カッターとヤスリ、WEBがあればOK!情景師アラーキーさんに聞く、ジオラマ入門


ジオラマは「立体の絵画」、ジオラマをつくることはその光景に対しての最高の愛し方だと語る情景師アラーキーさん。

リアルすぎるジオラマができるのも、わかる気がしますね。世界が注目する情景師アラーキーさんにジオラマの楽しみ方やつくり方を教えてもらいました。

ジオラマつくりは、最上級の愛し方

 出典  Funmee!!編集部


—— アラーキーさんは、作品のイメージはどこから?

 

自分が今まで住んできた懐かしの光景とか記憶の中にある哀愁とか、そういう気持ちを残したいという想いがきっかけになります。ものすごく感動したときって、その光景を写真に撮る人もいれば、歌をつくる人もいますよね。ジオラマもそのひとつ。僕はジオラマをつくるのはその光景の最上級の愛し方だと思うんです。




—— 最上級の愛し方ですか?

 

そう。例えば、造船所をつくろうとしたら、漁船の構造から建物の構造、海につながるスロープの角度とか、いろいろなことを勉強するんですよね。完成した作品を写真に撮ったときに本物みたいな光景になるのは、その光景の全てを余すことなく愛しまくった結果なんだと。



現地に行けなくてもWEBの情報収集だけでジオラマはつくれる

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—— 実際に行ったことのない場所のジオラマもつくれます?

 

つくれます。僕は作家なので現地取材にも行きますが、WEBの情報収集だけでもジオラマはできるんです。だから山に住んでいて港なんて行ったことがない人も、港町のジオラマをつくれる。この「トタン壁の造船所」は架空の場所なんですよ。



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【トタン壁の造船所のストーリー】

戦争中に南方前線の激戦区で船修理の任務につく2人の技術者がいた。彼らは戦争が終わって無事に帰れたら造船所をやろうと約束する。


命からがら帰国した2人は、戦後、瀬戸内海に小さな造船所をつくった。藤井さんと後藤さん、それぞれの頭文字をとって『藤後造船』。それから50年ちかく経ち、息子たちが造船所を引き継ぐ。2人はおじいちゃんになり、杖をつきながら息子たちに茶々を入れる平和な日々。



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—— そんなにつくりこんだストーリーがあるんですね! 感動です。ちなみに、1番楽しい瞬間とかありますか?

 

汚しの塗装を入れているときですね。汚しというのはエイジング、つまり経年変化を指します。このジオラマは、全部プラ板という板からつくっていくので真っ白い状態なんです。そこから塗装をして、経過年数を想定しながら汚しを加えます。


たた闇雲に加えるのではなくて、台風でトタンが剥がれてパッチワークみたいになるとか、このサビは何のサビだとか、満潮だとどこまで水がくるからどうとか、1つ1つの汚しにも理由や物語があるんです。


1年、2年、10年という時間を、自分の手で加えていくので、自然の一部になるというか神になったようなもんですね。



 出典  Funmee!!編集部

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—— 神! すごい! 汚しの1つ1つに細かな設定があるんですね。

 

このジオラマは1/64スケールだけど、僕にとってはギュッと凝縮された生きている世界で、そこに生活している人間が必ず存在すると思ってつくっているんです。



まずはカッターとヤスリを用意しよう!

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—— ジオラマをつくりたいと思ったら道具は何が必要ですか?

 

まずはカッターとヤスリですね。僕、そんなに道具もってないんですよ。ちなみに、アロンアルファはゼリー状のやつを使っています。



アラーキーさんが愛用している道具たち

 出典  Funmee!!編集部

つくるだけがジオラマの楽しみ方じゃない!

 出典  Funmee!!編集部


—— アラーキーさんがオススメするジオラマの楽しみ方はありますか?

 

「ジオラマが趣味です」というと「どんなのつくるんですか」って聞かれるんですけど、つくるだけじゃないと思うんですよ。つくるのが好きだけではなく、ジオラマを見るのが好きとか、工作工程を眺めるのが好きとか、いろんな楽しみ方をしてほしいですね。


プラモデル=男性のイメージが強いですが、実は僕の個展や書籍購入者の4割は女性なんです。

 


—— そんなに女性ファンがいるのは意外ですね。

 

女性でも楽しめるように、僕の本ではイラストを使ったり、専門用語を噛み砕いたりもしています。イラストでは材料で何を使っているかも紹介していますよ。



 出典  Funmee!!編集部


—— 無印の箸とか医療用ガーゼとか、身近なものも使うんですね。

 

そうなんです。この本を見た人が無印良品にいって箸を手にしたときに、「あ、これアラーキーがジオラマで使ってるやつ」って思うとニヤっとするでしょ。個展で実際に作品をみるときも、よりいっそう楽しめますし。こういうウンチクは生活を豊かにすると思うんです。



実はアラーキーさんの奥様もすごい

奥様の作品「オータムティント/紅葉」

 出典  Funmee!!編集部


—— 奥様もジオラマをつくるんですよね?趣味を通じた出会いだったのですか?


彼女が僕のつくった作品を買ってくれたんです。今はもうジオラマつくりには満足しちゃったみたいで、この手練な作品の以降、筆をおいてしまいましたけど。



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——すごい! これ奥様が!


はい。水の中にはヤマメがいますよ。彼女きのこフェチなので、きのこが6種類くらいありますし、森の中にはテンも。戦局とは裏腹に紅葉が進んで美しい景色が広がっていて、「自然の中の美には人工物はかなわない」というメッセージを表しています。



—— 圧巻ですね。


助手としても超優秀ですから。今でも、作品をつくるときはどこか手伝ってもらって2人の合作になるようにしているんです。




■プロフィール

荒木智さん

ジオラマ作家・情景師

 

大手電機メーカーにプロダクトデザイナーとして勤務しながら情景師として活動していたが、2年前に独立。ブログ『情景師アラーキーのジオラマでショー』をはじめ、Twitter、Instagramなどで自身の作品を公開している。個展活動のほかに、『タモリ倶楽部』『マツコの怒り新党』などテレビにも出演。著書に『作る! 超リアルなジオラマ: 材料探しから作品発信まで完全マスター』『凄い!ジオラマ』がある。

 

『情景師アラーキーのジオラマでショー』

http://arakichi.blog.fc2.com/



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文:荒木翔子(Shoko Araki)

写真:澤田聖司(Seiji Sawada)



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Funmee!!編集部

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