香り華やぐクラフトビール、KAGUA 生みの親・山田司朗さんの世界への思い【前編】

留学中の気づきが人生を変えた 「ビールは文化を持った飲み物だ」

━━そもそも、山田さんがビール作りに目覚めるきっかけは何だったんでしょうか?


もちろんビールが好きだからなんですけど、きっかけはイギリスの大学院に行ったことですね。その時に、いろんな国を旅する機会があって。そこで気付いたのがヨーロッパのビールの文化。日本にいた頃は、大手の工業製品としてのビールしか知らなかった。でもヨーロッパでのビールは、ワインや日本酒のように「文化を持った飲み物」。本当に多様なビールがあって、歴史もあって、面白さ、奥深さがある。


 出典  Funmee!!編集部
━━大学院のさまざまな授業のなかでは、マーケティングも学ばれたそうですが、そこでも発見はありましたか?


大学院の卒業生で、カラン・ビリモリアとの出会いも、私をビールのビジネスに導きました。彼はコブラビールという会社の創業者でインド系のイギリス人、もともと会計士でした。授業のケース・スタディのあとにスピーチしてくれて、「なぜ僕がビールビジネスを始めたのか」を語り始めたんです。それによると、彼はインド料理屋さんでカレーを食べながら、ビールを飲んでいた。しかし、そのビールは全然カレーに合っていない。だったら、「自分でカレーに合うビールを作ろう」と決めた。そしてビールと関係ない世界からビール業界に乗り込んで行ったんです。


━━シンプルですが、それゆえに力強いストーリーですね。刺激を受けた山田さんは、イギリス留学経験後、すぐにビールの世界に乗りこんだ?


いいえ。帰国後、すぐにはビール造りはできないので、まずはインターネット業界で働いていました。現在メルカリの山田進太郎さんの前の会社であるウノウなどで働きながら、休みの日にはビールのことを勉強したり、事業の計画を練ったりしていました。



4年間かけてレシピを練り上げ 和食に合うビールに挑戦!

━━別の仕事をしながら、起業の準備をされていたんですね。


本当はスタートから自社工場を持てれば良いのですが、実績がないと工場を建てる資金は調達できません。まずは契約醸造という言い方をするのですが、オリジナルレシピで他社さんに作ってもらい、販路が広がった段階で、自社工場を立ち上げる計画で進めていました。異業種からの転身だったので、ノウハウもなく、資金も充分でない。まずは少しずつでもいいので実績を積み上げたいと思いました。

 出典  Funmee!!編集部
━━レシピ作りはどのように進めるんですか?


麦芽の配合とかホップの品種、糖化プログラムとか、かなり細かく決めていきます。4年間かけてレシピを考えてたくさん試作品をつくり、
少しずつ改良していきました。最終的にはそのレシピをもとにベルギーの醸造家に契約醸造をお願いしました。


 
━━選択肢の中でワインも、日本酒もあったのに、なぜビールだったのでしょうか?


ワインや日本酒も好きですが、なぜか仕事にしようと思ったことはありません。なぜビールかと言えば、それはコブラビールの成功があったからでしょうか(笑)。しっくりくるアイデアが生まれたというか。「馨和 KAGUA」では「和が馨る」「和の食卓に栄える」をコンセプトにしていますが、これはコブラビールのコンセプト「カレーに合うビール」にヒントを得ました。デザインも、いくつか案がありましたが、シンプルな和のデザインに仕上げているんです。


 出典  Funmee!!編集部
香り華やぐクラフトビール、KAGUA生みの親・山田司朗さんの世界への思い【後編】


■プロフィール

Far Yeast Brewing株式会社 代表取締役

山田司朗さん


1975年生まれ。大手VCでキャリアをスタートし、サイバーエージェントでは経営企画室長、その後、オン・ザ・エッヂ(のちのライブドア)では取締役。2005年、イギリス・ケンブリッジ大学に留学し、MBA(経営学修士)を取得。現地で多様なビール文化に触れる。帰国後、ビール研究と事業準備をスタート。2011年9月に日本クラフトビール株式会社を設立し、「馨和 KAGUA」を大ヒットさせる。

http://faryeast.com/


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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:岡﨑ヒデキ(Hideki Okazaki/TRYOUT)

写真:山田ヒロユキ(Hiroyuki Yamada)