既存の価値観に新しい視点をプラス。空間デザイナー・加藤匡毅さんのクリエーション


既に存在する美しさや価値観に、独自の視点を加えて新しいものを生み続ける空間づくりを得意とする「Puddle」。その独特の感性はどこから生まれてきたのか――自らの理想を探求し、カタチにする代表・加藤匡毅さんの、ものづくりの旅路を伺いました。

絵が描きたいから、建築家への道を選んだ

 出典  Funmee!!編集部


ーー 加藤さんが建築家を志したきっかけは何だったのですか?


幼い頃から図工が得意で、漫画や絵を描くことが大好きな少年でした。いつかイラストレーターか漫画家になりたいと、ぼんやり夢を描いてはいたのですが、時間が経つごとに、美術は僕より長けている人が多いことに気がついて……。文系は全く得意ではなかったので、消去法でなんとなく建築学科へ通い始めたのがきっかけですね。

 


ーー では、それまではあまり建築には興味がなかったと?


そうでもないとは思うんです。僕は横浜の埋め立て地にある街で育ったのですが、その周辺は面白い建物も多く、幼少の頃からごく自然に建築の魅力には触れ合っていました。ただ、その世界のことを詳しく知る機会はあまりなかったので、大人になってようやく興味が出てきたという感じでしょうか。

 


ーー 建築の学校に通い始め、何か変わりましたか?


建築のことを学ぶうちに、その世界はどんどん面白くなってきました。建築科なら、製図や模型作りなど、大好きな絵を描くことに近い勉強ができる。それが選んだきっかけでもあったので、製図の授業ではまずまずの評価を取れていましたね。当時は先生にも「面白いこと考えるな」と褒められては、それが嬉しくてさらに頑張っていた。


プレゼンテーションの授業も良かったですよ。でもこの2つ以外はあんまり興味が持てなかったので、実はほとんど授業には出てなかったですね。だから卒業後もすぐには就職せず、なんとなく過ごしていました(笑)。



世界的建築家のもと、ひたすら模型を作る

ーー そんな中、建築家・隈研吾さんの事務所に入られましたよね? 2020年のオリンピック会場のデザインも担当する巨匠と働くなんて、すごいことのように思うのですが。


これも偶然の出会いというか……。たまたま隈さんの元で働いている先輩との出会いがあり、僕がフラフラしている時に声をかけてくれたんです。「加藤は模型作りが上手いから手伝いに来てよ」って。それから事務所に出入りするようになり、1年ほど経った頃に「ここに入る?」と声をかけて頂きました。結果、3年弱お世話になりましたね。

 


ーー 事務所ではどんな仕事をしていたんですか?


模型の製作やディレクションを主に担当していました。当時はCGも登場していましたが、僕はすべて手作業。隈さんの建築は、透けていたり、存在しているのかわからないようなデザインが魅力のひとつですが、それを模型で表現するのはなかなか大変でした(笑)。アクリルをひたすら削ったり、穴を開けるなど、DIYでコツコツとやっていました。



 出典  Funmee!!編集部


ーー 隈研吾さんのお仕事は万博会場の設計など、どれも大きなプロジェクトばかりですよね?


そうなんです。5年や10年など、長いスパンをかけて行うプロジェクトが多かった。自分の知らない新しい世界に関われることは、とても刺激的で興味はあったのですが、なかなか10年先が想像できなかった。そのうちに、自分の思考や描いたスケッチがすぐリアルな空間になる感覚を体験したいという思いが強くなってきました。



既に存在する美しさや価値観+独自の視点=Puddle

 出典  Funmee!!編集部


ーー そこで事務所を辞めてIDEE’に入られたんですね。


隈事務所にはいろんな人や企業が出入りしているのですが、その中で以前から気になっていた会社がIDEE’だったんです。彼らはスーツも着ないし、こっちから出したオーダーとも全然違うモノを上げてくる。「この会社、面白いな」と。

 


ーー IDEE’時代で学んだことを教えてください。


海外に自分たちの家具ブランドをゲリラ的に発表したり、アジアの拠点としてバリ島に工房を作るなど、IDEEではさまざまな体験をさせていただきました。「古いものに新しい価値を与える」という現在の考えも、ここで育まれたような気がします。

 


―― そうした歩みがあって、自身の事務所設立につながったのですね。


隈事務所では「頭で考えたことを空間としてデザインすること」を学び、IDEEでは「ライフスタイルの想像」を学びました。それが現在の強み――建築的視点で外からモノをつくり、コップ一つを置くテーブルから空間をデザインすることもできる――につながっています。

 


―― 手づくりにもこだわっていらっしゃいますよね。


はい。最初の事務所もほとんどが手づくり。自転車もパーツから組み立てました。



ーー そこまで加藤さんがこだわる「モノ作り」の魅力とは何でしょうか?


実は既製品に関してのアンチテーゼでもあるんです。もちろん、モノ作りに愛情を持って開発している人も多いとは思いますが、現代は安さや見た目ばかりを重視したモノが多いように感じます。そこにはクリエーションが見えない。僕は、誰もが一緒は嫌だし、その人の個性が見えて、使うほどに味わい深くなるモノと暮らした方が楽しい。だから手づくりしているのだと思います。



空間デザイナー・加藤匡毅さんの 「いいな!」をカタチにする仕事術


■プロフィール

加藤匡毅さん


既に存在する美しさや価値観に独自の視点を加えて新しいものを生み続ける空間デザイン会社「Puddle(パドル)」代表であり、一級建築士、デザイナー。隈研吾建築都市設計事務所、IDEE’などを経て、2012年にPuddle設立。「LIXIL主催キッチンで暮らす施工事例コンテスト」金賞受賞など、受賞歴多数。

http://www.puddle.co.jp/



===

企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:菅明美 (Akemi Kan)

写真:ふかみちえ(Chie Fukami)



最新情報はこちらから フォローやいいね!をして最新情報を受け取ろう

Funmee!!編集部

Funmee!!編集部

TOP