【僕のサン=サーンス】#08 チェロ奏者・アキコ先生の日常(前編)「私、職人に近いかも」


いつの日かの憧れに本気になるオトナの興味が、横に広がった……?

 

名曲『白鳥』を弾きたい一心で苦悶する連載企画「僕のサン=サーンス」第8話は、わが師の山崎明子先生の日常に密着。チェロ奏者というお仕事の実態に迫ります。



演奏のお仕事は多い月で20本!?


トナオ(以下ト):いきなりどストレートな質問ですけど、アキコ先生ってチェロだけで生活できているんですか?

 

アキコ先生(以下ア):ええまぁ、おかげ様でなんとか食べています。

 

ト:演奏会とか、チェロ教室の講師とかで? それってどれくらいの頻度なんですか?

 

ア:お仕事としての演奏会は、パーティや結婚式、ロビーコンサートなど様々ですが、多い月で20本くらいかな。1日に2、3本掛け持ちするときもあります。



ト「演奏会のお仕事が多い月っていつですか?」 ア「10月から12月ですね。夏場はぐっと減ります」

 提供  山崎明子さん


ト:月に20本! どういう経路で依頼が舞い込むんですか?

 

ア:登録した生演奏の派遣事務所からという場合もあるし、知り合いの奏者から連絡を受けることもあります。9月2日の『ふくしま逢瀬ワイナリーマルシェ』というイベントは、一緒に演奏したバイオリニストのお声がけです。



ア「ふくしま逢瀬ワイナリーマルシェはゆったりした感じで、行ってから1回20分の演奏を何回やるか決めました」 ト「それでも対応できちゃうのがスゴいや。自分だったらドキドキだな」

 提供  山崎明子さん



イベントの現場では、楽譜さえあればどんな曲も


ト:どんな曲を演奏するんですか?

 

ア:イベントだといろんな方がいらっしゃるので、その日の雰囲気に合わせて映画音楽やポピュラーソングを。子どもが多ければ『アナ雪』を弾いたり。

 

ト:事前練習は?

 

ア:イベントではしませんね。ギターもコードがわかれば弾けちゃうでしょ。それと同じだと思う。

 

ト:コードがわかったって曲を知らなきゃ無理。先生は曲を知らなくても弾けちゃうの?

 

ア:私たちは楽譜さえあれば、どういう曲かわかるので。

 

ト:そこがクラシックの人のスゴいところだなあ。現場でどうにでもできる点で職人みたい。

 

ア:そうそう。私の場合は職人という表現がいちばん近いかもしれませんね。



ト「チェロを持って電車に乗るのって大変?」 ア「新幹線だと荷物棚にチェロケースがぴったりハマるので安心。『あずさ』や『ロマンスカー』は棚に載らないので、空いた席に置きます。飛行機だと完全に一席取らないとダメですね」 ト「チェロの運搬は一名様扱いなんだ……」

 提供  山崎明子さん

ア「これ、イベントが終わって東京駅に着いたところです」 ト「チェロケースを抱えた人って、何か気になるんですよね」

 提供  山崎明子さん



お仕事は先輩や知人の紹介で


ト:チェロを教える仕事も多いんでしょ?

 

ア:ベーシックなのは、個人宅に伺うレッスンですね。それと楽器屋さんが主催しているお教室。趣がちょっと違うのは、高校の音楽の先生かな。

 

ト:高校でも教えるんですか?



ト「高校の音楽の先生もやるとは!」 ア「大学卒業直後からお世話になっているお仕事です」

 出典  Funmee!!編集部


ア:ええ。私が通っている高校の教育方針はちょっとユニークで、総合選択科目が4系列あるんです。その内のひとつが芸術表現系列で、早い話が音楽でも単位が取れちゃうんです。その授業に、市民講師と呼ばれる私たちが参加しています。このお仕事もバイオリンの先輩に紹介してもらいました。もう10年以上になりますね。

 

ト:そういう高校に行きたかったなあ。チェロで卒業できるなんてなあ。

 

ア:だいぶ解釈が違いますけどね。今回の授業は、9月中旬の文化祭に向けたアンサンブルの練習でした。



ア「弾き難そうな個所があればどんどん直しちゃいます」 ト「『白鳥』もそうしてほしい」 ア「それはダメです!」

 出典  Funmee!!編集部



音楽に興味を持つきっかけづくりができれば


ト:高校生を教えるのって、どうですか?

 

ア:まず飲み込みが速いですね。曲のイメージを教えるとすぐに理解できちゃう。それにこの学校の子はみんな素直なので、教えていて楽しいです。

 

ト:僕のチェロにも巻いてくれたテープが活躍していますね。

 

ア:基礎も大事だけど、やっぱり早く弾けたほうが楽しいじゃないですか。演奏し難い個所があれば楽譜自体を直しちゃうし。私の役目は、チェロを通じて音楽に興味を持ってもらうことだと思うんです。特に学校の授業だと楽器に触れられる時間も限られるので、きっかけづくりができたらそれでいいかなあと。



ト「出た、テープ! 僕のチェロより本数が多い。ムフフ」 ア「……。」

 出典  Funmee!!編集部


ト:けれど、けっこう弾けてる生徒が多いですよ。

 

ア:さっきの3年生は今年の春からチェロを弾き始めたんです。だからトナオさんも大丈夫!

 

ト:高校生のような飲み込みの速さがあるかどうか……。

 

ア:次回は音楽教室に行きましょう。そこのおじいちゃんたち、いろんな意味でスゴいですよ!



次回は楽器店主催の音楽教室へ。82歳の生徒さん登場!!

 出典  Funmee!!編集部




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文:田村十七男(Tonao Tamura)

写真:藤井孝太郎(Kotaro Fujii)

制作協力:ふくしま逢瀬ワイナリーマルシェ、東京都立若葉総合高等学校



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Funmee!!編集部

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