ヴィンテージバイクという選択肢【ハーレーダビッドソン編】
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ヴィンテージバイクという選択肢【ハーレーダビッドソン編】


バイクを駆る楽しみは最新モデルでも味わえますが、長い歴史を持つメーカーの旧いモデルには、その一台でなければ満喫できない面白さがあります。


2018年に創業115年を迎えたアメリカの二輪メーカーハーレーダビッドソンも、ヴィンテージバイクの良さを味わえる名車が数多く残っています。そこでヴィンテージハーレー専門店バンカラ東京にて、その魅力と楽しみ方を教えてもらいました。



歴史を経た味わいや魅力を相棒にしよう

「旧いハーレーは壊れて当たり前」なんてのはもはや昔の話。メカニックの技術や知識が大幅に向上したいま、戦前のハーレーも現役で走れます
 出典  Funmee!!編集部
「旧いハーレーは壊れて当たり前」なんてのはもはや昔の話。メカニックの技術や知識が大幅に向上したいま、戦前のハーレーも現役で走れます


ヴィンテージバイクにはにじんだオイルが焼けた匂い、アナログなメカニズムのエンジンと、そこから吐き出される乾いたエキゾーストサウンドなど、最新のバイクでは味わえない魅力があります。

 

もちろん、最新のバイクより多くの手間がかかります。ところが一度ヴィンテージバイクに跨ると、「最新モデルでは軽減された鼓動感やフィーリングがある」と感じるライダーも少なくありません。当時メーカーから出荷されたままのペイントや装備は“オリジナル”と呼ばれ、高い価値がつく基準になります。つまり、パーツ一つひとつにも愛情を注ぐ面白さがあるのです。



多くのヴィンテージハーレーが揃い、販売やレストアを行う専門店バンカラ東京。代表の宮崎さんはディーラー勤務経験もあり、新車とビンテージ両方の魅力を知るツワモノ
 出典  Funmee!!編集部
多くのヴィンテージハーレーが揃い、販売やレストアを行う専門店バンカラ東京。代表の宮崎さんはディーラー勤務経験もあり、新車とビンテージ両方の魅力を知るツワモノ


「エンジンの始動から走行中の操作まで、ヴィンテージにしかない操作が多くあり、自分でアナログな機械を操っている感覚を楽しめるのが魅力です」

 

そう話すのはヴィンテージハーレー専門店バンカラ東京の代表・宮崎弘恭さん。

 

「どちらにも良いところがあるのですが、新車からヴィンテージに乗り換える人はすごく多いけど、その逆はかなり少ないんです。それほど一度乗ったら病みつきになってしまうのがヴィンテージハーレーなのでしょう」



ヴィンテージハーレーを学ぶには、まずエンジンを知ろう


ヴィンテージのハーレーで、まず覚えたいのが歴代エンジンの名前と年代。

 

ハーレーのエンジンは時代ごとに変化していて、それぞれに通称がつけられています。この名を知らないと、フリーク同士の会話が成立しないほどポピュラーなものであり、それぞれの時代の違いは車両を楽しむスタイルの指標にもなります。

 

そこで最も基本となる4つのヴィンテージエンジンを紹介します。



FLAT HEAD/フラットヘッド(1929〜1974)

アメリカ人が作ったアメリカ生まれのエンジン「フラットヘッド」
 出典  Funmee!!編集部
アメリカ人が作ったアメリカ生まれのエンジン「フラットヘッド」


エンジン内の吸排気バルブがシリンダーの上ではなく、並んで上向きに配置されたサイドバルブエンジン、通称「フラットヘッド」。四輪ではフォードが1908年から、ハーレーは1929年のDLというモデルから採用されたエンジン機構です。

 

1936年以降はフラットヘッドと異なるOHV方式のエンジンも採用されることになりますが、フラットヘッドは’30年代以降も生産され、’70年代まで作り続けられました。OHV方式はヨーロッパで誕生し、フラットヘッドはアメリカで開発されたため、よりアメリカらしいエンジンとして愛されています。



1945 WL。"ベビーツイン"と呼ばれる750ccのフラットヘッドを搭載。軍用車に注力していた時代のため、市販車はかなり貴重。この車両はオリジナルのペイントや装備を多く残しています
 出典  Funmee!!編集部
1945 WL。"ベビーツイン"と呼ばれる750ccのフラットヘッドを搭載。軍用車に注力していた時代のため、市販車はかなり貴重。この車両はオリジナルのペイントや装備を多く残しています

 

 

KNUCKLE HEAD/ナックルヘッド(1936〜1947)

通称「ナックルヘッド」エンジン。その名の由来は、ふたつの大きなボルトが付いたロッカーカバーの形状が拳に似ていることから
 出典  Funmee!!編集部
通称「ナックルヘッド」エンジン。その名の由来は、ふたつの大きなボルトが付いたロッカーカバーの形状が拳に似ていることから


ハーレーの市販車で初めて採用されたOHV V型二気筒エンジンとなる「ナックルヘッド」。現代のハーレーもほとんどのモデルはV型のOHVなので、ナックルは現代まで続くハーレーの象徴的なエンジンの元祖と言えるものです。

 

’30年代は排気量1,000ccのEシリーズのみのラインナップし、1940年から1,200ccのFシリーズが加えられました。



1939 EL。ニュートラル位置が2速と3速の間にあるなどこの製造年のみのディテールを持ちます。'30年代のナックルヘッドは市場で最も高値が付きやすい人気のモデル
 出典  Funmee!!編集部
1939 EL。ニュートラル位置が2速と3速の間にあるなどこの製造年のみのディテールを持ちます。'30年代のナックルヘッドは市場で最も高値が付きやすい人気のモデル

 

 

PAN HEAD/パンヘッド(1948〜1965)

パンヘッドからヘッドの素材がアルミへ変更されました
 出典  Funmee!!編集部
パンヘッドからヘッドの素材がアルミへ変更されました


1948年に誕生し、20年近く採用されたロングセラーエンジン「パンヘッド」は、ロッカーカバーが鍋(pan)の形に似ていることが名前の由来とされています。

 

長年採用されていたこともあり、サスペンションやフレーム機構などハーレーの構造が大きく進化した時代を経験したエンジンで、ナックルヘッドと同様の排気量ながらヘッドがアルミ製に変更されたため熱に対する性能も向上しています。



1950 FL。この車両は純正オプションパーツや、スタッズ装飾が施されたBUCOのサドルバッグなど、当時のドレスアップパーツを多く備え、時代感を強く映し出しています
 出典  Funmee!!編集部
1950 FL。この車両は純正オプションパーツや、スタッズ装飾が施されたBUCOのサドルバッグなど、当時のドレスアップパーツを多く備え、時代感を強く映し出しています

 

 

SHOVEL HEAD/ショベルヘッド(1966〜1984)

鉄製のシリンダーを採用する最終モデル「ショベルヘッド」。名前の由来は諸説ありますが、アメリカで石油を採掘する掘削機のパーツに形状が似ている説が濃厚とされています
 出典  Funmee!!編集部
鉄製のシリンダーを採用する最終モデル「ショベルヘッド」。名前の由来は諸説ありますが、アメリカで石油を採掘する掘削機のパーツに形状が似ている説が濃厚とされています


ヴィンテージハーレーは鉄製シリンダーを持つことがその象徴とされています。この「ショベルヘッド」の次の「エボリューション」から最新ハーレーと同じくアルミ製になるため、鉄製シリンダーを備えた最後のハーレーとなります。現代の道路事情にも十分通用するスペックを備え、排気量は1978年に1,340ccまで拡大されました。


製造年のうち、1966〜1969年と1970〜1984年とでクランクケースの形状や発電システムが異なるため、前期はアーリーショベル、後期はコーンショベルと呼ばれています。またハーレーは、1969年にAMFという会社に買収され、1981年に買収前からいたメンバーたちが中心になって買い戻したという歴史を持ちます。「バイバック」と呼ばれるこの大きな動きがあった時代に生産されていたのが「ショベルヘッド」でした。



1979 FXS LOWRIDER。1977年に登場し、日本でも人気を誇るローライダー。一文字ハンドルや極太のマフラーなど、ノーマルでドラッグスタイルにカスタムしたテイストをもちます
 出典  Funmee!!編集部
1979 FXS LOWRIDER。1977年に登場し、日本でも人気を誇るローライダー。一文字ハンドルや極太のマフラーなど、ノーマルでドラッグスタイルにカスタムしたテイストをもちます

 

 

現代のハーレーにはないディテール


サスペンション機能やシフト操作など、最新モデルにはない操作方法で運転することや、その時代に特徴的な装備をもっていることもヴィンテージバイクならではの楽しみ。ヴィンテージハーレーに特有の代表的なディテールを見ていきましょう。



スプリンガーフォーク

フラットヘッドエンジンのWLに備えられたスプリンガーフォーク。パンヘッドの初代モデル(1948年式)まで採用され続けました
 出典  Funmee!!編集部
フラットヘッドエンジンのWLに備えられたスプリンガーフォーク。パンヘッドの初代モデル(1948年式)まで採用され続けました


’20年代に登場し、フロントタイヤが路面の衝撃を拾うと後ろのレッグが動き、バネの力だけで衝撃を和らげるサスペンションです。純正としては1948年まで採用され、その後油圧式フォークへ変更されていきました。

 

ヴィンテージハーレーと聞いたとき、多くの人がこのフォークが付いている姿を想像するのではないでしょうか? クラシックな外観とフワフワとした乗り味が特徴で、いまでも人気の高いパーツです。



リジッドフレーム

リアサスペンションがまだなかった時代のフレーム「リジッドフレーム」
 出典  Funmee!!編集部
リアサスペンションがまだなかった時代のフレーム「リジッドフレーム」


’50年代にリアサスペンションが登場するまで、鉄のフレーム自体がしなって衝撃を吸収するという原始的な骨格を採用していました。「リジッドフレーム」と呼ばれるそのフレームの衝撃吸収性能はサスペンションより劣りますが、路面の状況をよりダイレクトに感じられ、トライアングルを描くシルエットの美しさから、旧いスタイルを好むライダーからは圧倒的な人気を誇っています。

 

チョッパーやボバーなど、カスタムを前提としたスタイルでも、このシルエットを肝とすることが多く、ヴィンテージハーレーを象徴するディテールのひとつになります。



ハンドシフト

タンクサイドに備えられた「ハンドシフト」
 出典  Funmee!!編集部
タンクサイドに備えられた「ハンドシフト」


いまのバイクは世界共通で、手でクラッチを操作して足でシフトチェンジしますが、’50年代までのハーレーは足でクラッチペダルを踏んで、タンクサイドのレバーでシフトチェンジをします。

 

こちらも現代のカスタムにもよく用いられるシステムで、あえて高年式のモデルにこのシステムを導入する場合も少なくありません。もちろん、手間を考えればフットシフトの方が楽な場合が多いですが、ガチャガチャと手でシフトをチェンジする操作は、「運転」ではなく「操縦」している楽しさがあります。



タンクデザイン

1940〜1946年まで採用されたオーナメント。カラーリングは年式によって異なります
 出典  Funmee!!編集部
1940〜1946年まで採用されたオーナメント。カラーリングは年式によって異なります


タンクはハーレーの顔とも言えるパーツですが、年式によってデザインが異なるため年代判別のヒントにもなります。大きく分けて、’30年代まではデカールを使用したグラフィックで、1940年から立体的なオーナメントが採用されています。



ミリタリースペック

軍用車として製造されたWLA
 出典  Funmee!!編集部
軍用車として製造されたWLA


ハーレーは軍事や郵政などストリート以外の部分でも活躍しました。軍用車にも複数の種類がありますが、代表的なのが写真のWLA。第二次世界大戦時に採用されたモデルで、当時はすでにOHVのエンジンが開発されていたにもかかわらず、現場での整備性が重要視され、構造がシンプルなフラットヘッドが採用されました。ガンホルダーや水が入りにくい形状のエアクリーナーなど、軍用車ならではのディテールも魅力です。



ヴィンテージハーレーの面白さは乗らなければわからない


ヴィンテージバイクではエンジンの始動やシフトチェンジなど、現代のバイクとは異なる操作が必要になります。セルモーターが搭載され、ボタンひとつでエンジンをかけられるようになったのは1965年。それ以前は、キックペダルを踏み下ろし、自らクランクを動かしてエンジンを目覚めさせていました。

 

セルスターターに比べて明らかに手間はかかりますが、象徴的な儀式として愛されているため、セルとキックを併用する時代のモデルに乗っていてもキックでエンジン始動を行うライダーは少なくありません。



 出典  Funmee!!編集部
キックスタートのひと手間もヴィンテージバイクの魅力のひとつ。空キックを2回したのち、スイッチを回してキックペダルを踏み下ろし、エンジンスタート!


’80年代にエンジンとフレームの間にゴムを介するラバーマウントシステムが誕生してからは、走行中のエンジンの振動が減りスムースな乗り味になりました。エンジンの振動を不快とする考え方から生まれた進化ですが、それ以前のエンジンの鼓動感こそがヴィンテージハーレーの魅力でもあります。

 

また、リジッドフレームの車両は、路面の凹凸や感触などを直に感じられます。内燃機の鼓動感や不規則に刻まれるエンジンサウンドなど、走行速度で表現できない心地よいスピード感を楽しめます。



専門店などプロの手も借りつつ、自分でもメンテナンスを楽しむ


ヴィンテージハーレーに乗り続けていれば、エンジンがかからなくなってしまうなど、現行車では経験することがほとんどないトラブルに直面することもあるかもしれません。

 

まず前提として専門的な技術を必要とする部分はプロに任せるのが一番です。自分で修理しようとして、パーツを壊してしまい余計修理にお金がかかってしまうというアクシデントも少なくありません。



バイクの基本的な構造を知れば、プラグの点検や交換も楽しめます
 出典  Funmee!!編集部
バイクの基本的な構造を知れば、プラグの点検や交換も楽しめます


しかし、プラグの点検や交換などの基本的なメンテナンスは自分で行うと愛着も湧くしバイクの構造を学ぶきっかけにもなるでしょう。プロの力を借りながらでも、愛車と長く付き合っていくためには基本知識や手間をかけるだけの情熱は欠かせません。

 

しかも、トラブルを経験してでも自分のバイクを知ることでより愛情が深くなることは間違いありません。バイクから教えられることも多いでしょう。旧い時代のハーレーを現代でも安全に楽しく乗るためには、現行車以上に手間をかける覚悟をしてください。その先にはヴィンテージハーレーでしか味わえない楽しさが待っているはずです。



Fun!のブリキ看板、ハーレーダビッドソンです。

インテリアにピッタリ!お部屋に飾ればかっこよさが滲み出ます。


■取材協力

バンカラ東京

 

東京都目黒区碑文谷5-29-10ロジェマン柿の木坂101

TEL:03-6421-1950

 

 

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文:金原悠太(Yuta Kinpara)

写真:伊勢悟(Satoru Ise)



2018年5月11日
Funmee!!編集部
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