英国旧車オースチン・ヒーレーが紡ぐ、家族の絆の物語


英国の旧車・オースチン・ヒーレー。


去る5月27日に静岡県富士宮市の白糸スピードランドで、このクルマを愛する方々のクラブ『Austin Healey Club of Japan(以下、AHCJ)』のメンバーたちが集まる、『National Healey day』と呼ばれるイベントがありました。

 

今回はそちらにおじゃまして、メンバーの一員である松本裕樹さんに、クルマと家族の幸せな関係について語っていただきました。

 


涙なしでは語れない“変なクルマ”の素敵な思い出


「泣かそうとしてくるんですよ。演出自体がおかしかったんだよね」

1カ月前の長女の披露宴を思い出しながら、松本さんは照れくさそうに笑っていました。



Austin Healey Club of Japanのメンバー、松本裕樹さん

 出典  Funmee!!編集部


「ヴァージンロードでこらえて、お色直しの最中のスライドショーで耐えたのに、最後のサプライズの手紙にやられましたよ。『小学生のとき、学校まで変なクルマで迎えに来てくれたのは、恥ずかしかったけれど嬉しかった』だって。無理でしょ、泣くでしょ。晴れの舞台でそんなこと言われたら」



松本さんの初代オースチン・ヒーレー スプライト

 出典  Funmee!!編集部


その“変なクルマ”こそ、松本さんがはじめて購入したオースチン・ヒーレーで今から20年以上前に手に入れた1959年型のスプライトでした。丸型ヘッドライトがボンネットの上に飛び出しているユニークな二人乗りのオープンカーです。



日本では“カニ目”の愛称で呼ばれるそのクルマは、長女の小学生時代も旧車好きの間では有名な車種でした。



松本さんの娘さんの結婚式

 出典  Funmee!!編集部


「結婚式場は古いジャガーの前で記念写真を撮るのが通例だったのに娘が断ったそうです。『このクルマはウチには関係ありません。クラシックカーといっしょに撮るなら父のクルマがあるから』と。それで僕のヒーレーを貸してくれと言われたんです。やっぱり嬉かったですよね」



松本さんにとって、英国車が特別な理由


松本さんの現在の愛車は、ため息をつくほど発色のいい赤の100/4。これが二台目のオースチン・ヒーレーだそう。最初に手にしたスプライトより3年ほど古い1956年製。ちなみに長女の結婚写真に参加したのはこのクルマでした。



娘の結婚写真にも参加した、松本さんのオースチン・ヒーレー

 出典  Funmee!!編集部


「娘に『変なクルマ』と言われたスプライトは、このクラブの新人メンバーが引き継ぎました。AHCJでは1台のクルマがメンバー間で受け継がれることがよくあるんです。互いに信頼しているからね。今乗っている100/4も、武森会長に海外で探してもらいました」

 

松本さんは現在100/4以外にライレー・ケストレルという、やはり'60年代の英国製小型サルーンも所有しているそう。彼にとって、英国車にはどんな魅力があるのでしょうか。

 

「他の国にはない気品があるんですよね。それがミニやヒーレーといった決して高価ではないクルマにも漂っている。走りも小気味よくて楽しい。そういう魅力が'60年代までの英国車にはあふれていた。でも今のクルマは、英国車に限らずあまり興味がわかないですね」



クラブにいるのは、クルマだけが理由ではない


大人になっても、利害関係なく共通の趣味で盛り上がれることは少ないはず。


松本さんも入っているAHCJは、みんなで支えあい、古いクルマを維持しているそう。松本さんもスプライトに乗り始めた当初は、修理面などで情報がほしくてこのクラブに入りましたが、今では仲間たちが大好きなんだとか。



仲間たちの車

 出典  Funmee!!編集部


それと「メンバー同士のいざこざなんてゼロ。目立ちたがり屋はいないし、部品の融通には親切に応じ合う。クラブって、最初こそクルマのつながりだけで入るものだけど、そこにい続けるのはクルマだけが理由じゃなくなると思いますよ」とも語ってくれました。

 

仕事とは無縁の趣味仲間は、得がたい存在かもしれません。ですが、もっとも身近な家族はどう思っているのでしょうか。



レース旗をふる松本さん

 出典  Funmee!!編集部


「僕は製造業の会社を経営していますが、普段は仕事ばっかり。クルマ以外に趣味なし。日々本当に忙しいのだけど、こういう遊びがなかったら働けないですよね。クルマやクラブが仕事の大きなモチベーションになっています。そんな自分を知っているから、嫁さんはこう言ってくれますよ。パパは遊ばないと死んじゃうって。理解してくれていると思うんですけどね、たぶん(笑)」

 

そんな松本さんの最大の心配事はお世継ぎ問題だそう。

「自分のクルマを誰が乗り継いでくれるか? 数少なくなった100/4を僕の代で潰すわけにはいかないし、海外に出ていくのも忍びない。となると、やはり息子に乗ってほしいわけですよ」



いつか息子に乗ってほしい松本さんの愛車

 出典  Funmee!!編集部


松本さんには、長女と次女、そして長男の3人の子供がいます。男系を望むなら娘たちの旦那も対象に入りそうですが、「凄いクルマですね、としか言わない」らしい。となると、現在大学生の長男に託す以外にないのかもしれません。



クラブのみんなは仲良し

 出典  Funmee!!編集部


「AHCJメンバーの最年長が70歳なので、あと20年くらい猶予はありそうです。それまでに息子の英才教育を終わらせなきゃ。いやまったく、古いクルマ好きにとっては世界共通の深刻な問題なんですよ!」

 

そう言いながら自ら笑っている松本さんを見ていると、まだまだオースチン・ヒーレーから離れる日を想像するのは難しそうです。



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文:田村十七男(Tonao Tamura)

写真:澤田聖司(Seiji Sawada)


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Funmee!!編集部

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