#24 名車ばかり250台!「好き勝手にやる」と決めてクルマを蒐集する男
自動車
【ポケットの中の博物館】︎

#24 名車ばかり250台!「好き勝手にやる」と決めてクルマを蒐集する男


なぜ人は蒐集するのか。彼らのポケットの中を覗くことで、趣味を人生の中心に据えるに至った価値観をつまびらかにしよう。

 

埼玉県の澤田福衛さんは、フォードサンダーバード、スバル360など名車と謳われるクルマを250台蒐集している。レストアする費用や自動車税もかかるので、大きなポケットマネーが必要となる。それでも一台一台に想いを馳せ愛でる、あふれるクルマ愛を取材した。



買ったものもあれば、譲り受けたクルマも


クルマを250台囲っている道楽者がいる。もちろん1カ所に保管できるはずもない。


そのため澤田福衛さんは自宅にある3つのガレージと、自宅周辺に点在する3つのガレージに愛車を住まわせている。そのうちのひとつが最初の写真の自宅ガレージ。フォード サンダーバード、プリンス スカイライン、いすゞ 117クーペ、BMW850i、ベンツSLなどが所狭しと並んでいた。



50mプールよりも巨大な自宅ガレージ。その2階には愛車を一望する書斎があった
 出典  Funmee!!編集部
50mプールよりも巨大な自宅ガレージ。その2階には愛車を一望する書斎があった


「このコルベットは1975年に初めて新車で買った思い出のクルマです。ドラマ『ルート66』を観て、いつか乗ってみたいと憧れていました」

 

自宅の別のガレージには、ダイハツミゼット、マツダR360クーペ、スズキフロンテなど、昭和を飾った大衆車が一堂に会していた。なかでもスバル360は10台所有する。隣のガレージには、ハリウッド映画でしか観たことがないオースチン(’34年型)、ダッジ(’27年型)、デトロイター(’15年型)などのクラシックカーが肩を並べていた。



スバル360やスズキフロンテ、ダイハツミゼットなどの国産大衆車がならぶガレージ
 出典  Funmee!!編集部
スバル360やスズキフロンテ、ダイハツミゼットなどの国産大衆車がならぶガレージ


自宅周辺にある3つの車庫は、家業だった製茶工場の跡地に建てたものだ。蒐集品第一号は25歳の時、修理屋に貰ったトヨタパブリカ800だった。そのパブリカを元製茶工場に格納したのが運の尽き。やがて3つの元製茶工場だけでは収まりきれなくなり、自宅にガレージを3つ建造するに至った。



’60年代の国産車を代表するいすゞベレット1600GTR(左)。このプロトタイプが1969年鈴鹿12時間耐久レースで優勝した。ホンダシビックRS(右)。シビックのスポーツモデル
 出典  Funmee!!編集部
’60年代の国産車を代表するいすゞベレット1600GTR(左)。このプロトタイプが1969年鈴鹿12時間耐久レースで優勝した。ホンダシビックRS(右)。シビックのスポーツモデル
プリンススカイライン2000GT-A(’68年製)。1968年に日産自動車と合併し、車名がニッサンプリンススカイラインに変更されたが、プリンス製G7型エンジンを搭載するなど、ほぼプリンス製
 出典  Funmee!!編集部
プリンススカイライン2000GT-A(’68年製)。1968年に日産自動車と合併し、車名がニッサンプリンススカイラインに変更されたが、プリンス製G7型エンジンを搭載するなど、ほぼプリンス製


選り好みをしない性格も手伝い、古今東西いろいろなクルマが集まってきた。要レストアだろうがお構いなし。ポケットマネーで部品を取り寄せ、修理する。一般オーナーに貰ったクルマも多い。

 

そのうちの1台が、愛車を「マリブちゃん」と呼ぶ女性から譲り受けたシボレーマリブクラシックだ。2008年、その女性から電話があった。「70歳になったら運転を止めるつもりなので、大事にしてくれる人にマリブを譲りたい」という連絡だった。



一年に一度「マリブちゃん」会わせることを条件に、女性オーナーから譲渡されたシボレーマリブクラシック
 出典  Funmee!!編集部
一年に一度「マリブちゃん」会わせることを条件に、女性オーナーから譲渡されたシボレーマリブクラシック


「大切に乗っていたらしく、ほつれたシートを自分で縫ったり、ぶつけたボディを自分で補修してありました。うちまで運転してきてもらったのですが、妻に大きな花束を持ってきてくれたのが印象的でした」

 

譲り受ける際ひとつだけ条件があった。年に一度マリブに会わせてほしいと頼まれたのだ。

 

「毎年初夏に会いに来ます。今年もそろそろ来る頃じゃないかなあ。会うと『マリブちゃん』と言いながら、頬ずりをするんです(笑)」

 

そんな愛車に囲まれた澤田さんのクルマ偏愛歴は、幼少の頃まで遡る。

 



売るつもりもないし、譲るつもりもない


入間基地(埼玉県狭山市)がまだジョンソン基地と呼ばれていた頃、自宅の前を米軍基地関係者が運転するアメ車が頻繁に走っていた。見たこともない大きなクルマばかりだった。クルマが停まると、マフラーに顔を近づけ、匂いを嗅いだ。



’66年製トヨタクラウンエイトを運転する澤田さん。「劇用車として貸し出すこともあるけど、他人に運転してほしくないので自分で運転します」
 出典  Funmee!!編集部
’66年製トヨタクラウンエイトを運転する澤田さん。「劇用車として貸し出すこともあるけど、他人に運転してほしくないので自分で運転します」


10歳の時(1958年)、父が自動車学校を創業。これ幸いと、澤田少年は指導員に運転を教えてもらった。

 

「教習所のダットサンは狭くて立ったまま運転ができました。内緒だけど、まだクルマが少なかったので公道を走ったこともあったっけ(笑)」

 

その後、父の自動車学校に就職。いまや「ところざわ自動車学校」の校長である。その立場を利用し、校舎のあちこちに蒐集品を展示している。待合室の椅子はベンツなどのクルマのシート。ミニカーの展示は言うに及ばず、1960年型トヨペットクラウンDXも飾ってある。

 

学校には「ポール・ポジション」と命名したレストランを併設。その店内にはポルシェが鎮座している。



レストランポール・ポジションの店内。和食、洋食、麺類からピザまで豊富なメニューがそろう。教習生限定の日替わりランチはドリンク1杯付で500円
 出典  Funmee!!編集部
レストランポール・ポジションの店内。和食、洋食、麺類からピザまで豊富なメニューがそろう。教習生限定の日替わりランチはドリンク1杯付で500円


「誰に何と言われようと好き勝手にやる」と豪語する。

 

自動車学校にツインステアと名付けたクルマがある。ダミーのハンドルにダミーのブレーキとアクセルが付いたVWゴルフカブリオレだ。自分が10歳の時運転を教えてもらったように、大人が運転するツインステアの助手席で子どもたちに運転を疑似体験させたい。そう考え、このクルマを開発した。毎年5月、自動車学校が主催するイベントにこのツインステアが登場。大勢の子どもたちに運転を楽しんでもらっている。



子どもに運転の楽しさと、交通安全を知ってもらうために改造したVWゴルフカブリオレのツインステア。右のハンドルや計器類、ペダル類はすべてダミーで、車検時は簡単に取り外せるのだとか
 出典  Funmee!!編集部
子どもに運転の楽しさと、交通安全を知ってもらうために改造したVWゴルフカブリオレのツインステア。右のハンドルや計器類、ペダル類はすべてダミーで、車検時は簡単に取り外せるのだとか


妻もふたりの子どももクルマを運転するが、父の道楽にはまったく関心がない。その原因は父にある。まだ小さかった子どもに車内でお菓子を食べることを禁じた。それだけではない。ドライブ中鼻血を出した我が子に「降りろ」と怒ったというのだ。

 

「シートに鼻血が付いたら落ちないし、お菓子でクルマを汚されたくなかったんだよ」と弁解するが、クルマに入れ込みすぎる父に付き合いきれない、というのが家族の本音のようだ。



1915年にデトロイトで作られた幻のクルマ「デトロイター」。自動車産業誕生の地にちなんで命名された。澤田さん曰く、「1台だけ残すとしたら、間違いなくこのクルマにする!」
 出典  Funmee!!編集部
1915年にデトロイトで作られた幻のクルマ「デトロイター」。自動車産業誕生の地にちなんで命名された。澤田さん曰く、「1台だけ残すとしたら、間違いなくこのクルマにする!」


家族から見放されそうな250台を将来どうするつもりなのか。

 

「どうすんだろうねぇ、まったく考えてないんだよなぁ。博物館にすればと言ってくれる人もいるけど、クルマを見世物にしたくないんだよ。ガレージから出したら走れるクルマが最高だよ」



’66年製トヨタクラウンエイトはピカピカに磨かれている。同乗させていただいたが、エンジン音も乗り心地もすこぶる快適だった
 出典  Funmee!!編集部
’66年製トヨタクラウンエイトはピカピカに磨かれている。同乗させていただいたが、エンジン音も乗り心地もすこぶる快適だった


手放すつもりなどこれっぽっちもないようだ。

 

「旧いクルマは乗りづらいし、クーラーもない。それでもやっぱり可愛いよね。だからひとりで囲う。誰にも文句なんか言わせない(爆笑)」

 

レストア代も自動車税も半端ではない。それでも250台も囲えるのは、男の甲斐性なのかもしれない。



澤田さんに「いつかコルべットに乗りたい」と憧れを持たせてくれたドラマ『ルート66』。

1960年代に日本でもテレビ放送され爆発的な人気を博した『ルート66』、この機会に是非見てみてはいかがでしょうか?


■プロフィール

澤田福衛さん

 

クルマコレクター、ところざわ自動車学校校長。幼少期からのクルマ好きが高じて、選り好みせずあらゆるクルマを蒐集するコレクターに。校長を務める自動車学校の1階にはコレクションの一部が展示され、見学可能。

 

 

レストラン ポール・ポジション

 

ところざわ自動車学校に併設されたレストラン。自動車学校の教習生のみならず誰でも利用できる。パーティルームもあり、貸切できる。

 

埼玉県所沢市東狭山ケ丘2-879-5

TEL:04-2922-6231(自動車学校)、04-2926-7500(レストラン)

営業時間:9:00〜20:00(自動車学校)、9:00〜17:00(食事11:00〜L.O.14:30)(レストラン)

休み:月曜

 

 

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文:中島茂信(Shigenobu Nakajima)

写真:藤田修平(Shuhei Fujita)

 

 

■注記

本企画はライフスタイル誌「Lightning(ライトニング)」(枻(エイ)出版社)の連載「ポケットの中の博物館」の再掲載になります。また、2月から「ポケットの中の博物館」は月1回連載といたします。

 



コレクター
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2018年1月25日
Funmee!!編集部
Funmee!!編集部

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