
ザ・昭和の味わいこそ美しい!?国産ヴィンテージバイクの魅力
ヴィンテージバイクの市場は近年急速に盛り上がりを見せ、ハーレーやトライアンフなど、欧米のメーカーは戦前のモデルがその辺りを普通に走り回っていることも珍しくない。
そんななか、日本のバイク史はほぼ’50年代からとやや遅れてスタートし、その時々の時代感を反映しながらも独自のバイク史を築き上げてきた。
高校生の頃に手に入れた原付で日本の実用車としてのバイクに惚れ込み、以来国産旧車ひと筋20年の大森弘二さんに、日本製のヴィンテージバイクの魅力を伺った。
昭和に生まれた日本らしい雰囲気が好きなんです

―― ヴィンテージのバイクは近年広いジャンルで確実に盛り上がりを見せていますが、そのなかでもなぜ日本製のバイクを選んだのでしょうか?
始まりは高校生の頃、本で見た変わった原付が気になって調べてみたら、それがホンダの古いカブだったんです。最初から国産のヴィンテージに絞っていたわけではなくて、高校生でも原付なら免許を取れることから国産が入り口になりました。
当時人気がある外車は大型ばかりでしたし。元々古着が好きだったこともあって古いバイクなら格好にも合いそうだと思ったこともきっかけですね。それ以来、十数台のバイクを乗り継いだけれど、ほとんど’60年代の国産モデルです。

―― いまの愛車はどちらも’60年代のモデルですが、国産のヴィンテージというだけでなく、年代にも特別なこだわりがあるのですか?
’60年代終盤頃から日本のバイクは急激に進化したから、僕にとっては’70年代のバイクは現行車とそれほど変わらないように感じてしまうんです。見た目もいまのバイクと同じ形をしているし、スポーツ性能や耐久性も十分高い。
’60年代のバイクは独特の野暮ったさすら感じる実用車らしいディテールが残っているのが好きですね。昭和の風景の写真を見るのが好きなんですが、’60年代のバイクにはそういう進化しきっていない古臭さを感じるんです。


国産バイクが製造された時代感に思いを馳せる。
―― 国産ヴィンテージバイクと付き合う上で苦労しやすいことを教えてください。
リプロダクトのパーツ(リプロパーツ)は、海外のメーカーに比べたらかなり少ないと思う。特にハーレーなんかだと、大きいメーカーのリプロパーツだけでも1台作れると思うけれど、日本のメーカーでそれはありえない。
だから純正のスタイルを崩したくなければ、当時のパーツを探したり、個人でリプロパーツを作っている人を探すしかないから、ネットワークがないと大変かもしれないですね。

―― では逆に海外のバイクでは味わいにくい、国産ヴィンテージの魅力とは?
あくまでも’60年代のモデルが中心ですけど、その頃しかなかったディテールやデザインは日本の時代感をよく反映していると思いますね。
自分が生まれた国の古いバイクだからこそ、その時代感に思いを巡らすことを身近に感じられて楽しいのかもしれないですね。どんな人が乗ってたんだろうとか、どんなシーンで使われていたのだろうとか。それこそ、昭和の写真を見て、愛車と同じモデルがその風景のなかに写っているとそれだけで嬉しいです。(笑)

ボディの“やれ具合”さえも喜びになる「鉄スクーター」
―― スクーターもやっぱり日本製が好み?
国産にこだわっているというよりは、ラビットが好きですね。ヴィジュアルのインパクトが強いし、この車両は200ccだから十分足として使える。鉄製のスクーターは、ボディのサビやオリジナルペイントのやれた質感なんかも好きですね。明らかにいまのスクーターとは別の乗り物。
それにこの車両は、’60年代当時配達で使われていた記録も残っていて、そんな実用車としてのストーリーも気に入っています。

■プロフィール
大森弘二さん
1979年生まれ。ホンダ「スーパーカブ」をきっかけに、国産旧車にのめり込み、乗り継いだ数は過去10台以上。現在はホンダ1963年式「CS72」と富士重工1960年式「ラビットS601A」を愛車に持つ。
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企画・編集協力:枻(エイ)出版社
文:金原悠太(Yuta Kinpara)
写真:桑山章(Akira Kuwayama)、百々智広(Tomohiro Momo)
