“ライフスタイルとしてのスケートボード”を楽しむ。写真家・傳田太郎さんの日常


スケートボードは子どもの遊び……というイメージを抱きがちですが、クルーザーというスタイルがあるのはご存知でしょうか? 名前のごとく街中を“クルーズ”することに特化したこのスケートボードは、日常のちょっとした移動にもピッタリな、まさに“クールな大人のためのスケートボード”。

この徒歩とも自転車とも違う新たな移動手段をライフスタイルに取り入れている、写真家・傳田太郎さんの日常を覗いてみましょう。

きっかけは、「なにコレ、気持ちいい」

 出典  Funmee!!編集部


―― もともと、スケートボードの前にはサーフィンを楽しんでいたんですよね。


そうですね。その前に、実は横乗りはスノーボードから入ったんです。スノーボードが上手くなりたくて、夏のオフトレとして軽い気持ちでサーフィンを始めたんですけど、そりゃもう全然思い通りにならないし、苦しくて辛いし……。でも海の中から見る世界があまりにも美しすぎて、どっぷりハマってしまいました。当時は、仕事前に日の出とともに波乗りというのが日課でしたね。


―― そんなサーファーだった傳田さんが、スケートボードと出会ったきっかけは?


2人の息子といつか一緒に波乗りできたら素敵だなと思って、とりあえずスケートボードを与えたんです。そしたら彼らが100%スケーターになっちゃって(笑)。それで息子のスケートシーンをガラケーで写真に収めていたのが、僕がスケートボードと向き合い始めた時期だったのかもしれません。15年くらい前でしょうか。自分が滑るというより、写真という切り口で少しずつスケートボードの世界に入っていきました。


―― お子さんがきっかけだったんですね! それでは、ご自身がクルージングボードに乗るようになったのは?


いつだったか、息子がスケートボードの大会の賞品でクルージングデッキをもらってきたんです。通常のデッキはテールとノーズ(※1)が丸くて反り上がっていますが、クルージングデッキは、テールとノーズの大きさが違って、楕円に近い形状をしている移動用のデッキ。これを、新たに組もうってことで、使い古したトラック(※2)とソフトウィール(※3)を取り付けました。そうしてなんとなく近所をウロウロし始めたのがキッカケだったかなぁ。


※1 ボードの後ろの反り上がっている部分をテール、前の反り上がっている部分をノーズと言う。

※2 スケートボードの土台になる金属のパーツ。

※3 スケートボードのタイヤのこと。柔らかいソフトウィールは荒い路面もスムーズに進む。クルージングデッキには通常ソフトウィールを装着する。



―― その時の感想は?


シンプルに、「なにコレ、気持ちいい」って(笑)。自分の身ひとつ、スケートボードひとつで、風を切って軽やかに移動できる。その気持ちよさはこれまで味わったことなかった。そこからずっと、乗り続けていますね。



移動が楽しいことは、日常を豊かにする。

 出典  Funmee!!編集部


―― 今は、どんな場面でクルージングボードに乗っているのですか?


打ち合わせとか、何かのイベントだったり、買い物だったり、半径5kmくらいまでの移動ならだいたいクルーザーで移動します。本当に、日常ですよね。あとは、やっぱり写真を編集したりデスクワークが続くと体が鈍るので、スッキリしたい時にはガムシャラに海まで往復プッシュすることも良くあります。



―― リフレッシュでもあると。では、ライフスタイルにスケートボードを取り入れたことで変わったことはありますか?


“移動が楽しくなる”ってことです。無駄に移動したくなる。なんというか、自分の足で風を切り、どこまでも行けちゃうんじゃないか? とワクワクしてくる。クルーザーに乗ること自体が冒険なんでしょうね。あとは足腰が強くなります。それと乗った後のビールが美味い(笑)。



 出典  Funmee!!編集部


―― 確かに、生きている上で「移動」が占める割合は大きいですもんね。それが楽しくなるということは、日常も豊かになる。では、スケートボードの技術的な楽しみはあまり追求していない?


スケートボードで普通にトリックをやろうとしても、もはや全然上達はしません。年齢的なものなのか、すぐに腰とか痛くなっちゃう。だから、オーリーしなくても達成感を得られる滑り方を見つけたいと思っています。



―― 苦労することはありますか?


うーん、路面がガタガタしてるとスピードが落ちて気持ちよく無いです。路面はツルツルのコンクリでお願いします(笑)。



ボードをカスタムし、オンリーワンになる楽しさ

 出典  Funmee!!編集部


―― 今愛用しているクルージングボードの詳細を教えてください。


デッキはHYDROというブランドのシェイパーである安藤君に削ってもらいました。彼は、サーフボードとスケートボードをシェイプ・カラーリングしているアーティストです。独自のテンプレートを持っていて、カスタムメイドしてくれます。このデッキは、あーだこーだ言いながら、目の前で削ってもらい、色も相談しながら決めました。“ta-low”って名前も入れてもらってます。



―― トラックも個性的ですよね。


長男が昔使っていたキッズ用のものを道具箱から引っ張り出しました。日本で唯一トラックを製作している、鵠沼のCustom Trucksが手がけたものです。砂型にアルミニウムを流し込む彼らの製法は、とても温かみがあって、まさに道具の匂いがする逸品です。僕はこのCustom Trucksのものしか使ったことがないかも。



 出典  Funmee!!編集部


―― では、セッティングのこだわりを教えてください。


普段使っているデッキの幅が8.0インチなので、踏み心地が一緒になるように8.0インチの元板から削り出してもらっています。先端は丸くしたほうが割れづらいのですが、風を切るイメージが欲しかったので少し鋭角にしています。ただの見た目の問題だけど、こういう細やかな部分でシルエットにこだわるのがオンリーワンになるから好きなのです。



―― スケートボードは移動だけでなく、モノ自体の楽しみ方も魅力だと。


そうなんです。カスタムして自分だけのものにしていくこと自体が楽しい。トラックはあえてキッズ用にすることで、まぁクイクイと動いてくれます。僕もそこまで繊細に違いが良く分からないのだけど、なかなか気持ちよい踏み心地だと思ってます。ウィールは、近所に住むプロスケーターの西川誠君からもらった、お古のAutobahn Wheelsですね。ウィールバイト(※3)が怖いのでライザーパッドというものを入れて車高を上げています。


※3 重心移動などでデッキが傾き、ウィールに当たってしまうこと。



 出典  Funmee!!編集部

個性を磨くヒントが、スケートボードには詰まっている

 出典  Funmee!!編集部


―― 世間一般にはスケートボードは危ないとか難しいと言うイメージもありますが、そのあたりはどのように感じていますか?


確かにそうした側面はあります。なめて油断すると痛い目に合うので、周りの状況を掴む広い視野というか、感覚は必要かなと思いますね。サーフィンにも言えると思うけど、様々なリスク管理ができてなきゃイケてない。ストリートで滑っているスケーターは、実はものすごく高い次元で危険回避能力を持っています。知らない人からは人間が地面を転がっているように見えても(笑)、エスケープしてしっかり受け身を取っている。



―― では、これからクルーザーを始めようとする人に伝えたいことは?


クルーザーを乗り始める人は、まずは人通りの少ない広い場所で、ボードコントロールの練習をするとか、どうすると転んでしまうのか? とか、感覚を身に着けた方がいいと思います。自転車も最初は皆乗れなかった訳だし、それと一緒ですよ。まずは練習。



―― 最後にスケートボードカルチャーに興味がある同世代の人に、何かメッセージがあればお願いします。


上で言ったような移動やモノの楽しさを含めて、個性を磨けること。スケートボードの世界にはそのヒントがたくさん散りばめられていますよ。



スケートボードから芽生えたアートな感覚。写真家・傳田太郎さんが起こす茅ヶ崎発アートムーブメント


■プロフィール

傳田太郎さん

神奈川県相模原市出身。高校2年の時に茅ヶ崎へ移る。Skate、Surf、Snowを自らも楽しみ、その延長で写真の世界へ入る。スケートボード写真が関連誌で掲載されたのをキッカケに、ストリートカルチャー誌をはじめ各種イベント撮影を行う傍、展示活動も精力的に展開。一方で茅ヶ崎市のアートカルチャー団体であるNPO法人 3F Community Service の理事を務め、Hand Made Book Festival(Zineフェス)をプロデュースし、アーティストの表現活動の場づくりを模索している。



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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文・写真:吉田佳央(Yoshio Yoshida)



※公道でのスケートボードでは、交通の多い場所では道交法違反として取り締まりの対象になりえます。また、そうでない場合も十分周囲に配慮し、安全に注意して行ってください。


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Funmee!!編集部

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