盆栽を身近に、モダンに。新たな道を切り拓く盆栽作家・小林健二さん


2002年に『品品(しなじな)』という会社を起こし、盆栽の世界に新たな風を吹き込んだ小林健二さん。


「高齢者の趣味」という盆栽のイメージを覆し、スタイリッシュな新ジャンル「景色盆栽」を普及させることで、多くの人々にその魅力を伝えています。盆栽に惚れ抜いた小林さんの半生を伺いました。



植物を深く知るため、あえてアメリカで盆栽を学ぶ

 出典  Funmee!!編集部


―― 小林さんが盆栽に興味を持ったのはいつごろでしょうか。


もともとは、ランドスケープアーキテクトといって、造園の設計コンサルをやっていたんです。そこで空間構成や緑のあり方を勉強していたのですが、気づくと、植物のプロと言いながらも使っているのはペンと定規で、現場で職人さんと話してもついていけない部分があって。職人さんたちは経験則があるから、「現実的にこんな木は植えられないよ」とか、そういうことがわかっている。そこで、師匠から「植物を知るために盆栽をやってみろ」と言われ、盆栽を学ぶためにアメリカへ行きました。


 

―― アメリカですか? 素人感覚だと、盆栽なら日本で学んだほうがいいのではないかと思ってしまいます。お師匠さんの狙いはどのへんにあったのですか。


当時の盆栽は、習うとなると月収3万円で丁稚奉公にならないといけないような世界でした。高尚な方たちの文化サークルとしては成立していますけど、若い人間がそこに飛び込んでも確実に気後れしてしまいます。なので、アメリカにいる日本人の古川昌弘さんという先生に学んだらいいのではないか、とアドバイスされました。

 


―― 古川先生はアメリカで盆栽を広めるために活動されていたのですか。


そうです。アメリカであえてわかりやすく盆栽を教えていました。古川先生は特別な手法を持っていて、その手法がこのままアメリカで終わってしまうのはもったいないということで、それを継承するために師事しました。それに、アメリカで学んだほうが、固定観念から離れて自由に盆栽をとらえられるのではないかという思いもありました。



アメリカでは盆栽はセレブの遊びだった!

 出典  Funmee!!編集部


―― 古川先生にしかできない特別な手法とは、どんなものですか。


「栽景」といって、一般の方でも盆栽を楽しめるように、という考え方を基本とする手法です。安価で小さな木でも、盆栽の手法を用いることで雰囲気が出ます。うちで売っている作品なら、1~2万円くらいのものでスタートしてもらって、育てていくうちに木が立派になっていく過程を楽しみましょう、と。


 

―― 一般的な盆栽のイメージと違いますね。


そうなんです。23歳で初めて日本の盆栽園に行ったときは、そこにいる人がおじいさんばかりで、盆栽を囲んでマニアックな話で盛り上がっているわけです。若造の僕が行ったところで相手にもしてくれない(笑)。でも、外国に行くと若い人たちが盆栽を楽しんでいる。僕はオレゴン州のポートランドに2年いたんですけど、そこでは盆栽はセレブの遊びでした。

文献を紐解くと、日本でも明治時代の頃は若者たちがモテるための粋な趣味の一つとして盆栽に親しんでいたようですし、こうやって気軽に楽しんでもいいはずだ、と思いましたね。

 


―― そうやって古川先生から学ぶことによって、盆栽を好きになっていったのですか。


じつは、古川先生に付いているときは、盆栽から気持ちがどんどん離れていったんです。古川先生は、盆栽をわかりやすく教えつつも、究極的には高尚な世界へつなげようとしていましたから。


でも、同世代の古川先生の生徒さんたちとお話をする中で、盆栽をモダンにしたらどうだろうという発想が浮かんで。たとえば、盆栽を可愛らしくしてしまおう、とか。盆栽イコール高尚なものというところから外れて、最低限のルールは守りつつ、もう少し気軽に楽しもうと。観葉植物といわれるものを盆栽仕立てにしたり、さまざまなアプローチを試しました。そこからですね、夢中になっていったのは。



今までのイメージを覆す「景色盆栽」という表現方法

 出典  Funmee!!編集部


―― そして、帰国されて数年後に『品品』という会社を立ち上げて。


会社の名前は、「品(ひん)」と「品(しな)」からきていまして、品のある品物を提案していく、という意味を込めています。仕事の内容としては、盆栽の卸し、小売り、教室、庭づくりの4つが大きな柱で、百貨店で盆栽の展覧会なども行っています。

 


―― 「景色盆栽」という言葉は、独立したときから使い始めたのでしょうか。


そうです。日本の四季をモダンなフォルムで表現したものを「景色盆栽」と呼んでいます。今までのイメージを覆すような新しい形で盆栽を表現できないものかと考え、その経緯で生まれた言葉です。


盆栽は、一度深く知るとその素晴らしさがじつによくわかるんです。立派なものを見ると、芸術作品を鑑賞しているような気持ちになる。でもそれは盆栽の一部だけで、手のひらに載る豆盆栽も同じ盆栽です。植物を愛で、手間暇をかけて育てるのであれば、盆栽の範疇に含まれるのかな、と思いますね。



 出典  Funmee!!編集部


―― 小林さんは盆栽をどのように定義されていますか。


簡単には説明しづらいのですが、盆栽には数学的なところがあって、生け花のように感覚的ではありません。僕は生け花も習ったことがありますが、一週間前に習ったことと同じことをしたら先生に怒られました(笑)。感覚や雰囲気を重視するアーティストのような資質が求められるということです。でも、盆栽は確固たるベースがないとできません。たとえば、植物と鉢の大きさの比率は7:3のバランスが良いとか、理論がしっかりしている。基礎をきちんと学べば誰でもできるんです。

 


―― 確かに、「自由にやってください」と放り出されるより、ルールがあった方がとっつきやすそうですね。


スポーツにしろ何にしろ、ルールや制約の中にこそ面白さがあると思います。付け加えると、心に余裕を持ち、時間をかけて植物と対峙するのも盆栽の醍醐味です。一度枝を切ろうとしたところで手を止めて、お茶を飲んで、寝て、起きて、「さあ、どこを切ろうかな」と悩むこともできます(笑)。



 出典  Funmee!!編集部


■プロフィール

小林健二さん

長野県小諸市出身。造園会社などでの勤務を経て、2002年に盆栽ショップ『品品』をオープン。植物によって人々の生活を豊かにすることをテーマに、モダンでシンプルな「景色盆栽」というスタイルを確立。盆栽作家として精力的に活動している。著書に、『プチ盆栽 おしゃれでかわいい緑のインテリア―景色盆栽入門』(新星出版社)、『はじめての景色盆栽 景色を鉢の中で表現する発想とコツ』(誠文堂新光社)などがある。

 

品品

東京都世田谷区奥沢2−35−13

TEL: 03-3725-0303

営業:10:00〜19:00

休み:水曜



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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:吉田勉(Tsutomu Yoshida)

写真:山本祐之(Yuji Yamamoto)

 


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Funmee!!編集部

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