一人じゃ何もできない、だから楽しい―― 『三浦パン屋 充麦』店主・蔭山充洋さんの“つながる”パンづくり【後編】


DJからパン職人になった異色の経歴を持つ蔭山さん。
自然豊かな三浦市でお店を営むようになり、食材を通じた地域の人々との交流が増えていきます。
他者とのかかわりは、蔭山さんの生き方、考え方にも大きな変化を及ぼしました。

一人じゃ何もできない、だから楽しい―― 『三浦パン屋 充麦』店主・蔭山充洋さんの“つながる”パンづくり【前編】

無農薬、無添加。 味の決め手は肥料にあり。

 出典  Funmee!!編集部


――仕事で食べ物を作るようになって、食に対する考え方に変化はありましたか?


DJをしていた頃はジャンクなものばかり食べていて、あまり食に気を配っていませんでした。パン屋で働くようになって、だんだん食べることに興味が出てきました。独立してから作っているパンは無農薬で、添加物も一切使っていません。数種類を除いて、小麦と酵母と塩と水だけでいろいろな味を出しています。うちで作った小麦は全粒粉にしていますが、それだとパンの味がボソボソと単調になってしまうので、うちの製粉機ではできない、胚乳だけを使った白っぽい小麦もよそから仕入れて使っています。



――先ほど焼き立てのパンをいただいたのですが、噛むほどに小麦の甘味が強く感じられてとても美味しかったです。

なぜ甘味があるかというと、堆肥に馬糞を混ぜているからです。土作りに馬糞を使うと、作物の甘味が濃くなる。三浦市は乗馬クラブが多いので、そこから馬糞を分けてもらっています。うちのパンは固めで食べにくいかもしれないけれど、噛めば噛むほど味が出てきて、腹持ちもいいと思いますよ。

地域活性化より大事なことがある それは「5分、台所に立つこと」

 出典  Funmee!!編集部

――地域の方たちの協力があって、おいしいパンが生まれるんですね。

ただ、僕は「地域を盛り上げたい」とか「活性化させたい」とか、そういう大それたことは思っていなくて。何がしたいのかと言えば、人を台所に戻したいんです。一日5分でもいいんです。5分台所に立てば、簡単なものなら作れちゃうし、食材にも興味が出てくるはず。一つの野菜に興味が出れば、作っている人にも興味が出てくる。そうなれば、スーパーだけはなく、近所の野菜直売所にも目が向くかもしれない。生産者と消費者が、個人と個人の付き合いに発展する可能性だってある。農家さんって、消費者からのフィードバックがないんです。でも、フィードバックがあればもっと仕事に張り合いが出ると思う。


――一日5分台所に立つだけで、普段考えなかったことを考えるようになる、と。

最近よく「顔の見える野菜」とか言うじゃないですか。もちろん、それも良いことだと思いますが、生産者が目の前にいたらもっといいですよね? 僕たちも、人となりを知った信頼できる生産者から野菜を取れば安心だし、より美味しいパンを作ろうという気持ちになる。気持ちは必ず味に作用しますから、好循環が生まれます。「食」という字は「人に良い」って書きますよね。体だけではなくて、心にも良い影響を与えるものを作りたいし、そうあるべきだと思う。そのためには、生産者との信頼関係ってすごく大切なんです。

人と人は上下がなく横一線 そこでワクワクする関係性を築きたい

 出典  Funmee!!編集部

――これまで話を伺って、蔭山さんが他者との関係を築くことに重点を置いていることがよくわかりました。

僕はただただ、みんなと横で繋がりたいんです。本来、人と人の関係は縦ではないですよね。上下はなくて、横一線じゃないですか。そういう横のつながり、ワクワクする関係性でいられたら、と思いますね。僕はたまたま三浦でパン屋をはじめて、偶然にもいろいろな食材の生産者と知り合って仲良くなることができた。棚からぼた餅じゃないですけど(笑)、運が良かったと思います。

 出典  Funmee!!編集部


――最後に、パンを通して今後挑戦したいことを教えてください。


ここ数年、麦の種まきから始めるパン教室をやりたいと考えています。馬糞をまく土作りから始めて、みんなで種をまきたい。麦踏みから雑草取りまで全部やってもらって、収穫して製粉してやっとパンができると、喜びもひとしおです。長期間になりますが、その過程をみんなで共有したいですね。種まきからのパン教室は、子ども向けの食育という意味でも面白いと思うんです。現状では、なかなか時間が作れないのですが、将来的に、パン教室を通して食の大切さを伝えられたら理想的ですね!



一人じゃ何もできない、だから楽しい―― 『三浦パン屋 充麦』店主・蔭山充洋さんの“つながる”パンづくり【前編】


■プロフィール

パン職人

蔭山充洋さん


小麦から作るパンが評判の『三浦パン屋 充麦』店主。店舗から車で5分程度の場所に畑を持ち、仲間と力を合わせて小麦を育てている。その小麦で作るパンを軸に、「食の体験」を伝えることに尽力。近年は、パンにまつわるトークショーなどにも参加している。

http://mitsumugi.web.fc2.com/


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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:吉田 勉(Tsutomu Yoshida)

写真:上石了一(Ryoichi Ageishi)


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Funmee!!編集部

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