【趣味人ジドウシャ部】#08 フォルクスワーゲン・タイプ1“ビートル”(スペック編)


クルマの新旧や機能だけでなく、趣味性の高いクルマ、さまざまな趣味への汎用性が高いクルマを紹介する連載「趣味人ジドウシャ部」。8台目に登場するのは「フォルクスワーゲン・タイプ1“ビートル”」です。


1938年から2003年までの65年にわたって製造され、ドイツの国民車としてだけでなく、世界中の人々に愛用されました。2,000万台を超える累計生産台数は、4輪自動車の最多量産世界記録となっています。スペック編では、そのヒストリーやメカニズムなどについて紹介します。



ポルシェ博士によって設計された革新的な大衆車

セミモノコックの流線型ボディと大きく張り出したフェンダー。クラシカルさとアヴァンギャルドさが同居するデザインです

 出典  Funmee!!編集部


ひと目見ただけで強く印象に残る、丸みを帯びたボディ。「ビートル(カブトムシ)」のニックネームは、まさに言い得て妙。年式やバンパー形状にもよって微妙に異なりますが、サイズは全長4,100mm×全幅1,550mm×全高1,500mm前後。ずんぐりむっくりしたイメージがありますが、旧いクルマらしく、実車を目の前にすると意外にコンパクトでシュッとしています。



アーチを描くボディラインが印象的なスタイリング。後に「ポルシェ・356」も手がけたポルシェ社のデザイナー、エルヴィン・コメンダがデザインしました

 出典  Funmee!!編集部


このクルマの生みの親は、フェルディナント・ポルシェ博士。「20世紀最高の自動車設計者」と称される、ポルシェ社の創業者です。彼はダイムラー社に在籍していた1920年代から小型乗用車開発の構想を持っていましたが、それを実現できずにいました。しかし1933年にヒトラー率いるナチス党が政権を握ったことで状況が変わります。国民車やアウトバーン整備の構想を発表したヒトラーは、ポルシェ博士に国民車の設計を依頼したのです。


そして試作を経て1938年には最終型プロトタイプ「VW38」が完成しましたが、翌年ヒトラーが第二次世界大戦を勃発させたため、市販車の量産は開始目前で中止されてしまいます。結局、終戦年の1945年になってようやくこのクルマは世に出ることができたのです。



「フラット4」と呼ばれる水平対向4気筒空冷OHVエンジン。当初の排気量は約1リッターでしたが、1.1、1.2、1.3、1.5、1.6リッターと拡大されていきました。なおリアエンジンなので、トランクルームはフロントフード内になります

 出典  Funmee!!編集部


車体の中心線上に背骨のように配したバックボーン式フレームとフロアパン(床板)を一体化することで、剛性を確保しつつ低床化。空冷水平対向エンジンを車体後部に設置し、後輪駆動とするRR(リアエンジン・リアドライブ)方式を採用することで広い室内空間を実現しました。プレス鋼板による軽量かつ頑丈な流線型ボディ。サスペンションは、前後とも横置きのトーションバースプリング(ねじり棒バネ)によってアームを吊ることで、左右の車輪を独立して動かせる独立懸架式を採用しています


大人4人が乗れて、乗り心地もよく、時速100kmでの高速巡航も可能。それでいて経済的。その完成度は同年代のクルマに比べ、数十年先を行っていました。



尻下がりのフォルムなので、背の高い人が後席に座ると頭上が少し窮屈ですが、大人4人にとって十分な室内空間が確保されています

 出典  Funmee!!編集部

'70年代アメリカで流行した「キャル・ルック」カスタム

余計なものが何ひとつないスッキリとしたインテリア

 出典  Funmee!!編集部


トップ画像を含むメインの撮影車両は1965年式のビートル。乗り込むと、現代のクルマに比べると非常にスッキリしていて時代を感じさせる造りです。



ダッシュボードまわりも非常にシンプルですが、デザインは洗練されています

 出典  Funmee!!編集部


走り出すと、もちろん音や振動などはそれなりにするのですが、旧いクルマの割には思いの外シャンとしていることに驚かされます。街なかで交通の流れに余裕でついていくことができますし、高速道路でも普通に走れます。



今のクルマに比べればエンジンはとても非力ですが、軽量なボディのためキビキビと走ってくれます

 出典  Funmee!!編集部


「旧車はセカンドカーとして持つ方も多いと思いますが、ビートルは街乗りから遠出までこなせるので、1台でも何とかなっちゃうところがあります」と語る、空冷フォルクスワーゲン専門ショップ「FLAT4(フラット・フォー)」広報の川崎篤さん。ちなみに燃費は極端なパワーアップなどのエンジンチューンをしていなければ、平均でリッターあたり10km程度はいくそうです。


そんなクルマですから、売れないわけはありません。1947年からドイツ国外への輸出が始まり、1949年からアメリカで販売されるようになると、爆発的にヒットしました。このクルマの正式名称は「フォルクスワーゲン・タイプ1」で、“フォルクスワーゲンの市販車1型”といった味も素っ気もない名称なのですが、英語圏で「ビートル」という愛称を与えられて長く愛されました。



ガード付きのデコラティブなダブルバンパーはUS仕様の特徴です

 出典  Funmee!!編集部


特にアメリカはビートルの最大の市場となったのですが、1970年代には西海岸を中心に、若いクルマ好きの間ではビートルをカスタムして乗る文化が生まれました。車高を下げたりアルミホイールを履かせたり、さらにはルーフをチョップしたりしたビートルのカスタムスタイルは「キャル・ルック(California Lookの略)」と呼ばれて大流行したのです。



典型的なキャル・ルックのビートル。フロントがローダウンされ、アルミホイールを装着しています

 提供  FLAT4


1974年にビートルの後継車となるフォルクスワーゲン・ゴルフが登場したこともあって、ドイツ本国での生産は1978年で終了しましたが、その後もビートルはブラジルやメキシコで生産され続けました。1998年にビートルのデザインをモチーフにした「フォルクスワーゲン・ニュー・ビートル」が登場してからも旧ビートルは造られていたのですが、2003年のメキシコ産ビートルの生産中止をもって、ついにその長い歴史の幕を閉じることとなりました。しかし比較的近年まで新車が手に入る状況だっただけに、旧車のわりには今なお数多くのオーナーによって乗り続けられているのです。



撮影車両には、工場オプションのスライディングルーフが備えられています

 出典  Funmee!!編集部




■取材・撮影協力

FLAT4(フラット・フォー)

 

1976年の創業以来、“TOP QUALITY & BEST SERVICE”をコンセプトに、「タイプ1“ビートル”」を中心とする空冷フォルクスワーゲンを取り扱う。本社1階のショールームには極上コンディションの車両が並び、2階には空冷VWに関するさまざまなパーツやグッズが揃う。数多くのヴィンテージビートルのレストアも手がけ、2年に1回、秋にはヴィンテージVWのイベント「クラシシェスVWトレッフェン」も主催。



東京都目黒区鷹番1-1-5

TEL:03-3792-7151

営業時間:9:30〜19:00

休み:日曜・祝日



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文:和田達彦(Tatsuhiko Wada)

写真:銭田豊裕(Toyohiro Zenita)



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Funmee!!編集部

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