BMC(ビルマニアカフェ)の“いいビル”でつながる“新しい感性”


“ビル”を、どれほど意識して眺めたことがありますか? 高層、低層の差はあれど、ビルと名のつく建物はどこにでもありますが、日常の景色の一部であって、じっくり眺めることは少ないのでは。

 

けれど、そんなビルをしげしげと眺め、ニヤニヤと写真に収め、じわじわと仲間を増やすことに注力する人たちがいるのです。

 

それがBMC(ビルマニアカフェ)。特に1950〜1970年代に建築されたビルに目がないという皆さんに、ビルの魅力や楽しみ方を教えていただきました。



“ビルが好き”で集まり、2018年で結成10周年


大阪市北区に本部をおくBMCが結成されたのは2008年。BMCとは別の近代建築同好会で知り合った岩田雅希さんと高岡伸一さんが、「1950〜1970年代のビル」というピンポイントな好みで繋がり、その後岩田さんが他のメンバーを“ナンパ”して5人が集まりました。



BMCの皆さん。左から夜長堂こと井上タツ子さん、高岡伸一さん、岩田雅希さん、阪口大介さん、川原由美子さん。本部をおく「大阪ニット会館」(1973年築)前で

 出典  Funmee!!編集部


かつて岩田さんと同じ会社に勤めていた川原さんは「辞める直前、デスクにA3サイズのビル写真がペタっと貼られていて」、夜長堂さんは「お菓子を手渡すように、“ほれ”とタイルを手渡されて」と、岩田さんの独特な勧誘に心打たれてメンバーに。



川原さんが喫茶店好きだったこと、夜長堂さんが骨董とジュリー好きだったことから、「絶対、ビルも好きなはず」と岩田さん(左)の嗅覚が働いたとか

 出典  Funmee!!編集部




ビルの愛で方は、人の数だけある!

「それぞれ惹かれる部分が違うのに、『どのビルが好き?』という話になると、全員一致するんです」と夜長堂さん(右)

 出典  Funmee!!編集部


心を掴まれるポイントがシンクロするからみんなで盛り上がるわけですが、同時にそれぞれこだわりの着目点を持っています。もともとレトロな喫茶店好きだった川原さんは、喫茶店が入っているビル、そして白いビルが好き。

 

「“白”といっても外壁の素材などで微妙に色合いが異なり、その結果全然違った印象を受けるんです。白い壁にはまる窓の素材とのバランス、青い空に映える佇まいもたまりません」



右下がアーチ形になった枠が、白さをさらに映えさせるビル

 提供  BMC

青空に映える、少しクリームがかった白いビル。控えめに並ぶ換気口も可愛らしい

 提供  BMC


「ロマンを感じさせながら、狂わせてくれるデザインが好き」と情熱的に語るのは夜長堂さん。タイルの質感や色に注目し、そこにロマンを感じられるかどうか、がポイント。

 

「妖艶だったり、浮世離れしていたり、斬新さが突き抜けていたり。そんな異彩を放つビルに惹かれるんです」


この記事の最初のカットのビルも夜長堂さんがお気に入りのひとつ。このビルは浪速組のビルで、東心斎橋のエリアでも異彩を放つ。広島の「世界平和記念聖堂」や東京の「日生劇場」を手がけた建築家・村野藤吾が建てたことでも知られている。



大阪・ミナミでも目を引く「味園ビル」は、500人収容の宴会場、キャバレー、ダンスホールを持つ総合レジャービルとして1955年に誕生

 提供  BMC


阪口さんのツボは階段。「古いビルは、階段を主役にした設計のものが主流」という言葉の通り、現代のビルは、非常階段という名で階段が隠されてしまっています。

 

「昔のビルは、入り口を入ると正面に螺旋階段があったり、左右から降りられるような階段があったり。人と目線、手すりが動いていくシーンの変わり方がすごく好きで、とりわけ木製手すりはたまりません。お気に入りのビルでは手すりをさすりながら登ったり降りたりします(笑)」



クラシックホールの殿堂「東京文化会館」のらせん階段。なまめかしい青と赤、どこまでも続く木製手すりが官能的にさえ思えます

 提供  BMC


そして全国の「日本電信電話公社(電電公社)のビル」を偏愛するのは高岡さん。「NTTではなく、あくまで前身である電電公社の時代に建てられたもの」とマニアックさが際立ちます。

 

「設計士が違っても組織のテイストがありながら、同時に挑戦的なことをしているんです」



高岡さんお気に入りのひとつ「NTTテレパーク堂島」。ビル全体をマス目に切ったように整然と並ぶガラスの壁が威風堂々とした印象

 提供  BMC


そして岩田さんは「街中を自転車で走っていて、なんとなく嬉しい気分になると、やっぱり好みのビルがある」と、もはやいいビル界の申し子の域?



岩田さんが10年間変わらず愛する「京阪天満ビル」。ビル壁面のモスグリーンと川の色合いや、右側の背の高い部分の塔屋(一番上の部分)と窓の並び方が「たまらない」のだとか

 提供  BMC



本業はバラバラだけど、趣味でつながり活動は深まる


それぞれに本業を持つBMCの皆さん。結成当初は好みのビルを見つけては写真を見せ合っていたそうですが、そのうち「お花見ツアー」ならぬ「おビル見ツアー」や、各自のイチオシビルを大画面で見る「ビル自慢大会」を開催し、2010年にはリトルプレス「月刊ビル」を発刊することに。

 

2012年にメンバーの愛するビルをまとめた『いいビルの写真集 WEST』、2014年には『いい階段の写真集』(ともにパイ インターナショナル)を出版。



「月刊ビル」バックナンバー。さらにディープなビルにスポットを当てた“特別号”も

 出典  Funmee!!編集部


その後も刊行し続けている「月刊ビル」。“月刊”と冠しているけれど、最新刊の7号は前号から3年の時を経て2017年の7月発行されたというおおらかさ。だからこそ、好きなものを好きなままでいられるのだと妙に納得したのでした。   



「月刊ビル」の表紙は、号数を表す数字の写真。毎号、ビルのフロア数を示すデザインを探すそうですが、1950〜1970年代は低層ビルが主流なため、最新号の「7」を探すのに苦労した

 出典  Funmee!!編集部


■プロフィール

BMC(ビルマニアカフェ)

1950〜1970年代に建てられたビルの技術やオーナーのこだわり、時代背景に魅了された5人組集団。ビルを使ったイベントや、不定期で発行するリトルプレス「月刊ビル」、書籍『いいビルの写真集 WEST』、『いい階段の写真集』(ともにパイインターナショナル)を世に送り出し、着々とビル好きを増やしている。また近著に『喫茶とインテリア WEST』(大福書林)もある。

 

 

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文:堤 律子(Ritsuko Tsutsumi)

写真:津久井珠美(Tamami Tsukui)、西岡 潔(Kiyoshi Nishioka)



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Funmee!!編集部

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