いま聴きたい!フリージャズ セレクト10(前編)
音楽

いま聴きたい!フリージャズ セレクト10(前編)


これしか聴かない……なんて、いつも耳障りのいいお気に入りの音楽ばかり聴いていませんか? ですが音楽の趣味を広げるのもオトナのひとつの趣向。そこでいままで気にもしなかったフリージャズなんてどうでしょう。


“フリージャズ”とひと言で言っても、「これが音楽なの!?」と思える先進的なものや、どこかで感じたことのある気分や感情になるもの、妄想や想像が爆発したような個人作家性の強いものなど本当に様々ですが、だからこそいろいろと探して聴いていくことで音楽性の広がりや好みがわかってくる、いわゆる”探すこと”の楽しさや奥深さがあるので、飽きることがありません。


そこでディスクユニオンのジャズ担当として日々様々なジャズ音楽に触れている、三橋高志さんにいま聴きたいフリージャズの名盤をセレクトしてもらいました。まずは前編の5枚からどうぞ。



Francois Tusques『Free Jazz』(2017/初リリースは1965年)

見たまま、ど直球ストレートなタイトルネーム
 出典  Funmee!!編集部
見たまま、ど直球ストレートなタイトルネーム


まさにそのまま、『Free Jazz』と名付けられたこの作品は、フランスのなかで最も重要なピアニストのひとり、Francois Tusquesが出した、フランス初のフリージャズ・アルバムと言われています。


この作品には踊れるリズムも、口ずさめるメロディも、楽曲の色彩感・雰囲気を示すコード感もありません。つまり、音楽の三大要素とされている「リズム・メロディ・ハーモニー」を否定しているのですが、当時のFrancois Tusquesは伝統的なジャズの束縛を壊すために、調性の無い無調の構造や緊張と緩和の概念、音色の探究を行っていたようで、その可能性を模索したと言い換えることもできるでしょう。その時代の熱気や空気感、興奮や緊張感が詰まっていて、いままでになかった新しいものを創ることへの想像力がこの作品にはあるように感じます。


ちなみに、オリジナル盤は日本でも10万円近くするレア盤で、過去にCDでも復刻されてはいたのですが、オリジナル盤と同じジャケットデザイン、レコードでの復刻というのはこれが初めてになります。



Colette Magny『Repression』(1972)

裏表両面を使ったジャケットデザインに製作者の強い意志を感じる
 出典  Funmee!!編集部
裏表両面を使ったジャケットデザインに製作者の強い意志を感じる


先ほどFrancois Tusques『Free Jazz』がフランスで最初のフリージャズ・アルバムと言いましたが、Colette Magnyは彼をその作品へと導いた人物です。『Free Jazz』のディレクションとしてもクレジットされ、フランスのフリージャズ界において非常に大きな影響を及ぼした音楽家と言えると思います。


もともとはシャンソン歌手として世に出ましたが、時代を追うごとにより先進的な音楽性が色濃くなっていきます。この作品も絶頂期と言える頃のもので、アメリカ国旗柄の檻から虎が飛び出している様を、表裏全面を使って描いた強烈なジャケットデザインが物語っているとおり、まさに自分たちの音楽を創っていこうとする意志が感じ取れます。それと同時に、楽器の音色や奏法で様々な情景を表現するアイデアの豊かさにも注目したいですね。


何度聴いても背筋が震えるほどの鬼気迫る迫力と、聴く者の心を動かす歌のエネルギーに満ちた、一度聴いたら忘れられなくなる作品です。優しさと厳しさが同居した彼女の歌声は、どこか母親を思い出させる包容力があるように思えます。



Jef Gilson『Gilson Et Malagasy』(2014)

このJef Gilson作品の復刻を聞いたらマストチェック
 出典  Funmee!!編集部
このJef Gilson作品の復刻を聞いたらマストチェック


Francois Tusquesと並ぶフランスの重要ピアニスト、Jef Gilsonが'70年代初頭にリリースしたMalagasyという名シリーズをまとめたボックスセットです。


Jef Gilsonはピアニスト・アレンジャー、作曲家として活動してビッグ・バンドの作品なども残しているのですが、マダガスカルに行った経験がMalagasyという名シリーズを生むきっかけとなります。これはマダガスカルで活動する現地のミュージシャンとヨーロッパのミュージシャンが共演したもので、なかなか聴く機会の少ないマダガスカルの民族楽器もフィーチャーされた独特の世界観が素晴らしいです。


特にヴァリハという竹筒で出来たマダガスカルの弦楽器による即興演奏の優美さは、透き通った音色の美しさも相まってまるで桃源郷にいるかのような甘美な音世界を聴かせてくれます。さらに、素朴な音色を出す木琴とビッグ・バンド的なスピード感のあるダイナミックな演奏もしていたり、まさにJef Gilsonがそれまで培ってきたジャズ・センスをマダガスカルのミュージシャンと共に注ぎ込んだ大傑作。


このボックスセットはRecord Store Dayという世界で同時開催されるレコードイベントで発売された限定品のため、現在では中古で探すことになってしまいますが、Jef Gilsonの作品は復刻される機会もあるので是非その時は忘れずにチェックをと思います。



Workshop De Lyon『50eme Anniversaire』(2017)

bandcampから彼らの曲を聴いたら間違いなく欲しくなる一枚
 出典  Funmee!!編集部
bandcampから彼らの曲を聴いたら間違いなく欲しくなる一枚


フレンチ・フリーを代表し、南フランス発祥のレーベル、ARFIから1970年代から活動をする看板グループWorkshop De LyonのこれまでCD化すらされなかった初期7作を一気にCD化したボックスセットです。素晴らしいのがWorkshop De Lyonの前身となるFree Jazz Workshopというグループの非常にレアな作品も同時に収録しているところ。


どこかサーカス小屋にいるような雰囲気がありつつ、懐かしさを感じる民謡的なフレーズや演劇的な展開が非常にユニークでフランスのユーモアやセンスの良さを感じます。


そしてなんと、bandcampという音楽サイトで2017年からこれまで知られることもなかったライヴ音源が突如アップされ出していて、試聴もダウンロードも可能となっているんです。音質が荒々しいので好きな方向けなのかもしれませんが、初期から近年までの貴重な音源が聴けるとなると聴かないわけにはいきません。是非チェックしてみてください。



Workshop De Lyonのライブ音源が聴けるサイト、bandcamp
 出典  Funmee!!編集部
Workshop De Lyonのライブ音源が聴けるサイト、bandcamp

 

Willem Breuker『Muziek In Amsterdam』(1980)

コレとWillem Breukerが率いたWillem Breuker Kollektiefの『Out Of The Box』も合わせてチェック
 出典  Funmee!!編集部
コレとWillem Breukerが率いたWillem Breuker Kollektiefの『Out Of The Box』も合わせてチェック


フリージャズの世界のなかでも面白い活動をしたのがオランダのサックス奏者Willem Breukerです。彼が世に送り出したものには、ドイツの劇作家Bertolt Brechtをテーマにした作品や手回しオルガンを使った作品、無声映画に演奏を加えた作品などがあるのですが、どれからも一貫したテーマのようなものを感じとれるところが凄いですね。


Brechtをテーマにした作品は本物の麻袋の中にレコードが入っていますし、手回しオルガンの作品は人通りのある路上で雑踏のなか、演奏し録音されています。まるで大衆のなかでこそ彼の音楽は生き生きとするかのよう思えます。さらにBrechtをテーマにした作品には、楽曲に演劇的な展開や映画のシーンが連なったような展開をする点が面白く、そのなかに泣きあり、笑いあり、興奮ありの人情劇が加わっています。その世界観は日本人の僕らからするとまさに『男はつらいよ』のようにも思えてきて、とても親近感が湧いてしまいます。


この作品も、そんなBreuker劇場と言える要素がたくさん詰まっていながらも、どこまでも庶民派な精神を感じさせてくれる名作です。


現在は廃盤で中古で探すしかないのですが、昨年Willem Breukerが率いたバンド、Willem Breuker Kollektiefの活動まとめ的なCD11枚組ボックスセット『Out Of The Box』が同レーベルからリリースされたので、気になった方は是非そちらも聴いて頂けたらと思います。レア音源や貴重な写真が掲載されたインサートも入っているのでとてもオススメですよ。



後編に続く。

音楽

『Free Jazz』と名付けられたこの作品は、フランスのなかで最も重要なピアニストのひとり、Francois Tusquesが出した、フランス初のフリージャズ・アルバムと言われています。


■プロフィール

三橋高志さん


以前はコンビニ経営者という異業種にいながらも、ジャズに関する圧倒的な知識とコレクションで、2015年にディスクユニオンにジャズ担当として入社。現在はジャズの魅力を多方面に発信している。趣味のギターは今年で15年目。




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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文・写真:吉田佳央(Yoshio Yoshida)



2018年2月5日
Funmee!!編集部
Funmee!!編集部

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