ネイチャークラフト作家・長野修平さんが語る、決して「売らない」作品の価値


神奈川県相模原市の自宅兼アトリエで里山暮らしを実践しているネイチャークラフト作家の長野修平さん。彼の作るクラフト作品は、解体された建物などから出る古材や廃材、里山の維持・管理のために間伐された木から生み出されます。

そんな作品に込められた思いや、作ることの楽しさについて、長野さんにお話しいただきました。

里山の木や古材を使った作品には「ストーリー」がある

 出典  Funmee!!編集部


―― アトリエ入り口には多くの古材や廃材、裏山にはたくさんの丸太がありますが、これはクラフト作品の材料になるのですか?


そうです。基本的に材料を買いに行くことはしないで、集めてきた廃材や裏山の間伐材で作品を作ります。思い描いた作品を作り上げるというより、手元にある材料をコーディネートする感覚ですね。


料理で言えば、必要な食材を店で買ってきて料理を作るのではなく、冷蔵庫を開けたときに入っている食材で料理を作るのに似ています。


 出典  Funmee!!編集部


―― 里山に暮らしていると、材料に困ることはなさそうですね。


材料を調達しやすいということもありますが、里山暮らしのいいところは、作品を原料から見られるということです。どのような素性の原料で作られた作品なのかがわかると、ストーリーも見えてくるじゃないですか。


廃材や古材を使うのも同じです。70~80年前に建てられた能楽堂に使われていたヒバ材や、海岸に流れ着いた流木を使った作品には、やはりストーリーがある。


だから、店で材料を買うのは好きではないんです。材料を加工した人の顔すらわからないですからね。



100年は問題なく使える素材「木」の魅力

 出典  Funmee!!編集部


―― しかし古材や廃材の耐久性は、新しい木材に比べるとあまり高くはないのでは?


そう思われがちですが、無垢材は真新しいものよりも200~300年くらい経った古材のほうが、硬くて丈夫だと言われているんです。だから無垢なら古材でも再利用できる。でも合板パネルはダメです。板を張り合わせている接着剤が雨で溶けて、はがれてしまうんです。


裏山に、水を使わず微生物の力で排泄物を分解できるコンポストトイレを作ったのですが、その小屋は屋根とデッキ以外、古材や解体材を使っています。壁には100年以上前の製材クズを使っているんですよ。




 出典  Funmee!!編集部


―― 100年前ですか! そんな古い木材が外壁に使えるんですね。


木は100年ぐらい普通に持つ素材なんです。このイスも、20年以上前に街の公園で拾った木で作ったもの。テーブルは、海岸に流れ着いていた樽底板と三つ又の流木で作っています。無垢材であれば、10年以上野外の庇(※1)の下に置いておいても壊れることはありません。


古い材には魅力があるし、いい材ほど長持ちする。それに古材や廃材で作品を作るのは、曲がっている材をパズルのように組み合わせていくのが楽しかったりするんです。それに廃材についてきた鉄クギだって、曲がっていても十分に使えるんです。



※庇(ひさし)…日除けや雨除け用の小型の屋根


材料の利用価値を次世代に伝える「使える」作品

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―― このほかにも廃材や間伐材など、身のまわりにある材料で作った作品はありますか?


もちろんあります。というより、身のまわりのもので作った作品ばかりです。例えば日常生活で使っている食器やカトラリーなども、ほとんどが竹や間伐材で作ったものです。



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このベンチも裏山のシイの木で作ったものです。材料が生木なので強制的に曲げることができ、独特なデザインにすることができました。時間がたつにつれ乾燥してきてゆがみが出てきますが、それもまた味わい。調整してガタつきなどを直していけばいいんです。



 出典  Funmee!!編集部


これはヒノキの間伐材で作ったランプシェード。木を割って中をくり抜き、シェードにしています。熱を持つ電球だと燃えてしまうからLED専用です。



―― 見れば見るほど素敵な作品ばかりですね。飾るのではなく、実際に使えるというのがとてもいいです。


昔の人はワラを編んで“わらぐつ”を作って使っていましたが、現代で“わらぐつ”など、まず使われることはありません。なので、僕はワラでピクニックバスケットやティーポットカバーを作るなど現代風にアレンジして、今の人にも使ってもらえるようにしています。


作っても実際に使われないと、その材料の利用価値が伝承されていきません。次世代に伝えられるものを作るのが、僕らの義務だと思っています。ですから、みんなに使ってもらえるような、新しい利用法を考えないといけない。


クラフトから教わる生きるための「人間力」とは?

 出典  Funmee!!編集部


―― 長野さんのこのような作品は、どちらかで購入できたりするのですか?


僕は発表したり、売るために物を作ってはいないんです。“ネイチャークラフト作家”なんて呼ばれていますけど、自分から名乗ったことは一度もない。メディアやワークショップで紹介するのに便利だから、誰かが付けたんです(笑)


自分では子育てや食事を作るのと一緒で、ただ必要なものを作っていただけ。それをおもしろがってくれる人がいたので「じゃあ、作り方を教えましょうか?」となり、ノウハウがまとまってくると「ワークショップをやりましょう」となって、今に至ったんです。



―― 現代は使い捨ての社会だから、このようなクラフト作品の作り方を教えてもらうと、物を大切にする気持ちも教えてもらえる気がします。


エコだからという付加価値ではなく、ただ好きだからやってきただけですけどね。捨てる神がいるから、自分は拾う神になろうって(笑)


人間って、何かに頼らないと生きていけない弱さがあると思うんです。でも身近にあるもので必要なものが作れると、仕事がなくなっても生きていける生命力、人間力が備わる気がして、ちょっと自信が湧いてきますね(笑)



雑草だって晩のおかず。ネイチャークラフト作家・長野修平さんが語る、豊かな「里山」の暮らし


■プロフィール

ネイチャークラフト作家・焚き火&野外料理人

長野修平さん

アトリエNATURE WORKSを主宰。捨てられるもの、そこにあるものを暮らしやアウトドアに取り入れた独自のスタイルを表現するネイチャークラフト作家であり、野草を使った料理を得意とする野外料理人。雑誌やWEBメディア、イベントなどでそのスタイルを発信している。著書に『里山ライフのごちそう帖』(実業之日本社)、『東京発スローライフ』(オレンジページ)がある。



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文:牛島義之

写真:後藤 秀二



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Funmee!!編集部

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