【僕のサン=サーンス】#01 いい歳した大人の趣味始め 名曲『白鳥』をチェロで弾けるように…なる!


趣味は遠い日の花火じゃない! いつの日かの憧れを、いまモノにできるのがオトナの特権なのです。Funmee!!が、この夏に新連載(連載企画ですよ!)としてお送りする“やりたかったことを始める企画”第1弾は、「チェロが弾けるようになりたい!」。大のオトナが始めた汗と涙と鼻水の記録を、展開していきます!

 


130年後にも響き渡るサン=サーンスの名曲なのだ


『白鳥』なのである。いわゆるクラシック音楽におけるチェロの名曲なのである。『白鳥の湖』じゃないのである。あちらを作曲したのはチャイコフスキー。こちらを創作したのはフランス人のカミーユ・サン=サーンス。

 

『白鳥』とは、1886年に初演された『動物の謝肉祭』という14曲からなる組曲の第13番目に位置付けられた、チェロの独奏曲だ。

 


ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による『動物の謝肉祭』CD。例によってアマゾンで調達

 出典  Funmee!!編集部


……などと聞かされても「ふ~ん」だろう。けれど、多くの人の記憶に『白鳥』の調べは刻み込まれているはずだ。なぜなら、小学校の給食の時間や下校時、あるいは図書館の閉館のお知らせ。はたまたサウナで聞いたという証言者もいるほど各方面で多用されているから(できたらどこかで検索してみてください。「ほぅ」となるはずです)。

 

耳に馴染みやすいメロディとおだやかな弦の響き。言われてみれば、湖面に浮かぶ白鳥のイメージそのものの楽曲だ。約3分の短さもいい。



クラシックに触れる機会など皆無だったのに……


その『白鳥』を弾きたいのである。もちろんチェロで。なぜか?

 

先に断っておくが、ミッド昭和に生まれて現在に至るまで借家住まいの長男坊がクラシックに触れる機会はほぼ皆無だった。僕が聞いて育ったのは、昭和を代表する歌謡曲と、現在J-POPと呼ばれるジャンルの源泉になったフォーク~ニューミュージック。それから洋楽を少々。



チェロの奏法に革命を起こしたといわれる大家、カザルスを始め、名だたるチェリストは皆『白鳥』を演奏する、みたいだ。それくらい有名で大事な曲、らしい。

 出典  Funmee!!編集部


そういうありきたりの音楽経験の中で、これまた一般的青少年の通過儀礼的にギターを始めた。初のアルバイトで自分のアコースティックギターを買ったのは高校1年の夏休み明け。しつこい性格なので、日常的にギターを弾く習慣は今も続いている。そのあたりの経緯は、2004年に出版された『僕のマーチン君』(枻出版社/枻文庫)にすべて著してある。



それでも『白鳥』と出会っていた40年前の記憶


とまぁ、さり気なく宣伝など織り交ぜられるいやらしい大人になった今、なぜ『白鳥』なのか? たったひとつだけ、動機に紐づきそうな事実がある。僕は『白鳥』を知っていたのだ。

 

さだまさしが1977年に発売した『風見鶏』というアルバムのB面の1曲目に入っていた『セロ弾きのゴーシュ』。宮沢賢治の小説と同題ながら歌との関連性はないのだが、1番の歌詞の中に「ひとつ覚えのサン=サーンス」という一節が出てくる。そしてまたこの曲のイントロや間奏で『白鳥』を引用したことを、さださん自身がライナーノートに記していた。それでもやっぱり当時の僕には「ふ~ん」だった。曲自体は15歳になるハナタレ小僧にも響いたが、それが遺伝子に刻み込まれ40年後に発露したなら、いくらか話はわかりやすくなると思うけど。



クローゼットの中の段ボール箱から引っ張り出しました。僕に『白鳥』を教えてくれた40年前のレコード。

 出典  Funmee!!編集部

果たして醜いまま大人になったアヒルの子は『白鳥』に近づけるのだろうか?


ただ何となく、なのである。上手に弾けたら人様の前で披露したいという意欲もない。本当にただ何となく『白鳥』を弾けたら楽しいだろうと思ったのだ。それは説明がつかない、または説明が不要な衝動そのものと言っていい。

 

少しだけ真面目に語れば、僕は音楽に憧れている。かなり早い時点で自分には音楽的素養の欠片すら芽吹かないと悟ったときから永遠の片思いと諦め、だから今もギターを弾くのは未練という他にないかもしれないけれど、生活の中に音楽があること、いや音楽らしきものを体感できる習慣を持つ素晴らしさだけは知っているつもりだ。あるいは、最初はどんなに難しく感じられた曲も、情熱と時間を費やせば距離を詰められることをギターで教わった。その教訓は我が人生の至る場面で恩恵をもたらしてくれた。

 

そんなあるがままの衝動に乗っかるチャンスがこうして訪れた。では、最初に何をすべきか? チェロを手に入れるしかないだろ! 

そんなわけで、醜いまま大人になったアヒルの子が『白鳥』の完奏を目指す連載が始まります。弾けるようになったら、恥ずかしながらあなただけに聞かせます。



次回、いよいよ楽器店の弦楽器フロアへ。ついに買うのか? 買っちゃうのか?

 出典  Funmee!!編集部




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文:田村十七男(Tonao Tamura)

写真:小澤義人(Yoshihito Ozawa)、田村十七男(Tonao Tamura)

制作協力:ヤマハミュージックリテイリング ヤマハ銀座店、ユニバーサル ミュージック(『サン=サーンス:組曲《動物の謝肉祭》、プロコフィエ:《ピーターと狼》』ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団)、ワーナーミュージック・ジャパン(『サン=サーンス:白鳥(チェロ名作集)』ジャクリーヌ・デュ・プレ、『風見鶏』さだまさし)、ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル(『パブロ・カザルスの芸術』パブロ・カザルス)、キングレコード(『白鳥~チェロ・アンコール~』ミクローシュ・ペレーニ(チェロ)、ゾルターン・コチシュ(ピアノ))



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Funmee!!編集部

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