正統派“だから”異端なパン職人!?川瀬敏綱さんの驚愕パリスタイルのパン


東京・自由が丘エリアで話題のブーランジェリー「トシオークーデュパン」。オーナーシェフの川瀬敏綱さんが焼くバゲットはなんと1日100〜200本。そのお値段は1本173円! 常識を超えた“本物のパン”の魅力に迫りました。

「フランス文化としてのパンを広めたい」と語る川瀬さん。フランスの国家最優秀職人賞(M.O.F.)に輝くブーランジェに師事し、“日本のパン”ではなく“フランスのパン”をていねいに焼き続けています。

朝6時オープン。今日も川瀬さんの長い1日が始まります。

超美味なバゲットが173円! 破格値に込めた思い

 出典  Funmee!!編集部

―― 看板商品のバゲットは173円と、思わず二度見してしまう価格です。素材や製法を厳選したパンでは400円代もざらですが、なんでこんなに安いんですか?


パリで1年半ほど修行したことがあるのですが、フランスではバゲットは1ユーロ以下が一般的です。1本300円、400円もしては毎日食べるには高すぎます。毎日食べ続けて欲しいのでこの価格に抑えていますし、これがバゲットのあるべき価格だと考えています。



―― 日常的に食べてもらう工夫なんですね。その風味は噛むほどに甘み、旨みがふくよかに広がる美味しさです。


小麦はフランス産で、イーストにルヴァン種を併用して一晩かけてじっくり発酵させています。フランスでも日本でも一般的に改良剤を使いますし、使えば作業は楽だと思うのですが、得体の知れないものは一切使わないようにしています。



同じパンでも、日本とフランスではまったく違う

 出典  Funmee!!編集部

―― オープンが朝6時と早く、夜7時まで営業されています。ハード系のパンを中心としたオールスクラッチ製法ですが、製造は何人体制なのですか。


販売スタッフは数名いて、サンドイッチ作りなどはお願いしていますが、パン製造は僕一人です(笑)。フランスでは5時オープンのお店は結構ありますし、散歩の途中や出勤前に気軽に立ち寄れるお店でありたいと思っています。正直、製造スタッフは増やしたいのですが、うちで働いても日本のパン製法とあまりに違うので、キャリアにならないのが申し訳なくて積極的な採用はしていません。



―― そんなに作り方が違うのですか。


日本のフランス系のブーランジェリーでも働いた経験はありますが、今作っているパンはすべてパリで学んだ製法です。例えばフランスでは、ルヴァン(酵母)は膨らませるためではなく発酵の香りを加えるために入れるもの。フランス語の「発酵」とは日本では「熟成」を指し、発酵と膨らませることを完全に分けて考えます。例えると同じ小麦粉を水で溶いて焼いた料理が、日本ではお好み焼き、フランスではガレット、韓国ではチヂミになるように、フランスと日本のパンは違う食べ物であると捉えています。


「いらっしゃいませ」ではなく「おはようございます」

 出典  Funmee!!編集部


―― 正統なフランスのパン製法をきわめるほどに、日本では異端児になってしまうんですね。でも、孤高のパン職人の店というよりも、アットホームな雰囲気が漂っています。お店には幅広い客層がいらっしゃいますよね。


おかげさまで、いろんなお客様が立ち寄ってくださいます。お店を立ち上げた時から「本当のパンの美味しさを伝える」をキャッチコピーにしていて、多くの方がデイリーに利用してくださるのは本当に嬉しいです。周辺のフレンチのお店からも注文がけっこう入るようになって、オープンしてもうすぐ4年。地域に根付きつつある手応えを感じています。



―― そういえば、お客様には「いらっしゃいませ」ではなく「おはようございます」と声をかけられていますが、あれはなんでですか?


「いらっしゃいませ」は一歩通行な挨拶ですが、「おはようございます」ならお客様も返してくださる余地が生まれます。パンの売り買いだけではなく、ちょっとした交流を大事にしたいので、僕もスタッフも「いらっしゃいませ」とは言わないんです。



パンを売るだけでなくフランスの食文化を伝えたい

 出典  Funmee!!編集部


―― こうしてお話をうかがっている間もお客様が途絶えず、バゲットを筆頭に次々パンがなくなっていきますね。


お店に並ぶパンには日替わりのものもあり、曜日や時間帯で並ぶパンが違っていて、すぐ売り切れてしまうパンもあります。「シェフの気まぐれルヴァン」という、いつも大きさが異なるパンもあります。今、テスト販売中の「パン オ ミエル」「パン オ セレアル」は、バゲットを夕方に買うお客様の多くが、翌朝の朝食に食べていることがわかりました。それで、より乾燥しにくく食べ飽きないパンを提供したいと思って、今年から販売しています。お客様の反応を見ながら日々模索です。



―― 訪れるたびに新鮮な発見があるわけですね。パン以外にも気になる商品がいろいろあります。


中米スペシャリティコーヒー専門焙煎店「カフェテナンゴ」(世田谷深沢)で、パンに合うオリジナルブレンドコーヒーを作ってもらいました。スッキリでクリアな味で、ほんのりフルーティな香りがパンと絶妙です。自家製のお惣菜や知床斜里産にんじんジュース、バゲットがちょうど入るオリジナルエコバッグなど、パンに合うことを基準に取り入れています。パンを売るだけの店ではなく、フランスのパンに合う料理や食文化を発信し続けていきたいです。



営業マンから極貧修行、そして東京の人気店へ トシオークーデュパン・川瀬敏綱さんのパン道


■プロフィール

パン職人

川瀬敏綱さん


建設機器メーカーの営業マンから35歳でパン職人の道へ。「オーバカナル」などの有名店を経て、38歳で渡仏。M.O.Fのブーランジェ、アニス・ブアブサ氏に師事。2013年5月「トシオークーデュパン」をオープン。


トシオークーデュパン

東京都目黒区中根1-20-18

TEL : 03-3291-1475

営業:6:00~19:00

休み:月曜、火曜


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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:浜堀晴子(Haruko Hamahori)

写真:柏木ゆり(Yuri Kashiwagi)


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Funmee!!編集部

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