【僕のサン=サーンス】#07 初めてのお稽古(後編)「死ぬほど練習してください」


いつの日かの憧れに本気になるオトナがムキなれば……?

 

名曲『白鳥』を弾きたい一心で七転び八起きする強引な連載企画「僕のサン=サーンス」第7話は、初めてのお稽古「実際に弾いてみる」編。基本中の基本をお伝えします。



ステップ1/フォーム「チェロは体幹で弾く!」

何事も姿勢は大事だが、最初から腹の話になるとは……

 出典  Funmee!!編集部


「チェロは体幹で弾くんです」と、いきなりアキコ先生。優雅なクラシック界からフィジカルな用語を聞くとは思わなんだ!?

 

「より良く響かせようとバランスボールに座って練習する奏者もいるんですよ。それから、チェロと体の位置関係を常に一定に保つため、海外公演であれ自分専用のイスを持ち歩くチェリストもいます」

 

イスを飛行機で運ぶといくらかかるんだろう。ところでアキコ先生はどうしてますか?

 

「コホン。私は会場で用意されるピアノイスです」

 

それを聞いて安心。マイ・チェアも買わなきゃいけないかと思った。



これがおよその基本姿勢。イスとエンドピンで弾きやすい高さを決め、体幹でチェロを支える。筋トレ必至!

 出典  Funmee!!編集部



ステップ2/弓の動かし方「地球側に音を落とすイメージ!」

チェロの最難関は弓の使い方と見た。最初に気付け、って感じ

 出典  Funmee!!編集部


「音楽をするのは右手が99パーセント」。これは名言だ。事実、弓の使い方はめちゃくちゃ難しい!

 

実は、ヤマハ銀座店でチェロを試奏した時点で悟ってしまった。それまで僕と『白鳥』完奏の距離は地球と月程度だろうと高をくくっていた。しかし実際には、少なくとも太陽系でもっとも遠い海王星くらい離れていたのだ。



ノコギリを挽くような音しか出ず、自分が思う垂直と現実の違いに戸惑う

 出典  Funmee!!編集部


「弦に対して垂直に弓を当てるのが基本。地球側に音を落とすイメージで響かせます」。またまた出ました、アキコ先生の名言。でも、僕はノコギリを挽くような音しか地球に聞かせられましぇん。

 

「死ぬほど練習するしかないですね。私だっていまだに理想の響きを追い求めていますから」

 

最後に安心させてくれるのもアキコ先生の教え方なんだ。それにしても脱力できず。弓を持つ親指の付け根と腕がプルプルしてくる……。



4弦から1弦までラウンド状に張られているので、各弦で弓の角度が異なる。押し引きでも変わってくる。笑うしかない状況に追い込まれる

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ステップ3/左手の使い方「どこを押さえるかは覚えるしかない!」

アキコ先生がおもむろに取り出したテープ。初期指導に欠かせないツールなのだろう。いやぁ、助かる!

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チェロで最初に「???」となったのが、音階のガイドになるものが指板にないこと。いったいどこを押さえりゃいいのさと。

 

「じゃ、テープを巻いちゃいましょう。これでファーストポジションがわかりますから」

 

ファーストポジション?



上のテープを基準にファーストポジションの最高音部を導き出す。指の距離で。

 出典  Funmee!!編集部


「まずは基本として覚えるべきポジションです。解放弦を使いながら4本の弦で2オクターブ、ピアノで言えば白鍵を奏でられます」

 

ふむ。いわゆるドレミと解釈してよさそうだ。そしてアキコ先生は、人差し指の置き場を示した1本目のテープから指をがばっと開き、小指の位置に2本目のテープを貼った。どうやらこれがファーストポジションの範囲らしい。ギターのフレットみたいでホッとする。



押さえる位置のガイドがあっても、近すぎて見えないっつの!

 出典  Funmee!!編集部


でもアキコ先生。2本のテープ間のどこを弾けばどんな音が出るかはわかりませんよね?

「どこでどんな音が鳴るかは指の距離で覚えていくしかありません。そもそもチェロの指板は顔に近すぎて見えないでしょ」

 

そうなんです。指板がほとんど視野に入らないんです、チェロってヤツは! ただ、慣れ親しんだギターも指の位置を常に確認しているわけじゃないので、確かに覚える以外にないのだろう。いやいやまったく、新しい世界はいきなり登坂だらけだ。



まずは指で弦を弾くピチカート奏法でファーストポジション内の音階を確認。指の距離で探り当てるって、どれだけ不便なのよ

 出典  Funmee!!編集部

そりゃ見ちゃいますって。その上で弓を使うのがどれだけ厄介か、あなたにも知ってほしい

 出典  Funmee!!編集部



肉体を酷使する楽器。その奏者に向けられる素朴な疑問


そんなこんなで約1時間のお稽古はあっという間に終了。不慣れな体勢と使ったことがない筋肉の活動で首や肩や腕がバリバリに。チェロがこんなにも肉体を酷使する楽器とは夢にも思わなかった。



だから練習後はこうなります。脱力するための筋力が欲しい

 出典  Funmee!!編集部


「一つプレゼントです」。そう言ってアキコ先生は金色のテープを取り出し、指板の下方に巻いたのでした。

 

「ここ、『白鳥』の始まりと終わりの音です」

 

その輝きを見たら、いつか必ず羽ばたくような『白鳥』が奏でられる日が訪れる気がしてきた。いつかは言及しないでおくけれど……。



『白鳥』の始まりと終わりの音は、この金色テープが示す“ソ=G”。小指で押さえるらしい

 出典  Funmee!!編集部


練習が終わり、チェロケースを抱えて帰る明子先生を見送ってから、ふと妙なことが気になった。果たしてアキコ先生はどんな日常を送っているのだろうか? 浮世離れしているように見えるチェロ奏者の実態を探るべく、次回はアキコ先生の活動に密着! 自分のことよりそっちに興味がある!!



次回は、要するに「チェロで食べてくってどうこと?」という疑問をアキコ先生にぶつけます。

 出典  Funmee!!編集部




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文:田村十七男(Tonao Tamura)

写真:小澤義人(Yoshihito Ozawa)



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Funmee!!編集部

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