)
