道なき道を行ってこそ、撮れるものがある。山岳写真家・杉村航さんの究極のアウトドアスタイル


道なき道を歩き、魚を釣り、山菜やきのこを採って食べながら、山で写真を撮り続ける、山岳写真家の杉村航さん。

幼少期から山歩きをし、高校生のときから山で写真を撮っていたという杉村さんですが、現在のような登山スタイルに行き着いたのは、最近のことだと言います。

そんな杉村さんに、一般登山道さえ離れて自然の中で過ごすことの魅力を聞きました。


山岳写真の原点は、高校の部室と六甲山

 出典  Funmee!!編集部


―― 「山岳写真家」という肩書きの杉村さんですが、写真と山、先に始めたのはどちらなんですか?


山歩きは子どものころから、写真は高校生からなので、山のほうですね。祖父や父の趣味が山登りやハイキングで、兵庫県生まれなので、須磨アルプスとか六甲山とか、よく登っていました。とはいっても、当時は気軽なハイキング程度でしたけどね。


 

―― 写真も高校生からって早いですね。何かきっかけがあったんですか?


きっかけは幼馴染の悪友です。僕は山でしたが、彼は鉄道マニアでして、しかも撮る方のマニア。そんな彼が入っていたのが写真部だったんです。写真部はすごく居心地のいい部室で、悪友に誘惑されるまま入り浸るようになりました(笑)。



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―― なるほど(笑)。そこから、どうやって写真にハマっていったんですか?


写真部の部室だからまわりはカメラ機材であふれてて、気づけば自然とカメラを手に山へ行くようになりました。当時はモノクロのネガフィルムで撮影していたんですが、やっぱりなかなか思ったように写らないんですよね。それが少しずつできるようになってくると面白くて。そのころから山や高山植物を撮っていたんですが、平日も学校を休んで行ったりして、最低週1回は山に登っていましたね。

 


―― ええ、学校をサボって!? 怒られなかったんですか?


ちゃんと学校にも許可を得てましたよ。当時から写真展で入賞したりしていたので、許されたんでしょうね。僕自身は、山に行く理由を作るために、写真を撮っていたようなものでしたが……。親もグレるよりはいいと思っていたようで、特に止められませんでした。ただ、生命保険は2つかけられてましたね。「あんた早く死にそうだから」って(笑)。



友人に置いていかれてしまったことが転機に

 出典  Funmee!!編集部


―― 高校生のころは山小屋に泊まっていたんですか?


いやいや、お金がないので、当然テント泊です。図書館で本を借りてきて、山の情報を調べるんですが、いざ行ってみたら登山口がなくなっていて、仕方ないからそのまま山に入ったり、好きなところにテントを張って寝たりしていました。地図も読めなかったので、山の反対側に下りてしまって、泣きながらずっと歩いたりね。

 


―― 当時から、今のスタイルの片鱗が見られますね(笑)。そのころから一般登山道を外れて歩いていたんですか?


いえ、一般登山道を外れるようになったのは、実はけっこう最近です。2010年に、友人がネパールの8000m峰、ダウラギリに登りに行ったんですが、そのときちゃんと誘われなかったのが悔しくて。彼が遠征に行っている間、僕は国内で自分を鍛えるために登山道を外れてバリエーションルートを登るようになりました。結局、彼は登山中に雪崩に遭って、帰ってこなかったんですけどね……。

 

 

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―― そんなことがあったんですか……。そのときの経験が今の登山スタイルにつながっているんですね。


そうなんです。今は魚を釣りながら、沢を登っていくことが多いですね。できるだけ人に会わない場所に行きたいです。そのほうが魚も釣れるので(笑)。沢を詰めていって源流までいくと、鞍部(尾根の低くくぼんだ場所)に出るので、そこから山の反対側に行く。そうやって沢を伝って歩くのが楽しいです。



山のものを取り入れて、自然の一部になりたい


―― 山小屋やテント場などを利用しないとなると、持ち物は何が必要ですか?


タープやシュラフ、マット、ロープなど寝るための道具と、ノコギリや釣り道具、鍋、調味料など食べるための道具、あとはヘルメットやハーネス、沢靴など沢登りの装備ですね。



 出典  Funmee!!編集部


―― かなり重そうですね。


そうでもないですよ。登山を楽しむために荷物はなるべく軽くしたいので、バーナーや食料は必要最低限しか持たず、あとは山にあるものを使っています。米と調味料だけ持っていって、魚を釣ったり、夏はミズ(ウワバミソウ)やキノコ、春は山菜やナメコを採ったり、何もなければカエルとかヘビとか虫とか……ってこんな話したら引きますよね(笑)。

 


―― なんていうか、ワイルドですね……(笑)。どんなふうに調理するんですか?


イワナは刺身にしたりあら汁にしたり、燻製にして新聞紙に包んで翌日の行動食にしたりします。魚も山菜もキノコも、たいていのものはゴマ油で塩こしょう炒めにするか、汁物にすれば、おいしく食べられます。焚き火で料理すると何でもおいしくなるんですよね。



 撮影  杉村航さん


―― 狩猟はしないんですか?


やってみたい気持ちはすごくあるんですが、そこまでやると写真を撮らなくなりそうな気がして(笑)。

 


―― 杉村さんが思う、山の魅力ってどんなことですか?


人にも会わず沢の中で生活して、山にあるものを自分の中に取り入れていると、自分も自然の中に溶け込んでいくような感じがしてくるんです。そうやって、自分も自然の一部になりたいって思います。魚がたくさん釣れた後に、焚き火をしながらのんびりお茶している時間が最高に幸せですね。夏は1週間単位で山に入って、3〜4日を街で仕事するというサイクルが多いんですが、山にばかりいるから仕事の連絡がつかなくて、ますます仕事せず、山に入り浸るという。高校時代の部室がタープに変わった感じですね(笑)。




■プロフィール

杉村航さん

兵庫県出身、長野県在住。山岳写真家。幼少期から祖父や父親に連れられて山歩きを始め、高校生のころから写真部で山の写真を撮り始める。1994年、大学生のころにスキー写真撮影のアルバイトを始め、大学卒業後、スタジオアシスタント、出版社勤務を経て、2000年にフリーランスに。現在、雑誌や広告などで幅広い撮影を行いつつ、国内外の山におもむき、スキー写真や山岳写真などの作品を発表している。



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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:山賀沙耶 (Saya Yamaga)

写真:岡崎健志 (Kenji Okazaki)



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Funmee!!編集部

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