「ボケ」と「被写界深度」を活かしたテクニック
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【カッコいい写真・カメラと撮影のキホン】︎

「ボケ」と「被写界深度」を活かしたテクニック


「いい写真を撮りたい!」

 

そんな思いに応えるべく、この連載ではカメラを始めたばかりの人や、なぜかカッコいい写真が撮れない…と悩んでいる人、いまよりもっと本格的な一枚を撮りたいという人に向け、カメラのキホンを紹介します。

 

ピントも画像も、そこそこ無難に撮れる昨今、まず人よりカッコいい写真を撮りたいなら、こだわるべき「ボケ」と「被写界深度」で間違いありません!



写真の命は背景! 「ボケ」を使えばカメラが楽しくなる

なにげない風景も"ボケ"を使うと目を引く一枚に【1/500sec F2.8 ISO200 露出補正0 焦点距離20mm】
 出典  Funmee!!編集部
なにげない風景も"ボケ"を使うと目を引く一枚に【1/500sec F2.8 ISO200 露出補正0 焦点距離20mm】


凛としたユリの花と、向こうへ続く日本家屋の軒。軒先に置かれた水色の靴はヤンチャな子どもが脱ぎ捨てたのだろうか――。

 

一枚の写真のなかでそんなストーリーを描けるのは、この写真がボケをうまく使っているためです。最初に視線が行くユリの花。そこから日本家屋の軒や雨に濡れた石畳へと移り、壁の和傘や、足元の靴はボケていることで小さな発見となるのです。


このように、写真の主役となる被写体がしっかり写っていることだけでなく、背景のボケ具合で写真の見え方は大きく違ってきます。



ボケを狙った撮影。ピンクのコップの縁にはピントが合っていますが、その他はボケています【1/125sec F2.8 ISO200 露出補正0 焦点距離70mm】
 出典  Funmee!!編集部
ボケを狙った撮影。ピンクのコップの縁にはピントが合っていますが、その他はボケています【1/125sec F2.8 ISO200 露出補正0 焦点距離70mm】
ボケないように撮った場合。同じコップですが受ける印象は異なります【1/125sec F22 ISO320 露出補正0 焦点距離70mm】
 出典  Funmee!!編集部
ボケないように撮った場合。同じコップですが受ける印象は異なります【1/125sec F22 ISO320 露出補正0 焦点距離70mm】


上の2枚は同じシチュエーションでボケ具合を変えて撮影した写真です。ボケを使うことでピントの合っている場所がより引き立って見えませんか。

 

つまり、どこをどれくらいボケさせるかによって、“見せたいもの”を引きたてられるのです。ここではカラフルなコップを被写体にしていますが、人や花、風景、スポーツシーンなど、普段自分がよく撮影するシチュエーションに置き換えて想像してみれば、そのことが理解できるのではないでしょうか。



ボケを操るのは「絞り」

人差し指で「絞りダイヤル」を回して設定。その数値は電子表示パネルへ「F○○」と表示されます(ダイヤルの位置は機種によって異なります)
 出典  Funmee!!編集部
人差し指で「絞りダイヤル」を回して設定。その数値は電子表示パネルへ「F○○」と表示されます(ダイヤルの位置は機種によって異なります)


ボケさせるか、それともボケさせないか。その設定はカメラで行います。


まずはモードダイヤルで「絞り優先モード」にセットしましょう。そして「絞りダイヤル」を回して撮影してみましょう。F2.8やF8.0、F22などへ数値が変わり、それぞれ異なるボケ具合の写真が撮れます。

 

このF○○の数字を「F値」や「絞り値」といい、写真のボケ具合の指標となります。おおまかに言えばF値が小さいほどボケは強くなり(ピントの合う範囲が狭く)、F値が大きいほどボケは弱く(ピントの合う範囲が広く)なります。



老木に生したコケを狙った一枚。F値を小さくしてコケの緑に射す光にスポットを当てた【1/320sec F5.6 ISO1250 露出補正0 焦点距離95mm】
 出典  Funmee!!編集部
老木に生したコケを狙った一枚。F値を小さくしてコケの緑に射す光にスポットを当てた【1/320sec F5.6 ISO1250 露出補正0 焦点距離95mm】


このF値の最小値はレンズによって異なるので、どんな写真を撮りたいかによって、レンズの選択も変わってきます。「EF50mm F1.2L USM」や「AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR」といった感じで大抵レンズの商品名にも入っているので、レンズ選びの参考にできます。

 

最近はコンデジでも絞り優先モードを搭載した機種も増えています。絞りモードの有無もデジカメ選びの参考にしましょう。ただしコンデジの多くは、光を受け取り電気信号に変換する「撮像素子」が、フルサイズ機やAPS-C機より小さいため、ボケ量は少なくなります。撮像素子の大きさも写真の仕上がりに影響することを覚えておきましょう。



絞りのしくみと、F値の関係を知ろう


ボケをさらにうまく使うために、絞りのしくみとF値の関係を探っていきましょう。

 

絞りダイヤルでF値を変えると何が変わるのか。先に答えを言ってしまうと、光の入ってくる量が変わります。



絞りダイヤルを回すことでレンズの絞り羽根の開閉が変わります。これが開くほどF値は小さくなります
 出典  Funmee!!編集部
絞りダイヤルを回すことでレンズの絞り羽根の開閉が変わります。これが開くほどF値は小さくなります


手元に一眼レフやミラーレス一眼といったカメラがあるならば、絞りダイヤルを回して、F値をいろいろ変えながらシャッターを切って、そのときのレンズを覗いてみましょう。そうするとF値にしたがって絞り羽根が開いたり狭まったりすることがわかるでしょう。


F値を小さくすると絞り羽根が開き、光がたくさん入るのです。絞りを最大に開いた状態を「開放」と呼び、そのときのF値をレンズの「開放F値」と呼ぶのですが、開ききった絞り羽根を見ればそう呼ばれる理由を納得するのではないでしょうか。



逆に、絞りダイヤルを絞れば、絞り羽根は狭まっていきます。「F値が大きいと、入ってくる光は少ない」と覚えましょう
 出典  Funmee!!編集部
逆に、絞りダイヤルを絞れば、絞り羽根は狭まっていきます。「F値が大きいと、入ってくる光は少ない」と覚えましょう


今度はF値が大きくなるようにダイヤルを回してみましょう。絞り羽根が絞られていき、入ってくる光の量は少なくなっていきます。このようにF値が大きくなるよう調整することを「絞る」と言います。



絞りの状況とF値の変化。それぞれの光量や写真描写の変化は覚えておきたい基本のキ
 出典  Funmee!!編集部
絞りの状況とF値の変化。それぞれの光量や写真描写の変化は覚えておきたい基本のキ


これまでの内容をまとめると、上の図のようになります。絞りを開くことで入ってくる光は増え、ボケも強くなります。逆に絞ることで入ってくる光は少なくなり、ピントのあう範囲が広くシャープな写真になります。



「被写界深度」を理解すると、ボケを操るウデがさらに上がる!


ボケや絞り、F値との関係がわかってきたところで、今度はその原理を活かす方法を考えていきましょう。

 

ボケを感覚的に捉えるには、「被写界深度」を理解することが近道になります。被写界深度とは、その字の通り、ピントが合っている範囲(奥行)のことです。F値が小さくボケの強い(ピントの合う範囲が狭い)ときは被写界深度が浅い写真になり、またF値が大きくボケの弱い(全体的にピントが合っている)ときは、被写界深度が深い写真になります。



左はF値が小さくて被写界深度が浅い場合、右はF値が大きく被写界深度が深い場合の模式図
 出典  Funmee!!編集部
左はF値が小さくて被写界深度が浅い場合、右はF値が大きく被写界深度が深い場合の模式図


先に紹介したコップの写真を模式図にしたのが上のイラストです(真ん中のF8.0の作例写真はありませんが、補足として加えました)。このように、F値が変わることで被写界深度も変わります。

 

つまり、写真のどこに、どれくらいの範囲でピントを合わせたいかをイメージしてセッティングすることで、自分のイメージに近い写真が撮れるのです。



被写界深度を浅めにして葉先にピントを合わせ、他の葉をボケさせることで、先へ延びようとする植物の意思のようなものを感じる写真に【1/200sec F10 ISO200 露出補正-1.7 焦点距離170mm】
 出典  Funmee!!編集部
被写界深度を浅めにして葉先にピントを合わせ、他の葉をボケさせることで、先へ延びようとする植物の意思のようなものを感じる写真に【1/200sec F10 ISO200 露出補正-1.7 焦点距離170mm】


また、同じレンズ、同じ焦点距離、同じF値で撮影しても、被写体との距離が変わるとボケの様子も変わってきます。その違いを作例から見てみましょう。



50mmのレンズで離れて撮影【1/250sec F8.0 ISO100 露出補正0 焦点距離50mm】
 出典  Funmee!!編集部
50mmのレンズで離れて撮影【1/250sec F8.0 ISO100 露出補正0 焦点距離50mm】
50mmのレンズで少し離れて撮影【1/250sec F8.0 ISO100 露出補正0 焦点距離50mm】
 出典  Funmee!!編集部
50mmのレンズで少し離れて撮影【1/250sec F8.0 ISO100 露出補正0 焦点距離50mm】
50mmのレンズで近づいて撮影【1/250sec F8.0 ISO100 露出補正0 焦点距離50mm】
 出典  Funmee!!編集部
50mmのレンズで近づいて撮影【1/250sec F8.0 ISO100 露出補正0 焦点距離50mm】


この3枚の写真は、どれも焦点距離50mmのレンズを使いF8.0にして、その他の条件もそろえて撮影しています。とくに1枚目と3枚目を比較すると顕著ですが、ボケの見え方が全然違ってきています。このことような変化も配慮しながら、被写体との距離によってレンズやF値の選択をするといいでしょう。とくに人のポートレートを撮るときには、背景をどれくらいボケさせるかによって、写真の仕上がりが大きく違ってきます。



ボケさせないことで美しくなる写真もある

田園のなかをどこまでもまっすぐ続く道と、遠くに連なる山々【1/400sec F14 ISO500 露出補正0 焦点距離17mm】
 出典  Funmee!!編集部
田園のなかをどこまでもまっすぐ続く道と、遠くに連なる山々【1/400sec F14 ISO500 露出補正0 焦点距離17mm】


とにかくまっすぐなバイクで走りたくなるような道、峰の向こうへ連なる山々など、絞ってF値を大きく、被写界深度を深くした方が、美しくなる写真もあります。F値を大きくして撮影することで、近くの道路から、空に浮かぶ雲までシャープに切り取れます。



登山道から望む峰。足元の岩場から向こうの山までピントはあっているが、間にある空気の層が自然なグラデーションを描いてくれた【1/500sec F16 ISO800 露出補正0 焦点距離17mm】
 出典  Funmee!!編集部
登山道から望む峰。足元の岩場から向こうの山までピントはあっているが、間にある空気の層が自然なグラデーションを描いてくれた【1/500sec F16 ISO800 露出補正0 焦点距離17mm】


絞りをさらに応用した撮影法をひとつ。絞ってF値を大きくするとカメラへ入る光の量が少なくなることは既に紹介した通りです。そのことを活かして、夕暮れ時の水面を撮影すると、下のような写真になります。



湖畔から長時間露光で水の静けさを表現【13sec F18 ISO31 露出補正0 焦点距離24mm】
 出典  Funmee!!編集部
湖畔から長時間露光で水の静けさを表現【13sec F18 ISO31 露出補正0 焦点距離24mm】


このとき、F18、13秒ものあいだ露光させたことで、水面の波紋は消えて鏡のような湖面になりました。さらに絞って露光時間を長くすればまた違った表情を見せることでしょう。どのような設定にするとうまく撮れるかいろいろ試しながら楽しんでみてください。



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文:住吉大助(Daisuke Sumiyoshi)

写真:荒木優一郎(Araki Yuichiro)、桑山章(Akira Kuwayama)、後藤武久(Takehisa Goto)、宮田幸司(Koji Miyata)



カメラ
2018年3月22日
Funmee!!編集部
Funmee!!編集部

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