【パリッコの「カレー再入門」】第1回:たっぷりの玉ネギとスパイスがいざなう悟りの境地。新宿「草枕」

パリッコの「カレー道、再入門」、はじめます。

はじめまして。
普段は主に大衆酒場専門のライターをやっている、パリッコと申します。

僕は、「一番好きな食べ物は何?」と人に聞かれたら、「煮込み」でも「焼鳥」でもなく、「カレー!」と即答します。お酒のつまみじゃなくて面目ないんですが、カレーって問答無用でおいしいじゃないですか。

特に好きなのが、喫茶店や定食屋などで出てくるような、昔ながらのルーもったりタイプ。

とはいえ強いこだわりなどはなく、出先でお昼を食べるようなことがあれば、適当にそういったカレーがありそうなお店に入り、「あ〜おいしかった!」なんてヘラヘラ喜んでいる程度。

だけど先日、ふと思いました。

「俺、こんなに大好きなカレーのこと、何も知らないな……」って。

そもそもカレーの本場ってインドのはずなのに、インドカレーと真面目に向き合ったこともないし、「カレーの名店」と呼ばれるようなお店も日本全国にたくさんあるのに、ほとんど行ったことがありません。
本当にカレーが好きならカレーやスパイスについて、もっとよく知っておくべきなのでは!?

というわけで、あらためて「カレー道」に入門しなおし、ジャンルを問わず幅広く、カレーやスパイスの世界の深淵を探っていこうと思います。

題して、パリッコの「カレー道、再入門」!
よろしくお付き合いくださいませ。

カレー通のなかで話題の「curry 草枕」は、新宿の隠れたオアシス

さて、記念すべき第1回目に入門させてもらうのは、新宿にある「curry 草枕」というカレー屋さんです。

以前にカレー通の友人たちが「あそこはうまいよね〜」なんて話していて、気になっていたお店。
この連載の内容が決まった瞬間、真っ先に思い浮かび、お願いして無事取材させてもらえることになりました。
今日は一体どんなカレーと出会えるんでしょうか!?
あ〜ワクワクするな〜。

と、やってきたのは新宿駅から徒歩数分の雑居ビル。
ちょっとわかりにくい位置にある細い階段を上って、2階にたどり着き、ドアを開けると……

急におしゃれな空間!

 Funmee!!編集部

外観からは想像できないほど広々としており、その上ゆったりと席が配置してあって、とても心穏やかに食事ができそうな店内です。

どこもかしこもピカピカ

 Funmee!!編集部

 Funmee!!編集部

内装の多くの部分をDIYで作り上げられたそうで、洗練されているんだけど温かみもある雰囲気が心地良いです。

手作りのランプ

 Funmee!!編集部

なんと掘りごたつ席まで自作!

 Funmee!!編集部

壁にはヨガのポーズ集

 Funmee!!編集部

味のある絵だな〜。
こういうのって、ついつい見入っちゃいますよね。

そしてそして、店内には、一気に脳がカレーモードに持っていかれるような、焦燥感にすらかられるような、たまらないスパイスの香りが充満しています。

と、とにかくカレーを頂きましょう!

店長さん、よろしくお願いします!

 Funmee!!編集部

「は〜い」

というわけで、各席に置かれた、

フリーの福神漬けと辛味スパイス

 Funmee!!編集部

を眺めながら待つこと数分。
いよいよ待ちに待った、草枕さんのカレーとご対面です!

優しくてスパイシーな極上カレーが、今ここに。

なすチキン(850円)

 Funmee!!編集部

お店でも一番人気の「なすチキン」カレー。
ものすごく! かぐわしい!

高貴な存在感をまとったその姿を前に姿勢を正し、まずはルーを一口。

ん? やっぱりいつものカレーとは全然違うぞ。
スプーンほんのひとすくい分の味とは思えないほど、豊かで複雑なスパイスの風味を感じます。
「焙煎」という言葉を連想させるような若干の苦みもあり、優しい甘味にも溢れています。
うんうん、おいしい。

食べ進むほどに絶妙なスパイスの風味がクセになり、一口ごとにどんどん好きになっていく!
半分くらい食べた頃には、妙にハイというか、明らかに自分の中の新しい扉が開けたような感覚になってきました。

なにこれ……悟り?

ホロホロのチキン

 Funmee!!編集部

おっと、夢中になりすぎてまだ具に手をつけてませんでした。
ゴロッと豪快に入った鶏肉を頂いてみると、これが極限まで柔らかく煮込まれており、まさにスパイスに包まれた幸せの塊!
たまりません。

そして人気のトッピングである、素揚げしたナス。
これがまたすごい!
油をまとったナスの「君、そんなにポテンシャルあったっけ?」っていう旨味が、カレーにものすごいコクをプラスしています。

あーダメだ!
スプーンを口に運ぶ手が止まらない!

取材なんだしもっと味わって食べればいいものを、あっという間に完食してしまいました。

店長さん、このカレー……

 Funmee!!編集部
「う、うまーーーーーい!!!!!」

運動不足でなまりきった体が、普段ならありえないアグレッシブなポーズをとってしまうほどにうまいです。
こ、これがスパイスカレーの世界か……。

海老とプチトマト(950円)

 Funmee!!編集部

Funmee!! スタッフさんとシェアしてもう1皿。
大ぶりのエビがゴロゴロと入った贅沢なカレーです。

エビの旨味、それからプチトマトの甘味と酸味も加わって、これまた絶品!

プリプリのエビがたっぷり堪能できる〜

 Funmee!!編集部

店長さん、このカレーも……

 Funmee!!編集部
「う、うまーーーーーい!!!!!」

カレーと離れてみて、気づいた。店長の馬屋原さんが思うスパイスのおもしろさ

ここからは、実際に店長の馬屋原さんにお話を聞いてみましょう。おいしいスパイスカレーの秘密を暴いてやるぞ~!

よろしくお願いします!

 Funmee!!編集部
パリッコ「さっそくですが、このカレーはどのように生まれたのでしょうか?」

馬屋原さん「大学時代にちょうど“スープカレー”がブームになる少し前で、個性的なお店がどんどん増えだした時期でした。そこでいろいろと食べ歩いてみて『これはすごい!』と。そこで大学のカレー部に入り、寮でずっと研究していたんです」

パリッコ「そんな部があったんですね!卒業してすぐにこのお店を?」

馬屋原さん「一度は就職して大阪で働いていたのですが、ある日、大学時代の後輩から久しぶりに電話がかかってきて、『実は両親が大阪でスープカレー屋を開くことになったので、一度みにきてもらえませんか?』と頼まれてたんです。そこで少し相談に乗っていたら、その後、お店はすごく評判になって、楽しそうに働かれている親御さんを見ていたら、『やっぱりこっちの方がいい!』と思ってしまって」

パリッコ「それでは、草枕のカレーの具体的な特徴を伺ってもいいですか?」

馬屋原さん「カレーって、まずベースを何で作るかが重要なんです。うちは玉ネギ。1皿あたり丸々1個分すりおろして、時間をかけて熱して旨味を引き出しています。札幌にも一軒、玉ネギがベースのスープカレーを出しているお店があって、すごく好きだったんですよね。それがイメージの原点になっているかもしれません」

パリッコ「そのベースに、独自に調合したスパイスで味付けするわけですね。」

馬屋原さん「はい。現在は試行錯誤してたどり着いた15種類のスパイスを使っています。同じスパイスでも、時期や仕入れ先によって風味や香りの強さに違いがあったりするので、微調整しながら。学生の頃から知らない土地に行くのが好きで、中東、インド、アジア各国など、いろいろと旅して回っていました。そうすると否が応でも、その土地ならではのものを食べることになる。少し移動するだけでもスパイスの使い方が段階的に変わっていくのもおもしろくて、その体験はすごく勉強になりましたね!」

パリッコ「スパイスの組み合わせってどのように決めていくのでしょうか?」

馬屋原さん「基本的には、これまでに食べてきた中で完成した理想のカレー像があるので、そこを目指すという作り方です。スパイス選びや配合はやはり、経験によるところが大きいですね。スパイスって数え切れないほどの種類があって、それらを自由にかけあわせられるので、天文学的な組み合わせになる。そこがスパイスカレーの大変さでもあり、おもしろさでもあるんです」

 Funmee!!編集部
パリッコ「では、草枕のカレーで特に決め手になっているスパイスってありますか?」

馬屋原さん「甘味を出す役割のある『クローブ』は他のお店よりもかなり多く使っていると思います。それによって他のスパイスの香りを立たせたり、キレを出したり。」

パリッコ「お米がすごく美味しかったのも印象的でしたが」

馬屋原さん「これも大学時代に寮の先輩だった方が北海道で減農薬栽培している『大地の星』というお米を使っています。ちょっと硬めの食感がうちのカレーにすごく合うんですよね」

パリッコ「それでは最後に、ずばり、馬屋原さんが考える『スパイスカレーの魅力』とはなんでしょう?」

馬屋原さん「スパイスカレーってお店によって本当に千差万別なんです。作り方に定石はないし、どんな食材でも取り込んでしまうから、ものすごく幅も広い。その中で自分の好みの味を見つける旅の楽しさを知ってしまうと、抜け出せなくなってしまいますね」

パリッコ「なるほど! スパイスカレーにはロマンがあるんだな~」

馬屋原さん、貴重なお話をどうもありがとうございました!

草枕では、辛さもお好みで変更可能なので、ぜひお店に行って、自分だけの味を探してみてください!

今日は一歩、悟りに近づけた気がする

 Funmee!!編集部
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Funmee!!ライター
パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他。雑誌「酒場人」監修。
Twitter:paricco
HP:http://www.lbt-web.com/paricco/

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