半径2kmの冒険へ!冒険家・八幡暁さんが伝える身近な自然で遊ぶ楽しさ


シーカヤックでオーストラリアから日本の海を渡る前人未踏の人力旅に挑戦した、『グレートシーマンプロジェクト』の挑戦者である八幡暁さん。


最近では、神奈川県逗子市を拠点にご近所コミュニティを形成し、身近な自然で遊ぶことをテーマにした“半径2kmのフィールドワーク”を実施しています。

 

今回は、そのフィールドワークのひとつである『じゃぶじゃぶ』という活動に参加させていただき、八幡さんが活動にかける思いをうかがいました。




「都市でも自然とふれあえる」を証明するため逗子へ移住

シーカヤック冒険家の八幡暁さん

 出典  Funmee!!編集部


―― カヤックで世界を旅していた八幡さんが、逗子で地元の子どもたちと一緒に自然を楽しむ活動を始めたのはなぜですか?

 

2005年に石垣島で『ちゅらねしあ』というショップを始めて、そこでカヤックを使った自然体験ツアーをやっていたのですが、東京や大阪から参加したお客さんが「石垣島だからこそできる体験だ!」って喜んでくれて。


それはそれでうれしかった。ですが、「子ども達が日常的に自然とふれあえる環境は都市にだってあるはずだ!」と思ったんですよね。でもお客さん達は頑なに「東京や大阪じゃできない」と言うので、「だったら俺がやったるわ!」って思い、3年前に家族で東京からでも行きやすい神奈川県の逗子へ移住したんです。



文字通り“じゃぶじゃぶ”と川の中を歩くフィールドワーク『じゃぶじゃぶ』

 出典  Funmee!!編集部


―― さすがの行動力ですね! 逗子では完全にゼロからのスタートだったのですか?


はい。普通の住宅街に家を借りて、庭でニワトリを放し飼いにして、庭木を全部引っこ抜いて食べられる植物に植え替えることから始めました。


知り合いが全然いなかったので、まずは近所の子どもたちと仲良くなるために、家から一番近い公園に毎日夕方に出没して、そこでロープで遊具を作って子ども達と遊んだり、崖や木に登らせたり……ということを1年くらいやっていました。完全に怪しいおじさんですよね(笑)。それと並行して、「自分の暮らしの周りの水辺を全部歩く」ということも始めて、行きたい人がいれば一緒に行くようになりました。



滑川に自生するクレソンを摘む八幡さん。まるで少年のような笑顔!

 出典  Funmee!!編集部


―― 近所の水辺を歩いてみようと思ったのはなぜですか?


カヤックで世界を旅する中で「人間にとって水は何よりも大切だ」と実感したのに、都市では水があるのが当たり前なんです。身の周りの水辺について何も知らなかったので調べてみようと思って、実際に水辺を歩いてみたら、都市河川のほとんどが閉じられていて川岸に降りることすらできないんだ、と改めて気づかされました。


汚染がひどい場所も結構あって、役所に改善を働きかけたりもしましたが、なかなか壁が厚くて……。それで、自分の周りの人間関係を構築して、身近なところから変えていくしかないんだな、という考えに至りました。大人も子どもも自然を思いきり楽しむために『そっか』という団体を仲間とともに立ち上げたんです。



「成果を出す」ことよりも、「ただ楽しい」経験を

『じゃぶじゃぶ』では幼い子も約2kmの距離を歩き切り、たくましくなったように見えた

 出典  Funmee!!編集部


―― 『そっか』では、地元の子どもたちと一緒に近所の水辺を冒険する『じゃぶじゃぶ』などのフィールドワークも行っていますよね。

 

『そっか』は“足下”を音読みした名前で、活動の根底には“足下の自然で楽しもう”という想いがあるんです。発足から約1年が経った今では、120人ぐらいの地元の子ども達が毎日のように集まってきて、海に入ったり、山に登ったりしてみんなで遊んでいます。『じゃぶじゃぶ』は不定期開催で、今回は鎌倉由比ガ浜に流れ込む滑川をさかのぼり、水源まで歩くというテーマで行いました。



点呼なし、ケガをしても自己責任。各自が自分のペースで川の上流を目指す

 出典  Funmee!!編集部


―― 実際『じゃぶじゃぶ』に参加させていただいて、子ども達が自発的に行動する姿が印象に残りました。八幡さんが手取り足取り教えたり、お世話するのかと思っていましたが、陰で見守っていることがほとんどでしたね。


何から何まで教えたりはしません。先回りして教えてしまうと、つまらなくなるから。たとえば、「川底が見えない場所を歩くにはどうしたらいいのかな?」とか、できないことを自分の力で考えて、「こうすればいいんだ!」とわかる瞬間が一番楽しいじゃないですか。大人は自分の価値観の中で「危ない」という言葉を使って子どもにやらせないことが多いですけど、危険や怖さって本来は子ども自身が遊びながら学ぶことだと思うんです。

 


最後はけもの道のような山の中を進み、ついに滑川の水源に到達!

 出典  Funmee!!編集部


―― みんなそうやって遊びながら学んだはずなのに、大人になるとついリスク管理を優先しがちですね。

 

それに今の世の中って、大人の判断で勉強とかスポーツとか「成果が見えるもの」を子どもに先取りさせたがる風潮があるけれど、僕は同じモノサシの中で成果を出すことよりも、「ただ楽しい」という経験をして、「何が楽しかったのか」を子ども達自身が自分で考えることのほうが大切だと思っているんです。その「ただ楽しい」という経験は、わざわざ遠くの素晴らしい場所に行かなくても、自分の半径2kmの範囲内で十分にできますしね。



旅先で学んだことを、できる範囲で都市社会に還元したい

西表島の仲間川で息子さんと一緒に

 提供  八幡暁さん


―― 『そっか』を立ち上げてさまざまな活動を始めたのは、八幡さん自身にお子さんがいることも大きかったのでしょうか。


そうですね。子どもができるまでは、「次はどこの海に行こう?」とか自分の楽しみしか考えていませんでした。子どものおかげで、過去に旅先で出会った人々の暮らしから学んだことを、自分ができる範囲で都市社会に還元していきたいと思うようになりました。



『そっか』の活動のひとつ、収穫祭。地元の食材を使った料理などを持ち寄り、“美味しいは楽しい!”を実感する

 提供  八幡暁さん


―― 今後は、どんなことにチャレンジしていきたいですか?


現代人は「足下で暮らす」ということが実は一番できていないと感じるので、この先も『そっか』の活動を通じて、近所の人と声を掛け合ったり、手をつなげるようなコミュニティを作っていけたらいいですね。僕が旅先で出会った人々は、暮らしの基本に「人とのつながり」があったし、みんなが顔見知りになったほうが安心して暮らせるとも思うので。



息子さんも、もちろんカヤックや泳ぎが大好き!

 提供  八幡暁さん


―― これからも逗子を拠点に活動をされていく予定ですか?


実は『そっか』が逗子で自治体として機能し始め、僕がいなくても回るようになったこともあって、3カ月前に石垣島へ戻ったんです。いずれ『そっか』の活動を発展させて、逗子の子が石垣島に来たり、石垣島の子が逗子に行ったり、地域と地域を結ぶような活動に広げていけたらいいなと思っています。




■プロフィール

八幡暁さん

1974年東京都生まれ。大学時代より海に目覚め、八丈島で素潜りを始める。卒業後は各地の漁師の仕事を学びながら国内外を巡る。旅の途中でシーカヤックと出会い、2002年より「海と共に暮らす人々は、どのように生きているのか」をテーマに、オーストラリアから日本までの多島海域を舞台にした人力航海の旅『グレートシーマンプロジェクト』をスタート。また、2005年には“身の丈+10センチ”をサポートする手漕屋素潜店『ちゅらねしあ』を沖縄県石垣島にオープン。その後、日本全国の漁村を訪問し漁師に話を聞く『海遍路』、都市生活における水辺を取り戻す活動『じゃぶじゃぶ』なども展開。2016年より『一般社団法人そっか』の共同代表を努め、現在は沖縄と逗子をベースに活動している。

 

 

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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:古田朱美 (Akemi Furuta)

写真:上樂博之 (Hiroyuki Joraku)




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Funmee!!編集部

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