獲って、食べて、考えて。 『ビートイート』店主・竹林久仁子さんの豊かな狩猟ライフ


マクロビを真摯に突き詰めた竹林久仁子さん。食肉の生産・流通過程に疑問を抱き、オーガニックミートを求めて猟銃を手に取ります。「好きなことしかできない」と笑顔で話す彼女の、体と心に正直な狩猟生活に迫りました。

マクロビの延長で猟にチャレンジ


―― 猟を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

 

私は肉アレルギーで、食べると戻してしまうこともあったんです。マクロビを勉強してから、「これって何かおかしいんじゃないの?」と思って。よく考えたら、オーガニック野菜は手に入るけど、オーガニックミートは売られていないですよね。それに、食肉が店頭に並ぶまでの過程を調べたら、あまりにも不透明で不自然なことを知って、これは自分で獲りに行こうと。それも、東京に住んだままで猟をやりたいなって。東京にいて、仕事もあって、鹿も獲れたら最高じゃないかって。

 


 出典  Funmee!!編集部

―― でも、猟には資格が必要ですよね。


狩猟免許と猟銃免許です。免許を取ったのは3年前くらいですね。私はたまたま、素晴らしい技術と知識を持った師匠に出会えたことで浅い年数ですが内容の濃い猟をさせていただいてます。



覚悟と責任をもって命をいただく

 提供 竹林久仁子さん


―― 初めての猟は免許を取ってすぐに?

 

免許を取って半年後が初めての猟でした。場所は北海道で、師匠たちとグループで行動しました。猟には厳しいルールがあるし、遭難や滑落の可能性もありますから、ひとりでは難しいです。動物に気配を悟られないように、10kg近い銃を担いで崖のような道なき道を歩いて。


 

―― その時、獲物をうまく仕留めることはできましたか。

 

だめでした。現地のベテランの先輩たちと一緒に回ったんですけど、最初は「“止め(とめ)”を撃ちなさい」って言われたんです。要するに、とどめを刺しなさいって。でも、標的の鹿まで1mもないのに、全然当たらないんですよ。


 

―― それは技術の問題ではなく、心の問題?

 

心の問題ですね。2、3発外したら「もういいよ」って言われて、目の前で先輩がナイフでとどめを刺して。今思うと、生き物に発砲するのが怖かったんです。そのときは3泊4日で行ったけど、何も獲れませんでした。それからは師匠の言うとおりに練習して。3か月後にあらためて北海道に行くんですけど、同じ3泊4日で6頭獲りました。


 

―― そのときは心の震えはなかったんですか。

 

最初の1頭を撃つまでは震えがありましたね。そのときは3月下旬でしたが、北海道なのでまだ雪が残っているんです。餌がないから鹿は飢えていて、死ぬ寸前でフラフラなんです。急に目の前に出てきて私に向かってくる鹿がいたんですけど、先輩から「その鹿を撃ちなさい」って。お腹にバーンって撃って、「あなたの玉が出てきたよ」って言われて。自分が当てたんだって実感したら、次から急に当たるようになりました


 出典  Funmee!!編集部


―― それは深い話ですね……。はじめて動物を撃ったときの率直な気持ちは?

 

複雑でした。さっきまで動いていた生き物が自分のせいで動かなくなるので。撃たれても最後の呼吸が止まるまで、私をじっと見つめてきた目がどんどん曇ってきて、最期にはシューって感じで光が失われて。それを見て、「猟とはこういうことなのか……」って痛感しました。だから猟をやると決めた以上は、とにかく技術をつけて苦しまないように撃って、ちゃんと食べようと思いました。



―― 肉アレルギーでしたが、食べるのは問題なく?

 

はい。ただ、最初の頃は獲った肉を食べるたびに熱を出していました。人によって解釈は違うと思いますが、私はマクロビの経験もあったから、これは体の自然な反応だと思って受け入れました。それまで野菜だけ食べていたから、こんなに野性味のある肉を食べたら体が頑張りすぎちゃうよねって。ただ、戻すことはありませんでした。天然の鹿肉はアレルギー反応が出にくいらしいです。



好きなことを続け、マクロビを“当たり前”にしたい

 出典  Funmee!!編集部


―― そして、2年前に『ビートイート』をオープンして。

 

お店では、鹿や熊などのオーガニックミートを使った料理を提供しています。利益だけを求めるんだったら猟に行かなくていいじゃないってなるんですけど、それでは意味がなくて。このスタイルを理解してくれるお客さんも少しずつ増えています。

 


―― 今後の展望はどのように考えていますか。

 

もともと好きなことしかできないタイプなので、それを続けていくだけかな。お店に関しては、まだまだ扱いが普通じゃないんです。「オーガニックなんでしょ」「オシャレだね」「高そう」とか。そうじゃなくて、選択肢の一つとして普通にありたいというか。

 



 出典  Funmee!!編集部


―― 普遍的なものとして根付かせたい、と。

 

そうですね。お店もそうだし、マクロビも当たり前になるといいですよね。たとえば、コンビニに無農薬の玄米や野菜が置かれるようになれば、一番理想的です。そういうふうにマクロビが広まっていったらいいな、と思いますね。



【前編】偶然が引き寄せた新しい世界。 『ビートイート』店主・竹林久仁子さんとマクロビの出会い


■プロフィール

『ビートイート』店主

竹林久仁子さん

 

交通事故がきっかけでマクロビオティックに出会い、インストラクターに。食を見つめる過程でオーガニックミートにも興味を持ち、狩猟免許および猟銃免許を取得。2016年3月『ビートイート』をオープン。

 

ビートイート

東京都世田谷区喜多見9-2-18 喜多見城和ハイツB1F

TEL:03-5761-4577

営業:12:00~15:00(L.O.14:30)、18:30~22:00(L.O.21:30)

休み:火曜日、水曜日、木曜日(不定休あり)



■クレジット

企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:吉田勉(Tsutomu Yoshida)

写真:山平敦史(Atsushi Yamahira)

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Funmee!!編集部

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