#27 ボルボ240シリーズ(歴史編)
自動車
【趣味人ジドウシャ部】︎

#27 ボルボ240シリーズ(歴史編)


クルマの新旧や機能だけでなく、趣味性の高いクルマ、さまざまな趣味への汎用性が高いクルマを紹介するこの連載。

 

クラシック・ボルボの名車として名高い「240シリーズ」が今回のターゲットです。ステーションワゴンというボディ形状も手伝って、その利便性からフォトグラファーやスタイリストなどに人気を博し一時代を築きました。実用的な道具として機能美を備えます。



“メイド・イン・スウェーデン”という夢の始まり

ボルボ初のエステートモデルが1957年にデビューしたデュエットです。前後を貫く直線的キャラクターラインは形を変え現行モデルに受け継がれます
 提供  ボルボ・カーズ
ボルボ初のエステートモデルが1957年にデビューしたデュエットです。前後を貫く直線的キャラクターラインは形を変え現行モデルに受け継がれます


北欧初の自動車メーカーであるボルボのスタートは、最初の生産車ÖV4(Jakob)がロールアウトした1927年4月14日を起源としますが、もともとボルボという社名は自動車製造を目的として登記された会社ではありませんでした。

 

当時の所有者はスウェーデン最大のベアリングメーカーSKF。ボルボのクルマ造りは、このSKFの(いまで言うところの)社内ベンチャーとして始まりました。そしてこのプロジェクトは、グループ内で休眠していたボルボという社名を使うことになります。

 


円形のデザインはボルボの経営母体となるSKFのベアリングを現し、そこに古くからスウェーデンに伝わる製鉄を示すマーク(斜め右上の角度を示す矢印)をあしらったエンブレム
 出典  Funmee!!編集部
円形のデザインはボルボの経営母体となるSKFのベアリングを現し、そこに古くからスウェーデンに伝わる製鉄を示すマーク(斜め右上の角度を示す矢印)をあしらったエンブレム


余談ですが「Volvo」の語源はラテン語で「私は回る」という意味で、いかにもベアリングメーカーらしい社名です。ちなみにこのSKFは、1910年に日本に初めてベアリングを紹介したメーカーとしても知られています。

 

プロジェクトの発端は営業畑で辣腕をふるい販売会社の社長にまで上りつめたアッサール・ガブリエルソンです。フランスに赴任した彼は自動車産業の可能性をひしひしと感じ、またスウェーデンは長く冬に閉ざされてしまうことから農業国にはなれず、工業力こそ母国発展の原動力と感じていたそうです。

 

ボルボ創業のもうひとりのキーマンがイギリスのコベントリーで自動車工学を学び、同じSKFに在籍していたエンジニアのグスタフ・ラーソンです。ふたりの運命的な出会いが今日のボルボの起源となるのです。



安全性とデザインをキーワードにボルボが新時代を切り開く

多額な費用を要するクラッシュテスト。240シリーズでは内装による人体のダメージをも配慮し、ステアリングコラムを変形させるなど様々な工夫を施しています
 提供  ボルボ・カーズ
多額な費用を要するクラッシュテスト。240シリーズでは内装による人体のダメージをも配慮し、ステアリングコラムを変形させるなど様々な工夫を施しています


乗用タイプのクルマとして、オープンボディのÖV4、クローズドボディのPV4という2つのモデルを発売したボルボですが、時代背景が影響してか好調なセールスを記録したのはトラックの方でした。

 

1929年、これまでの2ℓ4気筒エンジンからスペックアップした3ℓ6気筒エンジンを搭載したPV651を発表。このモデルが人気を博しいよいよ輸出開始。

 


ステーションワゴンのエステートと並びセダンやクーペもラインナップ。日本では少数派のセダンですがコチラもジドウシャ趣味人にオススメです
 提供  ボルボ・カーズ
ステーションワゴンのエステートと並びセダンやクーペもラインナップ。日本では少数派のセダンですがコチラもジドウシャ趣味人にオススメです


ボルボの本格的躍進は戦後早々に始まります。まず、1950年に自動車メーカー初の社内デザイナーとして弱冠二十歳のヤン・ウィルスガールドを抜擢。その後、1991年に送り出す850シリーズまで、“スカンジナビアン・デザイン”の担い手として活躍することになります。



チャイルド・セーフティという概念を持つボルボが研究の末にたどり着き1964年に世界で初めて後ろ向きチャイルドシートを装着しました
 提供  ボルボ・カーズ
チャイルド・セーフティという概念を持つボルボが研究の末にたどり着き1964年に世界で初めて後ろ向きチャイルドシートを装着しました


そしてボルボの安全神話を生んだのが1959年に世界初の「3点式シートベルト」を開発した同社のエンジニア、ニルス・ボーリンの存在です。また、この特許を無償公開し広く普及させたボルボの英断に、人とクルマの関わりを重んじる姿勢を感じざるを得ません。



クラシックな美しさがジドウシャ趣味人のハートを鷲づかみ

最新モデルの現行型V90(左)と240シリーズ(右)を並べてみました。時代は変わりましたが共通するデザイン形式はいくつか見受けられるようです
 出典  Funmee!!編集部
最新モデルの現行型V90(左)と240シリーズ(右)を並べてみました。時代は変わりましたが共通するデザイン形式はいくつか見受けられるようです


240シリーズは、1974年のデビューから1993年の最終モデルまで、実に長期間生産されたモデルです。途中、マイナーチェンジやモデル呼称の変更などもあり、バリエーションもじつに多彩です。同系のセダンやラグジュアリーな2ドアクーペなどもラインナップに存在します。

 

一般的にステーションワゴンと呼ばれるボディ形状をボルボでは、1990年に誕生した940シリーズ以降、「エステート」といいます。この言葉はイギリス流の呼び方で、上質なサルーンという意味合いがあります。



1975年モデルとして世に送り出された240シリーズですが、1992年と1993年の最後の2年間はSRS運転席エアバッグとABSという安全装備が加わります
 出典  Funmee!!編集部
1975年モデルとして世に送り出された240シリーズですが、1992年と1993年の最後の2年間はSRS運転席エアバッグとABSという安全装備が加わります


ハイウエストのがっしりしたパネル形状、キャビンスペースを有効に確保したグラスエリア、わかりやすくシンプルなデザインにレイアウトされた操作系など、道具としてのクラシックな美しさが240シリーズ最大の魅力かもしれません。



シンプルなシート形状が実用車であることを物語ります。シート地はコチラが標準でレザーはオプションです。中央のアームレストもオプション装着となります
 出典  Funmee!!編集部
シンプルなシート形状が実用車であることを物語ります。シート地はコチラが標準でレザーはオプションです。中央のアームレストもオプション装着となります


一時期ほどの加熱したブームは去りましたが、いままたヴィンテージファンが熱い視線を送り、ジリジリとその人気は上昇傾向にあるボルボ240シリーズ。日常使いからキャンプやサーフィンなど、利便性の高いエステートならまさにライフスタイルカーにもうってつけです。



搭載する2.3ℓの直列4気筒エンジンは最高出力115ps(85kW)/5,400rpm、最大トルク185Nm/2,750rpm(小数点以下切り捨て値)を発生
 出典  Funmee!!編集部
搭載する2.3ℓの直列4気筒エンジンは最高出力115ps(85kW)/5,400rpm、最大トルク185Nm/2,750rpm(小数点以下切り捨て値)を発生


1990年代当時の新車の乗り出し価格は諸経費込みで400万円台中半。基本的に実用車なのでクラシックカーブームに引きずり込まれることもなく、いまでも手頃な価格で気負わず、さらに安心して乗り出せる趣味車です。



頑丈なフックを備えるカーゴルーム。タイヤハウスの張り出しもわずかで効率よく荷物を載せることが可能です
 出典  Funmee!!編集部
頑丈なフックを備えるカーゴルーム。タイヤハウスの張り出しもわずかで効率よく荷物を載せることが可能です


ただし、実用性が高いが故にラフな扱いをした車両や、年式相応に走行距離が伸びた車両も多く出回っています。また、気に入ってしまえばミニマルデザインなファッション性に惹かれドンドン年式を遡ってしまう……なんて現象も聞きます。それもまたジドウシャ趣味の醍醐味でしょう。



1983年から1993年までのボルボ240シリーズのリペアマニュアルです。DIYで整備するオーナーからプロの整備士まで参考になる一冊。


■撮影協力

ボルボ・クラシックガレージ

 

正規ディーラーであるボルボ・カーズ東名横浜内に併設。車両販売から定期メンテナンス、旧モデルの純正パーツ取り寄せまで幅広くクラシックモデルに対応してくれます。また、すでにオーナーとなられた方も一度診断で訪れてみては。

 

東京都町田市南町田5-9-18

TEL:042-796-1190

営業時間:9:00~19:00

休み:火曜

 

 

===

文:教重誠一(Seiichi Norishige)

写真:新井康介(Kousuke Arai)



自動車
自動車
2018年4月24日
Funmee!!編集部
Funmee!!編集部

RANKING

ランキング