【趣味人ジドウシャ部】#07 三菱・ジープ(ディテール編)


クルマの新旧や機能だけでなく、趣味性の高いクルマ、さまざまな趣味への汎用性が高いクルマを紹介する連載「趣味人ジドウシャ部」。7台目に登場するのは「三菱・ジープ」です。

 

クロスカントリー車やSUVの元祖とも言えるジープのピュアな性質を保ったまま、1998年まで製造されたこのクルマ。後編では長い歴史の中で登場したバリエーションやメンテナンスなどについてご紹介します。




4つの系統に分けられる三菱・ジープのラインナップ

トップ画像を含め、メインの撮影車両はJ50系三菱・ジープ。1980年式のJ58というモデルです。1,995ccの4G52型「アストロン」エンジンは、ギャランGTOなどに採用されていたものと同じ

 出典  Funmee!!編集部


三菱・ジープは、1953年の生産開始から1998年に生産が終了されるまでの間に、ボディタイプやエンジン、ハンドルの左右などの仕様が異なるさまざまな車種が世に送り出されています。その数はトータルで50を超え、「J1」から始まる日本独自の車種名が与えられています。

 

それらは最終的に大きく4つの系統に分類できます。J20系からJ50系まで、いずれも、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンがあり、45年の間に11種のエンジンが採用されました。また初期は左ハンドル仕様で、後に右ハンドル化されています。




シンプル&ベーシックなJ50系


オリジナルのウイリス・ジープの基本スペックを継承したベーシックモデル「J50系」。ホイールベース(前後車輪の軸間距離)は2,032mmで、2/4(前席/前席+後席)人乗り。キャンバストップで、ドアもキャンバス。これらを取り去ると、ドアすらないフルオープンになります。

 

最もピュア&ワイルドなスタイルで、多くの人がジープと聞いてイメージするのがこの系統でしょう。最後まで生産されたモデルでもあり、1986年までガソリン車が、1998年までディーゼル車が生産されていました。




三菱・ジープのベーシックモデルともいえるJ50系

 出典  Funmee!!編集部

三菱・ジープの後席は、J40系を除き、本来は折りたたみ式の簡易シートが左右に1脚ずつ内向きについていますが、このようにベンチシートに交換している車両も多く見られます(写真はJ50系のもの)

 出典  Funmee!!編集部



ミドルサイズで実用性が高いJ20系


「J20系」はホイールベースが2,225mmに拡大されていて、トレッド(左右の車輪間の距離)も広げられています。フロアシフトとコラムシフトがあり、乗車定員は2/4、2/6、3/5、3/7人乗りのバリエーション。ドアはメタルドアが装備され、キャンバストップとハードトップの2タイプがあります。




J20系のJ26。三菱・ジープのうち、ミドルホイールベース&キャンバストップの標準的なモデルです

 出典  Funmee!!編集部

J20系のJ24。ツートーンカラーのハードトップはレトロかつポップな印象。こちらはディーゼルエンジン搭載車です

 出典  Funmee!!編集部



SUV的でユニークなJ30系


「J30系」は、ホイールベースが2,640mmとさらに拡大されています。「ウイリス・ジープ・ステーションワゴン」の流れを汲むモデルで、日本では「デリバリ・ワゴン」のサブネームで販売されました。

 

ハードトップで、初代の「CJ3B-J11」のみ2ドア、それ以降は4ドア。一部を除きコラムシフトで、乗車定員は基本的に3/6人乗り。後席は前向きのベンチシートが装備されています(他の系統では、通常横向き対面の折りたたみ式シート)。ノスタルジックなルックスながらSUVチックな性格を持つユニークなジープです。




ジープマスクに4枚ドアのロングボディもなかなか似合っています

 提供  イワモトモータース



ロングボディ&キャンバストップのJ40系


「J40系」はJ30系のキャンバストップ版的なモデル。コラムシフトで乗車定員は3/9人乗り。他の系統に比べて人員輸送力や積載性に優れた、作業車的な性格の濃いモデルです。




余計なものが一切ないピュアなオフロード車

シンプルで無骨なデザイン。ちなみに至る所にリベットのようにボルトが打たれているのは、以前のオーナーによるカスタム。ボディも黒くリペイントされ、ミリタリーテイストが強調されています

 出典  Funmee!!編集部


45年間、日本独自の改良やラインナップの充実を図りながらも、オリジナルの設計を保ちつつ製造された三菱・ジープ。

 

一方アメリカの本家ジープは、クライスラー社傘下となった1987年からは「ジープ・ラングラー」として販売され、ラダーフレームや独特のスタイリングは維持しつつ、オンロードでの性能を高め、SUV的な性格を強めていきました。

 

これに対し、三菱・ジープは、末期モデルでも未整地での作業車としての性格を強く残している点が特徴であり、魅力でもあります。

 

「三菱・ジープは余計なものがない。究極に何もないクルマです。それだけに“ギア”“道具”という感じがするところが好きですね」と語る、三菱・ジープ専門ショップ「イワモトモータース」の岩本雄次さん。




鉄板むきだしのインテリアは、泥で汚れても水洗いできるように一切の装飾なし。ジープ独特の細い3本スポークの大径ステアリングは、オフロードでの操作性を上げ、メーターの視認性をよくするためのもの

 出典  Funmee!!編集部


もちろん、それは逆に言えば、このクルマは快適性からまったく縁遠い存在といえます。昔ながらのリーフリジッドのサスペンションは、荒れ地ではよく動くので頼もしい存在ですが、オンロードではちょっとしたギャップでも突き上げる感覚が伝わってきてしまい、乗り心地はけっしてよくはありません。

 

キャンバストップモデルは言うまでもなく、ハードトップモデルでも、ちょっとスピードを上げるとエンジン音や風切り音などのために隣の人との会話すら困難になります。

 

後付けしない限りクーラーもないので、夏場は屋根を閉めれば室内は蒸し風呂になり、オープンにすれば強い日射しにジリジリ焼かれます。ヒーターはついていますが、密閉性が低くすきま風が入るので真冬は防寒着が必要です。

 

所有するにはそれなりに覚悟のいるクルマであることは確かです。




インパネもシンプルながら、それが逆にカッコいい。防水、防塵仕様の5連メーターは、左から燃料計、油圧計、速度計、水温計、電流計

 出典  Funmee!!編集部


三菱・ジープは構造がシンプルで、メンテナンスしやすいクルマです。また長く作られていたのでパーツも一般的な国産旧車に比べると入手しやすいです。

 

「ただしけっして維持しやすいクルマとは言えないですよ。私の店は基本的にガソリンエンジンの三菱・ジープをメインにしています。ディーゼルはNOx・PM法に適合するように対策すると高額になってしまうためですが、ガソリン車は生産終了されてからもう30年も経っていますからね」と語る岩本さん。

 

これ1台ですべてをまかなうクルマではありません。とくにファミリーカーにするには、よほど家族の理解がない限り厳しいでしょう。しかし他のクルマにはない唯一無二のたたずまいとドライブフィールは、あらゆるデメリットに目をつぶってでも「一度は乗ってみたい!」と思わせるものがあります。そんな悪魔的な魅力を持っているクルマなのです。




「不便を買って乗る。そこがいいんです。誰にでもおすすめできるクルマではありませんが、ハマったら最高の遊び道具になります」と語る、イワモトモータースの岩本さん

 出典  Funmee!!編集部


■取材・撮影協力

イワモトモータース

 

祖父の代から自動車の解体業や販売業を家業としてきた岩本雄次さんが、2004年ごろからweb販売メインの三菱ジープ専門店に転換。程度のよいガソリンエンジンの三菱ジープを豊富に取り揃える。また一方でロシアのUAZ、ロンドンタクシーの輸入販売も手がけている。

 

東京都新宿区新宿2-2-1

TEL:03-3341-1190

営業時間:10:00〜20:00

休み:無休

 

 

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文:和田達彦(Tatsuhiko Wada)

写真:銭田豊裕(Toyohiro Zenita)




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