環境カウンセラー直伝!都会人にこそ知ってほしい。庭が育む、豊かな暮らし


「フツーの庭とちょっと、いやだいぶ違う」と聞いて、訪れたのは茨城県牛久市に居を構えるグラフィックデザイナー・秋山昌範さん。植物に始まり、鳥や魚、昆虫から、カタツムリにまで精通している秋山さんは、環境カウンセラーとしても活躍されています。

「この木なんの木?」「この花の名は?」といった素朴な疑問にもスラスラ答えてくれる、まさに歩く百科事典! 自然環境のエキスパートです。そんな秋山さんが設計した庭は、自然観察のヒントがいっぱいです。

ホタルが舞い、山菜が採れ、カブトムシが訪れる庭!

 提供  秋山昌範


―― 庭の真ん中に池があって、周りにいろんな木を植えていらっしゃいますね。キレイな花もいっぱい咲いていて、深呼吸したくなる空間です。

 

2003年にこの庭をつくってから、毎年、いえ毎日見ていて飽きないです。6月上旬にはヘイケボタルが舞って、とても幻想的な光景が広がりますよ。家の中からビール片手にホタル観賞、なんて我ながら贅沢な時間だなと思います。この池にはホタルの幼虫も棲んでいて、春から夏へ季節が変わる頃には幼虫がほのかに発光するんですよ。そういう様子は庭だからこそ味わえる楽しみです。



―― それはとても贅沢な時間ですね。うらやましいです(笑)。あ、あれはもしかしてゼンマイですか?

        

そうです。山菜は20種類ぐらいあります。春は採ってすぐ天ぷらにするのが最高です。春の七草のひとつ、ホトケノザも黄色い花を咲かせて、ほらここに。「コオニタビラコ」という在来種で、今では野生で見ることの難しい植物です。池の水草のジュンサイも今が食べごろ。さっと湯通しして三杯酢やお吸い物で食べるとすごく美味しいですよ。



 出典  Funmee!!編集部


カワセミもそろそろ来る時期です。朝、庭を眺めるとカワセミが池の魚を狙ってる……。魚は危機を察知するのか水草の陰に隠れる。毎日そんな感じです。他にもいろいろな鳥がやって来て、毎年うちの庭で子育て。鳥は年間40種類ほど来ますね。



 提供  秋山昌範


―― 池の中をのぞくと、水草の周りにたくさんメダカやオタマジャクシが泳いでいますね。

 

メダカは100匹以上います。オタマジャクシはニホンアカガエルです。冬に産卵し、今は孵化して1カ月ぐらいかな。このカエルは2月ごろから姿を見せ、「ココココ」と可愛らしく鳴きますよ。いろいろな音がすることもこの庭の楽しみのひとつで、夏の夜に窓を開けていると、カブトムシやクワガタムシがクヌギの樹で縄張り争いしてぶつかり合う音がうるさいぐらいです(笑)。



庭づくりの手本は、昔ながらの自然風景

 出典  Funmee!!編集部


―― 秋山さんの庭は、まるで植物図鑑、生物図鑑を見ているようですね。ちなみに広さはどれくらいあるんですか?

 

敷地は約200坪で、そのうち庭は約150坪です。ここは近くに牛久沼や多くの里山があり、こういった庭をつくるのに最適な場所でした。サラリーマン時代に暮らしていた家の小さな庭では物足りなくて、この庭をつくるために引っ越し(笑)。家を建てるよりも先に庭づくりを始めたぐらい、庭には入れ込みました。キレイに整った人工的な庭ではなく、自然そのままを切り取ったように空間にしたくて。




―― それで池があったり、起伏をつけたり、雑木林のようにいろんな木を植えられたのですね。

 

池が三角形なのにもちゃんと意味があるんです。山に雨が降ると、森や斜面の雑木林に雨水が蓄えられ、それが少しずつ谷ににじみ出て湧き水になります。そこに人はため池をつくり、その下に末広がりの谷津田をつくって稲作をしてきました。そういう昔ながらのため池をコンセプトにしたつくりなんです。



 出典  Funmee!!編集部

生きものの“楽園”は、手入れがメチャ楽

 出典  Funmee!!編集部


―― 自然のありのままを庭に再現するとなると、いろいろな管理を沢山しなければならないのでは?

 

実はその逆です。私も当初は熱中しすぎて手をかけすぎたり、育てたいもの、やりたいことを詰め込みすぎて、自分で自分の首を絞めてしまったことがありました。でも、今はちょっと手を貸す程度。あとは自然のサイクルに任せています。

 


―― というと、庭の手入れにかかりっきりになることはないと?

 

そうですね。例えば秋の枯れ葉の掃除が大変なんて聞きますが、枯れ葉や枯れ枝はクヌギの木の下にかき集めておくんです。そこにカブトムシが卵を産み、孵化して幼虫が落ち葉を食べ、その排泄物を微生物が分解し、クヌギの肥料になる。そうすると春にクヌギの葉が元気よく芽吹き、夏には美味しい樹液を求めてカブトムシがクヌギに登る。私がやったのはクヌギの下に枯れ葉を集めただけという具合です。



未来の庭づくりのスタンダードは「自然共生系」

 出典  Funmee!!編集部


―― 植物も生き物も豊かで、人がそれをコントロールするのではなく、少し手を貸すだけの関わり方がスマートですね。

 

これは私だけがやっていることではなくて、日本の里山のスタイルがまさにこれです。人が関わることで自然が破壊されず、むしろ豊かになる。今、里山は海外からも注目されている、古いようでいて世界的にはとても先進的なシステムなんです。



 提供  秋山昌範


―― 日本の昔懐かしの風景が、世界的には新しいわけですか?

 

そうです。各地域に住むさまざまな生き物が、その地域特有の生態系のバランスをとって営まれていることを「ビオトープ」といいます。バイオ(生命)とトポス(場所)を合わせた造語ですが、うちの庭はまさにビオトープ! 鳥や蝶が訪れ、池には魚が泳ぎ、季節の草花が咲き誇る。こんな空間に出会えば、きっと新しい気づきを得られますよね。それは都会で暮らしていたころにはできなかった体験です。そんなビオトープの庭を広めたくて、2010年にビオトープ管理士の資格を取りました。できる人が少ないからか、今では各地のビオトープ設計や管理の依頼も来るようになり、いつの間にかこの方面へと人生が転換していました。デザインも環境もどちらも私の大好きなことなので(笑)



【後編】グラフィックデザイナー・秋山昌範さんに聞く、 毎日が楽しくなる自然の感じ方


■プロフィール

秋山昌範さん

グラフィックデザイナー/環境カウンセラー。東京生まれ。昆虫や植物を題材としたグラフィックデザインを多く手がける傍ら、1999年に環境カウンセラーとしての活動もスタート。筑波山の自然を紹介するガイドも行うなど、自然に関わる活動は多岐に渡る。茨城県牛久市在住。




===

企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:浜堀晴子(Haruko Hamahori)

写真:安川啓太(Keita Yasukawa)

写真提供:秋山昌範(Masanori Akiyama)

 


■注意

秋山昌範さんのご自宅は私有地のため、無断での立ち入りは禁じられています。ただし、秋山さん立ち合いのもとならば見学も可能とのこと。見学を希望される方は事前に秋山さんまでメールでご連絡ください(de8m-akym@asahi-net.or.jp)。

なお、国内希少野生動植物種と国際希少野生動植物種は、販売・頒布目的の陳列・広告と、譲渡しなど(あげる、売る、貸す、もらう、買う、借りる)は原則として禁止されています。また、自宅などで育てられた動物や植物を自然の野山へ返す行為は、その野山の動植物の生態系や遺伝的な独自性を壊す可能性があるためご注意ください。



最新情報はこちらから フォローやいいね!をして最新情報を受け取ろう

Funmee!!編集部

Funmee!!編集部

TOP