グラフィックデザイナー・秋山昌範さんに聞く、 毎日が楽しくなる自然の感じ方


「家を建てるより、まず庭をつくりたい」。グラフィックデザイナーの秋山さんが自ら設計し、つくりあげた庭は四季折々の植物や生き物が巡る“自然の楽園”。今では少なくなってしまった植物や、野山でもなかなか出会えない鳥や蝶にも、出会えるチャンスがいっぱいです。そこで秋山さんの庭を散策しながら、自然観察のポイントや注意点を教えてもらいました。

本職の枠を超えて、やりたいことを仕事にしていく

 出典  Funmee!!編集部


―― 前回のお話でグラフィックデザイナーの他に、環境カウンセラー、ビオトープ管理士以外にも、いろいろな資格をお持ちということでしたが。

 

生物調査や自然環境調査、自然観察インストラクターなどの仕事もして、それに必要だと思う資格をね。自治体やNPOなどの環境事業にも関わっていて、茨城県まちづくりアドバイザーもしています。

 


―― まさに自然環境のエキスパートですね。もう一度聞きますが、本職はグラフィックデザイナーなんですよね。

 

「そうです」と言っておきましょう(笑)。収入はデザインやイラストの方が多いですが、仕事にとりくむ時間としては環境整備や造園かな。もともと幼いころから昆虫少年で、今もそれは変わっていません。昆虫や魚から、生態系や環境保全に興味が広がり、子どものころにいた昆虫や魚たちが減り始めていることへの危機感を覚えて……。改善策を模索している中でビオトープの庭づくりに興味をもったんです



人間だけが独り占めせず、庭を分かち合う感覚が魅力

春の夕方の様子

 提供 秋山昌範さん


―― ビオトープをつくるには、かなりの知識と努力、経験が必要そうですね。

 

造園デザインの勉強をしていた時に、ビオトープのことを学びました。それで実践してみたくなって、当時住んでいた家の庭の一角、5坪ほどで始めたんです。当時はその規模を無視して、自分の思い通りの庭にしようとあれこれやっているうちに、私も庭も疲弊したことがあります。

 


初夏の様子

 提供 秋元昌範さん

秋の様子

 提供 秋元昌範さん


―― そういう失敗が今に生かされているわけですね。

 

人が手を入れすぎると不自然になることを思い知らされました。人間がたくらんでつくるのではなく、木々や動物、昆虫たちが分かち合って、一年がぐるっと巡る。持続的に営まれるサイクルは無駄がなくて、人も自然界にも負荷をかけずに、みんなが平等に場をシェアしている感じなんです。その感覚が面白くて、どんどんハマっていきました。



冬の様子

 提供 秋元昌範さん

身近な木々も種類や時期によって姿が変わる!

 出典  Funmee!!編集部


―― クヌギやブナ、ハンノキなど、一般的な庭木にないものを植えてますね。

 

樹木は20種類以上植えてます。その多くは一般的な庭木としてはあまり見られないものばかりです。池の側には水場を好むハンノキを植え、少し離れたところにクヌギやコナラを植えるなど、植生を考えて構成しています。そうすることで木々はのびやかに生長して、新緑が出始めるこの季節は毎年「さあシーズンが始まるぞ!」とドキドキします。



――ついに庭がめざめた! と(笑)

 

まさにそんな感覚です。ひとこと「新芽」と言っても、こうやって並べると、左からヤマザクラ、クヌギ、ブナ、ハンノキと木によって色も姿も全然違うんです。ヤマザクラはわずかに葉が赤みを帯びて、ふれるといい香りもします。クヌギは小さくても葉脈がみっしり平行しています。ブナの葉にうぶ毛が生えているのはこの季節だけですが、ハンノキは芽生えた瞬間から緑が濃く目にさわやか。変化や特徴に気づけるだけでも楽しくなります。そうそう、この庭の真ん中に立つハンノキには6月半ばの夕方になるとミドリシジミという蝶が舞うんですよ。



 出典  Funmee!!編集部


――ミドリシジミとは、珍しい蝶なんですか?

 

シジミという名の通り、数センチ程度しかない蝶です。羽を閉じるととても地味な姿ですが、オスは羽を開くと内側がメタリックグリーンをしています。初夏の夕方にみな一斉に舞う習性をもっていて、夕日を浴びた羽がキラキラ輝いてメスにアピール。6月のほんのわずかの期間ですが、このハンノキのまわりは彼らが舞って、まさに夢幻といった様相になります。無事交尾したのちハンノキへ卵を産み、卵のまま越冬、春に孵化して幼虫がハンノキの葉を食べ、成虫へ羽化します。この木がなければ生きられない、しかも一生の大半を卵の姿で生きるという珍しい生き物なんです。



両方ともミドリシジミ

 提供  秋山昌範さん

自然へ寄り添う視点を持つと、さらに自然が面白くなる

ヤマブキ

 出典  Funmee!!編集部


――木や昆虫だけでなく、花も珍しいものが育っているんですね。

 

このヤマブキの花は八重ではなく一重です。これは山に多く、庭にはあまり植えませんね。足元の左にあるムラサキの花はヤマエンゴサクと言って日本古来の野生のコリダリスで、右は同じムラサキの花でも錨の形をしているからイカリソウです。この庭では、園芸向けに品種改良された品種ではなく、地域に元々あった在来種を育てています。



ヤマエンゴサク

 出典  Funmee!!編集部

イカリソウ

 出典  Funmee!!編集部


――多くの人が秋山さんのように珍しい植物を育てれば、その種が途絶えずにすみそうな気がします。

 

そうかもしれません。でも大切なことは一品種だけではなく、いろんな植物や生きものがいる環境を整え、そこにあること。例えば、春の植物は東側の斜面を好みます。それが西側斜面では西日が強すぎて育ちません。絶妙なバランス、適材適所で成り立っているから面白い。

 


―― 可愛いからというだけで育てても、枯らしてしまうことはよくありますものね。

 

山や森の中もそうですね。その植物がなぜそこに生えているのか、その植物があることで生態系のバランスがどう整っているのか考えると、むやみに摘んだり、切ったりして持ち帰ろうという気は起こりません。いまだに「旅は恥のかき捨て」と勝手に野山に立ち入っていく人もいますが、日本の野山は所有者がいて、それぞれ管理されているので節度ある行動が大切です。



ホソミオツネントンボ

 出典  Funmee!!編集部


――その他に、自然観察で気をつけた方がいいことはありますか。

 

 まずは身近なところから自然に目を向けましょう。これはホソミオツネントンボです。華奢な身体をしていますが、よくみると色の組み合わせや形など、とてもきれいでしょ? 自然に目を向けることを重ねていく中で、自然を壊さないよう場所と時間を多種多様な生きものと分け合う。その気持ちを忘れず、接していけば、きっともっと自然と仲良くなれるはずです。



【前編】環境カウンセラー直伝!都会人にこそ知ってほしい。庭が育む、豊かな暮らし


■プロフィール

秋山昌範さん

グラフィックデザイナー/環境カウンセラー。 東京生まれ。昆虫や植物を題材としたグラフィックデザインを多く手がける傍ら、1999年に環境カウンセラーとしての活動もスタート。筑波山の自然を紹介するガイドも行うなど、自然に関わる活動は多岐に渡る。茨城県牛久市在住。

 



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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:浜堀晴子(Haruko Hamahori)

写真:安川啓太(Keita Yasukawa)

写真提供:秋山昌範(Masanori Akiyama)

 

■ご注意ください。

秋山昌範さんのご自宅は私有地のため、無断での立ち入りは禁じられています。ただし、秋山さん立ち合いのもとならば見学も可能とのこと。見学を希望される方は事前に秋山さんまでメールでご連絡ください(de8m-akym@asahi-net.or.jp)。

なお、国内希少野生動植物種と国際希少野生動植物種は、販売・頒布目的の陳列・広告と、譲渡しなど(あげる、売る、貸す、もらう、買う、借りる)は原則として禁止されています。また、自宅などで育てられた動物や植物を自然の野山へ返す行為は、その野山の動植物の生態系や遺伝的な独自性を壊す可能性があるためご注意ください。




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Funmee!!編集部

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