山の街に移り住んだら、私に起こった7つの変化(出会い編)


2015年に東京から山の街・松本へ移り住み、3年目を迎えた杉野綾香さん。

 

山歩き編では、かねてからの趣味である登山のスタイルや「山」そのものに対する想いがどう変化したかを教えていただきましたが、ここでは街の暮らしにおける変化について聞いてみました。




移住した当初、杉野さんにはこの街の中に直接的な知り合いがいませんでした。共通の知人を介して、松本市内で飲食店「COUDO(クド)」を営む橋本夫妻に出会います。

 

「橋本夫妻と知り合ったばかりのころ、店で開催された鹿肉を解体するイベントに参加したんです。最初は鹿の大きさに恐怖を感じたりと衝撃ばかりでしたが、ここからいろんな生き方や考え方があることを学びました」

 

引っ越して早々に、価値観が変わるほどのディープな体験をした杉野さん。この街で暮らすにつれ、そのほかにもいくつかの変化が訪れたそうです。



COUDOの主催で行われた鹿の解体イベントに杉野さんが参加したときの様子。これをきっかけに、「在るものを活かす」ことも考えるように

COUDOの主催で行われた鹿の解体イベントに杉野さんが参加したときの様子。これをきっかけに、「在るものを活かす」ことも考えるように

 出典  Funmee!!編集部


COUDOの橋本夫妻しかり、松本には移住してきた人が数多く暮らしています。この場所へたどり着いたきっかけは人それぞれ。共通していることは、山に囲まれたこの環境に魅せられて移り住んだということ。

 

「松本に来た理由を聞かれて『山が好きだから』と答えると、松本の人たちは『そうなんだ! いいよね!』と一瞬で共感してくれます。『山が好き』というだけで自分の存在を受けいれてくれる、この街の懐の広さに感動しました」



本屋「栞日」。喫茶スペースもあり、オーナー菊地さんがセレクトした本や雑誌、ZINEが並ぶ。写真展やトークショーもたびたび開催。杉野さんも都合がつく限り参加しているそう

本屋「栞日」。喫茶スペースもあり、オーナー菊地さんがセレクトした本や雑誌、ZINEが並ぶ。写真展やトークショーもたびたび開催。杉野さんも都合がつく限り参加しているそう

 出典  Funmee!!編集部


ぐるりと山に囲まれているけれども決して閉鎖的ではなく、外から訪れた人に対してもオープンな空気が流れているのがこの街の大きな特徴。

 

杉野さんも少しずつ繋がりを広げていき、いまでは街を歩くだけで知り合いに遭遇できるほどに。出会いと交流をとおして「山が好きで、いまここにいる自分」を肯定できるようになったそうです。




松本で暮らし始めた当初、杉野さんはパタンナーとして地元企業に就職しました。しかし都内にいたころとあまり変わらない生活スタイルに疑問を感じ、1年後に退職。それからは、セラピストの仕事をメインに、COUDOのイベント出店の手伝いをしたり、建築模型を作るアルバイトをしたり。ひとつの企業に勤めるという一択の働き方から、いくつかの仕事を組み合わせる働き方にシフトしました。

 

「COUDOオーナーの奥さま・さくらさんはkanieというブランドを立ちあげたデザイナー。さくらさんとパタンナーの私とで服を作って、お店で展示をすることもあります。服の仕事は、いまくらいの距離感で携われるのがちょうど良いかなと思っています」



さくらさんと杉野さんとで現在制作中のウェディングドレス。東京でパタンナーとして培った経験を、ここ松本でも活かすことができている

さくらさんと杉野さんとで現在制作中のウェディングドレス。東京でパタンナーとして培った経験を、ここ松本でも活かすことができている

 出典  Funmee!!編集部


セラピストの仕事をとおして人体に興味をもった杉野さんがいま目指しているのは、ヨガインストラクターの資格取得。得意なことを活かしながら興味の赴くままにあらゆる仕事に挑戦する杉野さん。そのまなざしは、とても魅力的に映りました。




いま主としているセラピストの仕事はスケジュールを調整しやすい個人事業スタイル。平日に休みを取ることが多いので、よりマイペースに街歩きや山歩きを楽しめるようになったとか。

 

「時間が自由になって、いろんな誘いや依頼を受けるようになりました。ファッションショーやって! とか、看板描いて! とか、-20℃の山の上で映像を撮らせて! とか(笑)。やったことないけど、とりあえずやっちゃう。そうすると、新しい自分に出会える気がして」



平日に本屋・栞日でコーヒーと一緒に読書を楽しむのがお気に入りのオフの過ごし方。栞日には、新しい発想を与えてくれる本や雑誌がたくさんあって、つい長居してしまうそう

平日に本屋・栞日でコーヒーと一緒に読書を楽しむのがお気に入りのオフの過ごし方。栞日には、新しい発想を与えてくれる本や雑誌がたくさんあって、つい長居してしまうそう

 出典  Funmee!!編集部


平日フルタイムで働いて週末に休むというサイクルだった会社員時代と比べると、フレキシブルで豊かな時間の使い方に変わったようです。




「北アルプスへ陽が沈む壮大な夕暮れの光景には、何度癒されたかわかりません。ここへ来てから、山がいつもそばにある気がします」

 

都内に住んでいたころ、杉野さんにとって「街」と「山」は切り離された空間でした。しかしいまでは、街と山と杉野さん自身が切っても切り離せない「三角関係」に変化したと笑います。



繩手通りの近くにある「ひとつばし」から眺めた、杉野さんのホームマウンテン「美ヶ原高原」。街なかには、このようにさりげなく絶景が見られるスポットがたくさんある

繩手通りの近くにある「ひとつばし」から眺めた、杉野さんのホームマウンテン「美ヶ原高原」。街なかには、このようにさりげなく絶景が見られるスポットがたくさんある

 出典  Funmee!!編集部


じつは仕事の都合で、しばらく東京に滞在することが決まった杉野さん。美ヶ原高原からは離れてしまいますが、松本で築いた暮らしと趣味と自身の関係性は、どの土地にいても変わらない生き方へと変わって行くことでしょう。

 

山が好きな私にとって、日常の先に山がある暮らしは、とても豊かなものでした。もし、この先ここを離れることになったとしても、この松本平から見上げる山の風景がいつも心のなかにあることでしょう。そのことがとてもうれしい。松本に来てよかったです。ありがとう」と笑顔で話してくださいました。




■プロフィール

杉野綾香さん


三重県出身。都内の会社でパタンナーとして働きながら、エベレストへ旅行したり山小屋で働いたりと経験を積み、2015年に長野へ移住。パタンナーの仕事の他にも、セラピストやヨガインストラクター資格の取得などをめざし、精力的に活動している。



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文:松元麻希(Maki Matsumoto)

写真:橋本 中(Naka Hashimoto)

撮影協力:COUDO栞日



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Funmee!!編集部

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