'90sカルチャーを追体験!いま聴きたい渋谷系アルバム10選【前編】

『FUJI ROCK FESTIVAL '17』に小沢健二とCorneliusが出演したことで、あらためて脚光を浴びている渋谷系というムーヴメント。

 

背景として大きかったのは、'90年代初頭における外資系レコード店の出店ラッシュです。

 

新旧問わず多様な音楽にアクセスできるようになった結果、若者がディープな音楽リスナーになり、後にプレイヤーとしてデビューしていきました。

 

アーティストによっては渋谷系というカテゴライズに嫌悪感を示しているケースもありましたが、今回の記事では、ムーヴメントの総称として渋谷系という言葉を使っています。


今回の前編では、リアルタイムで渋谷系の音楽を体験し、雑誌編集者として世に紹介していたタワーレコ―ドの内田暁男さんに、重要作5枚をセレクトしてもらいました。


諸事情あって掲載の適わなかった作品もありましたが、ご紹介する作品も粒ぞろいの名盤。ちなみに、今回撮影したCDはすべて内田さんの私物です。それでは、どうぞ!!



フリッパーズ・ギターのラスト作(廃盤)。内田さんが手に持っているのは初回盤

フリッパーズ・ギターのラスト作(廃盤)。内田さんが手に持っているのは初回盤

 (C)ポリスター


僕の記憶では、渋谷系という言葉が使われ始めたのは、Corneliusが1stアルバムをリリースした’93年以降のことです。フリッパーズ・ギター(以下フリッパーズ)が活動していた頃は、まだ使われていなかったはず。

 

ただ、のちの渋谷系ムーヴメントに至る源流として、’91年にリリースされた小山田圭吾と小沢健二によるフリッパーズ・ギターのラスト・アルバムは重要な作品です。


それまでのギターポップ的な音像から離れ、当時UKで隆盛を見せていた、ギター・ロックとクラブ・ミュージックが融合したマンチェスター・ムーヴメントに呼応するダンス・サウンドに振り切った作品で、新旧の膨大な音楽からのサンプリングを中心に構成された内容は当時としては相当画期的だったと思います。


本作を最後に、突然解散してしまうわけですが、彼らの音楽の背景には常に過激な思想みたいなものが見え隠れしていて、リアルタイムで追いかけてきた人間としては、あれほどゾクゾクした経験はないですね。



ジャケットの元ネタはジミ・ヘンドリックス『Electric Lady Land』のイギリス盤

ジャケットの元ネタはジミ・ヘンドリックス『Electric Lady Land』のイギリス盤

 (C)ユニバーサル・ミュージック


渋谷系誕生前夜にリリースされた、メジャーデビューアルバムです。フリッパーズ・ギターのラスト・アルバムが発表されたのと同じ7月リリースで、当時は「消えゆくもの、生まれしもの」という感じで捉えられていました。

 

ORIGINAL LOVEは’86年結成で、インディーズ時代から音楽性の豊かさが高く評価されていました。このアルバムでは、ロックやソウル、ジャズを咀嚼し、パンク・スピリッツをもって曲に落とし込んでいます。

 

レコーディングにBlue Tonicのメンバーが参加していることもあり、レアグルーヴ感も満載です。そのセンスは、Suchmosをはじめとするシティポップ勢と通じる部分が多少あるかもしれません。

 

とにかくスタイリッシュで洗練されていて、「最高」としか言いようがないですね。次作の『結晶 SOUL LIBERATION』もあわせてぜひ。



マンチェスター・サウンドの影響下にありながらオリジナリティを確立

マンチェスター・サウンドの影響下にありながらオリジナリティを確立

 (C)ポリスター


小山田圭吾さんのレーベル、トラットリアからのリリースです。この頃、イギリスではマンチェスター・サウンドが人気でしたが、Venus Peterもその影響を公言していて、雑誌では「日英同時進行」と言われていました。

 

ちなみに、マンチェスター・サウンドとは、当時のレイヴ・カルチャーの影響から生まれたダンサンブルなロックのこと。代表的なバンドはThe Stone RosesやHappy Mondaysなどで、マッドチェスターとも呼ばれていました。

 

音楽的には、マンチェスター・サウンドの良質な部分を引き継ぎつつ、よりサイケデリックでノイジーなギター・サウンドを前面に出しています。そこに沖野(俊太郎)さんの甘酸っぱいメロディーが乗った、トリップ感のある名作です。



タイトルである『LIFE』のロゴは、Sly & The Family Stoneの同名作から引用

タイトルである『LIFE』のロゴは、Sly & The Family Stoneの同名作から引用

 (C)ユニバーサル・ミュージック


渋谷系の重要作であるCorneliusの1st『The First Question Award』と同じ年のリリースです。

 

このアルバムに関しては、スチャダラパーとコラボレーションした「今夜はブギー・バック」に尽きますね。渋谷系というムーヴメントが生み出した最大の現象であり、アンセムとしてオーバーグランドにまで浸透しました。

 

当時の彼は王子様キャラに振り切っていて、アルバム収録曲もポップなラブソングがほとんどです。でも、ただ能天気なだけじゃなくて、ポジティブなバイヴスと哲学的な雰囲気を両立させているように思います。

 

ここ1、2年は、SEKAI NO OWARIとコラボレーションしたり、銀杏BOYZの峯田(和伸)さんとゲリラライブをしたり、活動的で嬉しい限りです。



HMV渋谷店などのレコメンドでじわじわと人気に火がついた佳作

HMV渋谷店などのレコメンドでじわじわと人気に火がついた佳作

 (C)ユニバーサル・ミュージック


渋谷系に反応していたリスナーは分け隔てなくさまざまな音楽を聴いていて、その中には、同時代に流行した洋楽もたくさんありました。Ben Folds Fiveのこのアルバムは、その代表例です。

 

このバンドは、ピアノ、ベース、ドラムというギターレス編成。Weezerにも通ずる泣き虫的なメンタリティーを、パンキッシュな演奏に乗せて歌っています。「Underground」をはじめ、名曲ぞろいです。




ベン・フォールズの節回しは、少しQueenのフレディ・マーキュリーっぽさがありますね。パンクっぽくしたかったんでしょうけど、’70年代前半のメジャーなロックからの影響が滲み出てしまうところが面白いです。

 

当時の洋楽ならほかに、Rocketship『Rocketship』、Eggstone『In San Diego』、The Apples in Stereo『Fun Trick Noisemaker』あたりもオススメです。




後編につづく




■プロフィール

内田暁男さん


雑誌編集者を経験した後、タワーレコードに入社。『Bounce』編集部を経て、現在はオンライン事業本部に所属。プライベートでは1児の父でもある。

 


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文:吉田勉(Tsutomu Yoshida)

写真:山本祐之(Yuji Yamamoto)



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Funmee!!編集部

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