経験1年未満でオープン、そして人気店へ サーカス小屋のようなパン屋さん「アヤパン」


東急東横線の多摩川駅から徒歩約15分。中原街道の脇道に、華やかな外観が人目を引く、サーカス小屋を模したパン屋さん「アヤパン」はあります。その“団長”である守谷彩さんは、自営経験ゼロ・修行期間9カ月で起業するという離れ技で、“街で人気のパン屋さん”になりました。

年配の方から子どもたちまで愛される、人気の秘密に迫ります。

「普通の主婦」が、惚れ込んだパン屋に弟子入りを直談判

 出典  Funmee!!編集部


―― 30代半ばでお店をオープンされましたが、昔からパン屋さんになりたいと思っていたのですか。

 

それが全然なんです(笑)。もともと雑貨デザインに興味があって、インテリアデザインの専門学校に通っていました。バイト先に選んだオムレツ・オムライス専門店「ラケル」も、料理の美味しさだけではなく、カントリー調の非日常的な空間が好きだったからです。そして、店内のインテリアを手がけてみたいと正社員になったのですが、1年後には結婚。仕事よりも家庭を大事にしたいと思って退職してしまいました。

 


―― それから家事や育児に奔走する日々が始まったのですね。

 

そうなんです。23歳が初産で、27歳で3人目を出産しました。嫁ぎ先のコンビニ経営も年々右肩下がりで、育児のかたわらお店の手伝いをするなかで、自ら収入を得て家計を支えられたらと思うようになっていきました。パートではなく、もっと本格的に。飲食店で働いた経験があることと、料理が好きだったので、漠然と飲食店かなぁと思っていました。


 

―― そのなかで、なぜパン屋を選ばれたのですか?

 

評判を聞きつけて、大倉山駅近くにある「トツゼンベーカーズキッチン」にふらっと行ったんです。そこの食パンとバゲットがあまりにおいしくて。パンの概念が変わるほどの衝撃に、「働かせてください」と直談判しました。その食パンの味は、うちの「アヤパン・ド・ミ」という看板商品に受け継がれているほどで、このパン屋に行ったからこそ今がある。そう言っても過言ではありません。


 

 出典  Funmee!!編集部


―― というと、守谷さんの今を決定付けたのはそのパン屋ということですか。

 

まさにその通りです。私がこれまで食べた料理の全ジャンルの中で、突出してここのパンがおいしかったんです。初めてお店に行った時にはバイト募集の貼り紙があったのですが、二度目にはすでになくなっていて、それでも諦めずに猛烈にアタックしました。もともと応募条件に「経験者」とあったにもかかわらずです。先方は、未経験者の私の申し出と熱意に相当驚いていました。

 


―― 正直、よく採用されましたね(笑)。決め手はなんだったのでしょうか。

 

「この日までに連絡がなかったら不採用と思って」と言われて、その最終日に連絡が来た時には正直、驚きました。なんでもお店で「パン屋開業パッケージ」という開業サポートビジネスを始めようとしていた頃で、試験的に私を採用することにしたそうです。販売スタッフを3カ月経験してから製造スタッフとして製パン技術を学び、同時に開業に向けたアドバイスをしてもらえるという、願ってもないお話でした。短い期間でしたが、本当にたくさんのことを学べました。



大好きなサーカスをイメージし非日常を演出

 出典  Funmee!!編集部


―― パン作りだけではなく、開業準備や経営スキルを学べたのは大きいですね。そして、修行わずか9ヶ月で「アヤパン」のオープンへと動きますね。

 

「経験もないのに無理」と両家の父母には猛烈に反対されました。心配してくれてのことだと思うのですが、私には「私が惚れ込んだパン。きっと売れる」という確信がありました(笑)。反対を押し切って開業したのですが、当時は本当にバタバタで、バゲットにクープ(切れ込み)を入れずに焼いてしまうなど、初歩的なミスもしょっちゅうでした。

 


―― 「アヤパン」といえば、このサーカス小屋のような外観のデザインが印象的です。赤白のサーカステントに、キリンや象のぬいぐるみの“団員”まで揃える凝りようです。なぜ「サーカス」なのですか?

 

私自身、とってもサーカスが好きなんです。今からでもサーカス団員になれるものならなりたいほど(笑)。3歳の時に父に連れて行ってもらって以来ずっと好きで、次々繰り広げられるアクロバティックなショーに、観客が自然と笑顔になりますよね。そういう非日常的なワクワク感を提供できるお店にしたい。そう思ってサーカスをデザインモチーフにしました。開業資金をやりくりして外観は奮発してつくり込みました。

 



「おいしい+α」の楽しい仕掛けをちりばめて

 出典  Funmee!!編集部


―― 非日常感を体感しに、大人も子どもも来店するのが楽しみになりそうです。

 

それを目指しています。特に子どもが楽しめる空間にすることはかなり意識しています。来店する子どもたちは入口の足元に置いたおもちゃのピアノでみんな遊んでいきますし、子ども対象のパン教室では販売するところまで体験してもらいました。もう少し季節が暖かくなったら木製のままごとキッチンを外に出そうと計画中です。子連れでも行きやすく、パンの価格もお手頃。これは私の子育て経験や、主婦目線の金銭感覚あっての店の方針です。

 


―― 今では押しも押されもせぬ人気店ですね。

 

正直、無我夢中です(笑)。4人もお客様が入ればいっぱいの小さなパン屋ですが、パン釜が販売カウンターの真横なので、釜から出し立てのパンを見て「あれもちょうだい」って追加注文してくださる方は多いです。寿司に見立てた「寿司パン」とか、面白いパンや演出を考えるのが好きなんです。

 


―― 将来的にはどんなパン屋にしてきたいですか。


先のことを考える余裕は全然ないですが、妄想だけは広がっています(笑)。例えば木の上にあったり、「お菓子の家」のような外観だったり、話題性のある2号店、3号店ができたら楽しいですね。おいしいパンだけではなく楽しいアトラクションもある、そんなパン屋を、いつかやってみたいです。



お子さんと地域の人々に支えられて 「アヤパン」店主・守谷彩さんのワークスタイル



■プロフィール

パン職人

守谷 彩さん

 

東京生まれ。インテリアデザインの専門学校を卒業後、アルバイト先のオムレツ・オムライス専門店「ラケル」の正社員に。結婚、出産後に「トツゼンベーカーズキッチン」の門を叩き、製パン技術を学びつつ開業準備を始める。2015年2月「アヤパン」をオープン。

 

アヤパン

東京都大田区田園調布本町45-12

TEL:050-1397-8887

営業:火〜金曜10:00~19:00、土曜8:00〜19:00

休み:日曜、月曜(臨時休業日もあり。詳細はFacebookページを参照)

 





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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:浜堀晴子(Haruko Hamahori)

写真:上樂博之(Hiroyuki Jouraku)



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