大切なことはいつも波が教えてくれる。伝説的サーファー・小室正則さん


日本のレジェンドサーファー、マーボーこと小室正則さん。その波乱万丈の人生を支えたのは、波から与えられる“教え”だったと言います。


そして、齢70を目前に見据える自分の人生の終着点――。サーフィンとともにあるライフスタイルの素晴らしさを、語ってもらいました。



サーフィンの神様が与えた「天国と地獄」

マーボロイヤルは辻堂の顔ともいうべきサーフショップ

 出典  Funmee!!編集部


―― 小室さんは、かつてサーフィンブランド『ライトニングボルト』を日本で展開したことでも知られています。きっかけは?


1971年に初めてハワイを訪れた時に、ノースショアのパイプラインでサーフィンをしていたんだ。すると、赤色に黄色の稲妻が入ってるボードで、マッシュルームカットのサーファーがピューっと乗ってきた。


 

―― まさかその人は……。


「うめぇなぁ」と思っていたら、「お前、日本人か?」って聞いてきて、「そうだ」って握手。で、そのサーファーが、「ジェリー・ロペス」って名乗った。

 


―― ジェリー・ロペス! サーフィンの神様とも呼ばれている、最も有名なサーファーの一人ですよね。

 

有名も有名だよ。当時、彼のブランドのライトニングボルトも人気が出ていて、日本でも売られていた。で、その翌年に俺はジェリーを日本に呼んで、湘南で大会を開催した。そして、彼と契約をして日本で正式に展開をしたんだ。

 


―― 当時、かなりの人気を呼んだようですね。


すごいなんてもんじゃないよ。稲妻のマークが入ったものは何でも売れた。売り上げが50億、社員60人の会社になった。

 


―― サーフィンで培われた人間関係から広がっていったんですね。ただ、聞きにくいことですが、会社は倒産してしまったとか……。

 

忙しすぎて、ノイローゼになってしまった。ジェリー・ロペスが権利を売って代理店と契約し直したけど、条件をよく理解してなくて、結局、数億円の借金を背負うことになったんだ。その時は、身内に不幸もあって、死のうと思いつめたこともあった。


 

―― そんな状況から、どのように立ち直ったのでしょうか?

 

そんな時に、ビーチに座って海を見ていると、波が教えてくれるんだ。「マーボー、難しいことは考えなくてもいい、三度の飯が食えればそれでいい」と。人の情けや有り難みを痛感して、これからは人のために頑張ろうと思うようになったんだ。



ボロボロになっても、松葉杖を背負っても、死ぬまでプロサーファー!

笑顔を絶やさない小室さん。前向きに生きられるのは波のおかげ

 出典  Funmee!!編集部


―― 現在、小室さんは70歳目前ですが、まだプロサーファーとして大会に参加されていますよね?

 

当たり前じゃない。死ぬまで出るよ。周りは孫みたいな若者ばかりだけど、勝てる。ヘベレケになってもやめない。それもカッコいいと思わない?

 


―― 思います!


「マーボーさん、たいしたもんだよ」って、みんながほめてくれる。だけど、心の中では泣いてるんだよ。やはり、年とともに体に支障が出てくる。ボードの上に立つのももたつくし、早く歩けなくなった。

 


―― トレーニングはされているんですか?


できるだけ現役で長くやるために、毎朝、体のメンテナンスをしている。今朝も、ベッドの中で30分近くストレッチをしてきたよ。本当は一杯飲んで、のんびりしたいのに(笑)。

 


―― そんなに大変な思いまでして、なぜサーフィンを続けるのですか。

 

自分との戦いだね。それと、人に夢を与えたいんだよ。「マーボーという、おもしろいおっさんが、サーフィンを年を取ってまでやっていたけど、すごかった」って思ってくれたら。サーフィンの素晴らしさも伝えたい。いかに死ぬ前にたくさんの人に愛されるか。人はみんな死んでいくけど、それが財産だと思う。

 


―― 小室さんも死を意識しますか?


60歳を過ぎると、やっぱり死を覚悟してくるよ。俺はもう来年、70だよ。だから、仕事をやり終えて、80歳になったら俺は好きなこと――世界中にサーフィンをやりに行く。


 

―― 80歳で!


80だっていいじゃない。松葉杖を背負っても、簡単な波だったら、まだまだ乗れるよ。俺は、それが夢。人にできないことって、ロマンがあるじゃない。



波は無言で大切なことを教えてくれる

生涯現役サーファーを誓う小室さん。「松葉杖でも波乗りしたい」

 提供  小室正則さん


―― 小室さんは充実した人生を送っているように感じます。やはりサーフィンの存在は大きいですか?

 

もちろんだよ。人生、酒を飲んで酔っ払うのもいい、素敵な女性と付き合うのもいい。だけど、サーフィンでいい波に乗って、気持ちが“宙ぶらりん“になるのは特別なんだ。宙ぶらりんの心に波の力が入ってくる。すると、心が豊かになるんだ。サーファーは、みんな心の豊かなやつらばっかりだよ、金はないけど(笑)。

 


―― 「波の力が心に入っている」ことについて、具体的に教えてもらえますか。


海は広いし、波は何も言わない。だけど、波に巻かれていると、「このままじゃいけない。人の悪口を言っちゃいけない。仕事をやらなくちゃヤバイ。みんなを幸せにしなくちゃいけない」と大切なことを無言で教えてくれるんだ。

 


―― そんな波の力を一番感じられるのがサーフィンだと。


そう。毎回異なる、いろんな波が立つ。自分の目でうねりを見て、頭で考えて、「どういうライディングをしよう」って考える。そして波に乗る。その三拍子がそろうサーフィンっていうのは、俺にとって命だよ。

 


―― これから、小室さんは何を目的にしてサーフィンをして、生きていくんでしょうか。


森羅万象の中で、俺は波が一番怖いと思うんだ。そんな怖い波と戯れて、残りの人生も生きていきたい。それで、最終的には波のことを知り尽くして死にたい。それが俺の人生だね!




■プロフィール

小室正則さん

 

神奈川県藤沢市出身。1948年生まれ。プロサーファー、シェイパー(サーフボード職人)、老舗サーフショップ『MaboRoyal』のオーナーとして、長年活躍するサーフィン界のレジェンド。1967年、全日本ジュニア選手権にて2回優勝。サーフィンの神様ジェリー・ロペスとめぐり会い、あの稲妻マーク『ライトニングボルト』を日本に導入し、一世を風靡する。1992年、JPSA(日本サーフィン連盟)にロングボード部門を設立し、初代理事長に就任。現在のロングードサーフィンの人気を築いた。


 

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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:サンオー・プロダクションズ (SAN-O PRODUCTIONS)

インタビュー写真:ペロ (Pero)

ライディング・その他写真提供:マーボロイヤル(MaboRoyal)



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Funmee!!編集部

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