魅了された土地を、愛するビールで再生。上勝町『RISE&WIN』田中達也さん


「ごみゼロ」活動を目指すエコの町として名高い徳島県上勝町。

そんな土地ならではのクラフトビールを発信する「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」代表の田中達也さんに、クラフトビールを造ることになった経緯からこだわりまでうかがいました。

自分たちにできることから、街の魅力を伝えたい。

 出典  Funmee!!編集部


―― ビール作りを始めたきっかけを教えて下さい。


よく会社で大きな仕事が終わったら、生ビールを樽で買ってオクトーバーフェストの真似事したり、色んな趣向を凝らしてビールを飲んでいました。純粋にビールが大好きだったんです。


ある時「うち理系の人材揃ってるから、ビール造れるんちゃう?」と思って調べたら、理論的にはできると。



―― それまでどういったお仕事をされていたのですか?


今もですが徳島市内で食品の衛生管理会社をやっていて、10年ほど前から生産者の窮状を聞いていたんです。「ものを作っているだけでは食べていけない」と。それで「自分たちが地域にできることをしたい」と、地域資源を活かした地方活性化事業を始めました。


そうしたら上勝町からアプローチがあって。行ってみたら、ごみの再利用・再資源化を進めて2020年までに焼却や埋め立て処分をなくす「ゼロ・ウエイスト」活動を目の当たりにして。「これは素晴らしい」と思ったんです。


上勝にはごみ収集車も集積所もなくて、町民全員が自分たちで細かく仕分けして一つのゴミステーションに捨てに行くんですよ。



―― 上勝町はどんな町なんですか?


美しい自然が広がる、四国で一番小さい町で、人口2000人以下。こんな小さな町に国内外から「ごみゼロ」活動の視察団が大勢来るんです。


その考え方や魅力をもっと知ってもらいたいと思って、2013年に「上勝百貨店」というジェネラルストアを始めました。ごみを出さない買い物を提案して、余計な包装をせず、食品から洗剤等の日用雑貨まで量り売りをする店。当初は話題にはなったんですが、続かなかった。



―― それはどうしてでしょうか?


素晴らしい理念だけでは、外から人は来ないんです。まず先に「楽しい」「面白い」「美味しい」といった体験がないと持続できる経済活動が成り立たない。それを実感しました。



ポートランドの体験と運命の出会い

 出典  Funmee!!編集部


―― その「楽しい」の仕掛けとしてクラフトビールを取り入れた?


その時にちょうど、アメリカのポートランドを中心にクラフトビールのムーブメントが面白いって聞いて現地に飛んだんです。そしたら、街中マイクロブリュワリーばっかり。造り手の個性を出した多種多様なビールがあって、すごく自由だった。一番驚いたのは、お客さんがマイボトル持って、テイクアウトをしていたこと。「これ量り売りやん!」って。



―― 上勝町の「ゼロ・ウエイスト」にも繋がった。


そう。日本でビールの量り売りやってるところはないから、会う人会う人に「クラフトビールやりたい!」って言い続けていたんです。言葉に出して言い続けることって大事なんですね、人づてに、今うちでブルーイングディレクターをやってもらっているライアンを紹介してもらって。



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―― ライアンさんはビールの造り手だったんですか?


ニューヨーク出身で、現地のブリュワリーでビール造りをしていたストイックな職人です。別の仕事で日本に移住していて、上勝町に来てもらったら、ごみゼロの取り組みとか「最高の環境じゃん!」って意気投合したんです。彼も「日本はすごい技術があるのに、なんでビールは同じなの?」って沸々とした思いがあったみたい。


ただ、「今まで色んな人がビール造りを学びにきたけど、誰もできなかった」って一度は断られたんです。素人には無理、と。それで、ふと仕事を聞かれたから、「食品の衛生管理」って言ったら、突然表情が変わって「それなら、できるよ」って。



ーー それはなぜですか?


「ビールは微生物の発酵でできるんだけど、他の菌が入ったら雑味になる。だから実はビール造りの80%以上は掃除なんだ」って言われて。それに関しては、うちはプロ中のプロですから。



ーー 色々なエレメントが繋がったんですね。


それで2015年に、「上勝百貨店」を閉めて、ブリュワリーを作って「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」を始めたんです。



「上勝らしい」ビールへのこだわり

 出典  Funmee!!編集部


ーー ビール造りでこだわったのはどの部分ですか?


上勝らしさ、ですね。僕は「ヴァイツェン」に思い入れがあって、香り付けにオレンジピールを使う。上勝はポン酢に使う「柚香」という柑橘が名産で、捨てる皮をオレンジ代わりに使って「ルーヴェンホワイト」というオリジナルのビールを造りました。



ーー オリジナルは何種類あるんですか?


全部で4種類。他にもいま主流のIPAには上勝晩茶を香り付けに入れたり、『The International Beer Cup 2016』で銀賞を獲った「ポータスタウト」には、徳島の鳴門金時をローストして使ったり、「この地ならでは」にこだわっています。



 出典  Funmee!!編集部


―― 実際に造ってみてどうですか?


本当に楽しい! 街の人も量り売りに慣れてるから、面白がってくれているんです。主婦の方が水筒持って買いに来てくれたり、農繁期には「田植え終わったら、みんなで飲むから」って農家の方がペットボトルに入れて持って帰ったり。



―― ポートランドみたいな風景に!


そう! 県外の人も「なんか上勝で新しい地ビールできたらしいで」って来て、ビールを飲んで、そこから「ゼロ・ウエイスト」の活動とかを知ってくれる。



―― 入り口に「楽しい」があるからこそ地域の魅力が伝わるんですね。




自分がわくわくするビールに挑戦する

 出典  Funmee!!編集部


―― 田中さんが考える“ビールの面白さ”ってどういうところですか?


美味しさはもちろんですが、コミュニケーションのツールになる。うちはBBQもやってますが、みんなでビール飲みながらワイワイやっていると新しいアイデアやアクションが生まれたり、人と人が繋がる。



――しかもその美味しいビールが地方の小さな町が造ったもの、という。


その面白さを広げたいんですよね。上勝は日本のどこにでもある地方の縮図なんです。産業は衰退し、高齢化、過疎化が進む限界集落です。みんな「何かせなあかん」と思ってるけど、打つ手がなくて、明日のことを考えないと、明日がこなくなる町だった。


そんな町がクラフトビールで小さいながらも革命を起こした。それが全国に広がって、地方からどんどん面白いビールができる試金石になりたいですね。



 出典  Funmee!!編集部


―― 今後の展望をお聞かせ下さい。


まず、今は年間で15トンくらいしか作れないので第2醸造所を作って総量を10倍に増やします。それでどんどんこのビールの魅力を知ってもらいたい。地元の面白い人とコラボした新しいビールも作りたいですね。すだち農家さんとか、山の中でクラフトチョコレートを作っている人とか。他にもバーボンの古樽やスコッチの樽とか集めていて、木樽の中で熟成させたビールとかもやってみたい。


どうなるかわからないけど、考えているだけで自分がわくわくするし、何より飲みたいから、これからもチャレンジしていきたいですね。



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【後編】クラフトビールの「楽しさ」で業界地図を塗り替える。 上勝町『RISE&WIN』田中達也さん


■ プロフィール

田中達也さん


1969年生まれ。1987年徳島臨床検査センター(現スペック)入社。97年、スペック代表取締役社長に就任。一般社団法人・地職推進機構設立などの地域活性化事業を推進。2015年上勝町に『RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store』をオープン。翌年、東京東麻布に『RISE & WIN Brewing Co.KAMIKATZ TAPROOM』をオープンし、クラフトビールを通して上勝町の魅力を伝える。


■ 住所

『RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store』

徳島県勝浦郡上勝町大字正木字平間237-2


『RISE & WIN Brewing Co.KAMIKATZ TAPROOM』

東京都港区東麻布1-4-2 THE WORKERS & CO 1F

http://www.kamikatz.jp





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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:藤谷良介(Ryosuke Fujitani)

写真:上樂博之(Hiroyuki Jyoraku)




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Funmee!!編集部

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