雑草だって晩のおかず。ネイチャークラフト作家・長野修平さんが語る、豊かな「里山」の暮らし


都会の生活を離れて、2000年から東京都・八王子市の陣馬山麓にアトリエを構え、里山暮らしをはじめたネイチャークラフト作家の長野修平さん。3年ほど前に現在の神奈川県相模原市の道志川畔にアトリエを移し、里山暮らしを実践しています。

四季折々の野草が咲き、野鳥がさえずり、野生動物が顔を出す。そんな自然豊かな長野さんのアトリエにおうかがいして、里山暮らしの魅力や楽しみについて語っていただきました。

人が生活に山を取り入れる。それが「里山暮らし」

 出典  Funmee!!編集部


―― 田舎でのんびりと暮らしたい、そんな人たちが増えたことで「里山暮らし」が注目されていますね。


「里山」とは、あくまでも人間が活用するための山で、いわば“天然の畑”。落ち葉が里山の堆肥となり、間伐した雑木は薪として活用する。そして薪を燃やしたあとに出る灰は、山にまいて土に返す。


山の恵みを生活に取り入れて、循環させることで山を維持・管理していくのが「里山暮らし」だと思うんです。ですから、田舎でのんびり暮らしたいという「田舎暮らし」とは、ちょっと違うかもしれませんね。



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―― “天然の畑”というのは、とっても素敵な響きですね。


この裏山には20種類以上の食べられる野草が生えているんです。夕食前にぐるっと山をまわってくると、晩ごはんのおかずが採れるぐらい。今日はヨモギ、明日はカラスノエンドウと種類もけっこう選べますよ。


それに、畑と違って耕したり、苗を植えたりしなくていいのが僕に向いているんです。畑は面倒で性に合わない(笑)



どこにでも育つ雑草も、実は山の恵み

 出典  Funmee!!編集部


―― この時期は、どんな野草が採れるんですか?


この時期の山の恵みはお茶かな? スギナ、ヨモギ、カラスノエンドウ、もう少しするとドクダミも出てきます。これらを採って天日干しにし、一年分のお茶として作っておくんです。


つぼみが出てきたころのハルジオンは、天ぷらにして食べます。“貧乏草”なんて呼ばれる、どこにでも生えている雑草ですが、花が咲く前は柔らかくておいしいですよ。



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―― 雑草も食用になるんですね。ほかにも食べられる雑草はあるんですか?


タンポポですね。ここではセイヨウタンポポより、数が少なくなっているカントウタンポポのほうが多いんです。花と一緒にサラダや炒め物にして食べるとおいしいですよ。セイヨウタンポポに比べてカントウタンポポは苦みが少ないので、子どもでも食べられます。


ほかにはスギナ。これは農薬にも強いので畑の嫌われ者なんて言われていますが、ホットケーキに混ぜて焼いたり、天ぷらにしてもおいしく食べられます。


“木の芽”とも呼ばれるサンショウの若い葉は、煮物に載せたり、しょう油で炊いてもおいしいです。保存食になるので、わが家では一年分を採って炊いておくんです。ごはんと一緒に食べるとおいしいですよ。



利活用しようと思うからこそ、里山を大事にできる

 出典  Funmee!!編集部


―― 本当に里山には、たくさんの恵みがあるんですね。


友人が来ると野草を採ってきて、天ぷらにして出すんです。いくら人が来てもお金がかかりませんから(笑) 買ってきたものより喜ばれますよ。スーパーには売っていませんからね。


でも、レジャー感覚でわざわざ採りにいく山菜狩りみたいなものは嫌なんです。目の前に生えている野草を採るのが好きですね。身のまわりにあるものをどうやったら活用できるかを考えるのがいいんです。


今年以上に野草が出るように、株を残しつつ採る。採りすぎると出てこなくなってしいますから。採り方を変えてみたり、採るのをやめたりする。そして上手に利活用するんです。



 出典  Funmee!!編集部


―― 山を維持・管理しながら生活に取り入れるとは、こういったことなんですね。


維持・管理というと大げさですが、摘んで食べることで、まわりの野草を大事にしようと思えてくるんです。そして、野草は自分たちが楽しむ分だけ摘む。売ってやろうと大量に摘んでしまうのはダメです。


手でやれることをやっているぐらいが丁度いいんですよ。機械を入れてやってはダメ。人間には急激な環境変化を起こさせる力があるから、何も考えずに手を加えると、取り返しのつかないことになってしまいます。



―― 人間も里山の生態系の一部として、バランスをとることが必要なんですね。


ですから野草を採りながら、山にあるほかの情報も探すんです。ケヤキが近くにないと育たない野生のランで“里山の象徴”なんて言われるキンランも見つけました。最近では下草刈りをしなくなったり、採取されることで絶滅危惧種にも指定されています。


でも、絶滅危惧種に指定されたから残すのではなく、花や緑、紅葉がきれいだから残す。僕の生活のなかに気に入った景色を作りたいから残すんです。


だから野草の名前もあまり覚えないですね。名前は関係なくて、この野草は活用できるのかできないのかで覚えているんです。食べておいしかったら覚えておいて、また食べる。野草は食べて覚えるのが一番(笑)



使うための里山。だから人の数だけ「里山暮らし」はある

 出典  Funmee!!編集部


―― そんなライフスタイルは、ふたりの娘さんにどんな影響を与えていると思いますか?


娘たちにとって里山で暮らすことは、正直いって何がいいのかはわかりません。でも、僕がいいと思っていることを娘たちに伝えられるのは、いいことだと思っています。それは里山だからできることではなく、都会でもできることですけどね。


でも、選択肢として「里山」を知っておけるのはメリットだと思いますよ。都会しか知らなければ、選ぶこともできませんからね。里山暮らしを知ったうえで都会暮らしを選ぶのはもちろんOKです。



―― 「里山暮らし」とは、何か特別な暮らしのように感じていましたが、実はさまざまあるライフスタイルのひとつなんですね。


自分に必要な山の恵みを維持させるために、管理しながら楽しむのが「里山暮らし」。だから、ライフスタイルの数だけ里山の形はあると思うんです。


僕は誰も見向きもしないようなものから見立てて、それを自分らしく取り入れることが好きなんです。野草を採って食べることもそうですが、日用品ひとつでも買わずに手作りする。材料も市販のものではなく、里山で取ってきたもので作れば、世界にひとつだけの暮らしが楽しめます。


そんなものに囲まれて暮らすのは楽しいですよ。お金では買えない暮らしです。お金を出して買えるものは、だれでも手に入りしますから。




■プロフィール

ネイチャークラフト作家・焚き火&野外料理人

長野修平さん

アトリエNATURE WORKSを主宰。捨てられるもの、そこにあるものを暮らしやアウトドアに取り入れた独自のスタイルを表現するネイチャークラフト作家であり、野草を使った料理を得意とする野外料理人。雑誌やWEBメディア、イベントなどでそのスタイルを発信している。著書に『里山ライフのごちそう帖』(実業之日本社)、『東京発スローライフ』(オレンジページ)がある。



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文:牛島義之
写真:後藤 秀二

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Funmee!!編集部

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