【趣味人ジドウシャ部】#04 フィアット500(チンクェチェント)(ディテール編)


クルマの新旧や機能だけでなく、趣味性の高いクルマ、さまざまな趣味への汎用性が高いクルマを紹介するこの連載。4台目は「フィアット500(チンクェチェント)」です。

 

製産終了してから40年以上経った今もなお、世界中に多くのファンを持つこのクルマの、実用面やメンテナンスについて紹介しましょう。



クルマという乗り物の純粋な魅力が味わえる

ヘッドレストのないごく簡素なシート。後席に乗り込む際は前席を座面ごとガバッと前に倒します

 出典  Funmee!!編集部


フィアット500の魅力はというと、誰しもそのキュートなスタイリングと言うでしょう。でも、このクルマの魅力はそれだけではありません。

 

運転席に座ると、感じるのは造りのシンプルさ。今どきのクルマはもちろん、同年代の他のクルマと比較してもかなり簡素なインテリアです。


「チンクは、よくイギリスのミニやフランスの2CVなどと並べて語られますが、はっきり言って、その2台に比べると圧倒的にショボいです。チンクに乗ってからミニに乗ると、ミニが現行車のように感じられるぐらいですから」と語る、フィアット500専門ショップ「オンタリオSS」の山口二郎さん。



ダッシュパネルまわりも非常にシンプルです

 出典  Funmee!!編集部


エンジン音を外に逃がすために屋根が開けられるようになっているぐらいですから、静粛性は皆無。エンジンルームからも車外からもどんどん音が入ってきます。乗り心地もけっしてよいとは言えません。タイヤが細く小さいので取りまわすのがあまり苦にならないとはいえ、ステアリングは重ステです。もちろんエアコンなんてついていません。

 

しかし、そのチープさが逆に魅力なのだと山口さんは言います。フィアット500のエンジンは非力で、最高速度も時速100kmに満たないのですが、車重が500kg弱しかないので、街なかでは思いのほかキビキビと走ってくれます。細いステアリングや華奢なペダルからは、いかにも“操っている”という感覚が伝わってきます。「遅いけれど、楽しい。クルマの原点というか、大衆に普及したクルマってこういうものだったんだなというものを感じるんですよ」と山口さんは語ります。



メーター類はスピードメーターだけ。120km/hまで切られていますが、実際には100km/h出すのもやっとです

 出典  Funmee!!編集部


デザインも性能も必要最低限。しかし絞りきって残ったもののバランスがよいので、クルマという乗り物の魅力を純粋に感じられるのがフィアット500というクルマ。その純粋さに、愛おしさを覚えてしまうんです。



こまめなメンテナンスもまた楽し

撮影車両は1972〜1975年に製造された最終型の500R。ちなみにこの車両、オーナーさんがカーシェアアプリ「エニカ」に登録しているそうです

 出典  Funmee!!編集部


フィアット500は、先代の500に対して「ヌオーバ(新たな)500」と名付けられ、1957年のジュネーブショーでデビューしました。当初はあまりにルックスが簡素でエンジンが非力なためにさほど注目されませんでしたが、そうした部分を改善したモデルが発表されると、爆発的なヒットとなりました。

 

以来フィアット500は、1975年までの20年にわたって製産されました。その間に行われたマイナーチェンジによって、ベーシックなモデルには、5つのバリエーションが存在します。その他にも、ワゴンタイプやスポーツタイプなどの派生モデルや、現行のフィアット500にも設定されているアバルトモデル、またこのクルマをベースにした農作業車や軍用車もあります。日常のツールとして、いかにイタリアの大衆に愛されていたかがわかりますね。



この車両の内外装は、最近“カリオストロ仕様”にカスタムされました

 出典  Funmee!!編集部


長く愛用され、世界中にファンがいるクルマだけに、部品の入手については今でもあまり苦労しません。またオリジナルにこだわるオーナーもいますが、エンジンのボアアップといったチューニングから内外装のカスタムまでいろいろ手を加えて楽しんでいるオーナーもたくさんいます。

 

消耗部品は安価で手に入るので、こまめに交換してあげることが必要です。「最終型でも40年以上前に製産されたクルマですから、車両の程度にかかわらず、ほったらかしにしているとどんどん傷んでいってしまいます」と語る、山口さん。

 

「うちのお客さんには東京から広島へチンクで帰省する方もいるので、長距離走行自体はまったく問題ないです。ただ長距離走る前には一応点検したほうがいいし、実際そうしているお客さんは多いですね」

 


オンタリオSSのガレージ。整備で入庫しているクルマの他、レストアベースの車両がズラリと並んでいます

 出典  Funmee!!編集部


また保管場所も、できれば屋根のある場所にしたいところです。やむをえず屋外に置く場合にはこまめなワックスがけ、ボディカバーは必須。ただしカバーをかけっぱなしにすると湿気がこもってしまうので、乗らない場合でも時々外してあげましょう。

 

ほぼノーメンテで乗っていられる今のクルマと比べれば、フィアット500は手のかかるクルマ。しかし構造がシンプルなので、簡単な整備ならオーナー自らやっている人も多いクルマです。自分で面倒を見れば、より愛着も湧くというものです。




■取材・撮影協力 

オンタリオSS

車両販売から整備、レストア、チューンナップまで何でも相談できるフィアット500専門店。長年フィアット500一筋に手がけてきただけあって、このクルマに関する知識やノウハウにかけては日本随一だ。ちなみに2014年に公開された実写版の映画『ルパン三世』に登場したフィアット500は、この店で卸したものだとか。

 

 

埼玉県さいたま市中央区桜丘2-10-27

TEL:048-745-9500

営業時間:10:00〜19:00

休み:月曜

 

 

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文:和田達彦(Tatsuhiko Wada)

写真:六本木泰彦(Yasuhiko Roppongi)



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Funmee!!編集部

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