掘れば掘るほど奥が深い!ヴィンテージZIPPOの世界
コレクター

掘れば掘るほど奥が深い!ヴィンテージZIPPOの世界


80年以上の歴史を誇るアメリカのオイルライターメーカー『ZIPPO』。


喫煙具としてだけでなく、ヴィンテージZIPPOは世界中でコレクターズアイテムとして人気が確立されています。今回はZIPPOコレクターとして30年、日本でライタークラブ『FEEF』を設立・運営されている渡部達也さんにヴィンテージZIPPO収集の魅力をうかがいました。



偶然出会った普通のZIPPOが、コレクター魂に火をつけた


1932年に創業してから現代まで続くZIPPO社のオイルライターは、純粋なオリジナルプロダクツに加え、企業のアドバタイジングアイテムとして、また軍へ支給される軍事品としてなど、様々なバリエーションが生産され、膨大なデザインのアイテムが存在します。


80年以上の歴史を持つZIPPO社ですが、その歩みが解明され始めたのは’80年代に入ってからの話。しかも、それには日本人コレクターが携わっていたのです。


今回お話しを伺った渡部さんは、学生の頃にZIPPOと出会い、そこから古い雑誌広告などの資料研究と、脚を使った収集を重ねることで、世界でも有数のZIPPOの歴史を知る「生き字引的なコレクター」となった一人です。



30年に渡ってZIPPOを収集し続け、ほぼ全てのモデルを網羅したという渡部さん
 出典  Funmee!!編集部
30年に渡ってZIPPOを収集し続け、ほぼ全てのモデルを網羅したという渡部さん


 ―― まずZIPPOにはまったきっかけを教えてください。


大学生の頃、アメリカンカルチャーが好きでアメリカ旅行に行くことが多かったのですが、ある時たまたまお金を崩したくておみやげ屋さんでZIPPOを買ったんです。それを持っていたら手の収まりが良いし、開け閉めしていたら気に入ってしまって、それが僕のコレクター人生のスタートになったんです。だから最初は30年間も集め続けてこんな量になるとは思ってもなかったですね。



渡部さんのコレクションの一部。オリジナルが生産された初年度1933年製など、かなりのレアモデルも見ることができる
 出典  Funmee!!編集部
渡部さんのコレクションの一部。オリジナルが生産された初年度1933年製など、かなりのレアモデルも見ることができる

古い資料を読み漁り、ZIPPO社の歴史を独自で解明!


―― ZIPPO社の歴史を解明するのに夢中になっていたと聞きましたが、どうやって昔の歴史を調べたのでしょうか?


当時(’80年代後期)は少しずつ日本でもZIPPOの人気が出てきていて、雑誌などでも取り上げられ始めていた頃だったので、それらを読むのはもちろんのこと、コレクター間での情報交換や、神田神保町の古書店に行って『LIFE』や『READERS DIGEST』といったアメリカの旧い雑誌を買い漁り、広告のスクラップブックを作ったりしながら、あらゆる年代のモデル系譜を調べていました。そういった中で僕らのようなオタクたちが色々な謎解きを進め、それまでに判らなかった事実が判明したりすることもありました。それらの新事実を元に、ZIPPO社のプレスリリースが書き直されたこともあるんですよ。

 

 

ZIPPOライターと共に広告資料やパッケージなども幅広くも収集している
 出典  Funmee!!編集部
ZIPPOライターと共に広告資料やパッケージなども幅広くも収集している

シリーズをコンプリートする満足感がヤミツキに!


—— 元々収集癖があったのですか?


思い返してみれば、そんなにディープなものではなかったですが、子供の頃から切手や野球カードを集めるのは好きでしたね。コレクター気質っていうのはある人にはあるみたいで、例えば男の道具であれば、ブーツやレザージャケットを集める人もいるじゃないですか。


僕はそれがオイルライターだったんです。旧いZIPPOのデザインがカッコイイことや、時代背景に基づいて年代によって異なるディテールなどに気づいていくうちにどんどん面白くなってしまったんです。それから、これがあったらこれも必要だ! って感じで、シリーズものだったり、その流れを汲んだモデルだったりをコンプリートしなければ気が済まなくなってしまったんでしょうね。そんなところから拍車がかかった感じですかね。



渡部さんのお気に入り普段使い用ZIPPOである1954年製(左)と1955年製(右)。年代によって刻印が異なるので、製造年判別のヒントになる
 出典  Funmee!!編集部
渡部さんのお気に入り普段使い用ZIPPOである1954年製(左)と1955年製(右)。年代によって刻印が異なるので、製造年判別のヒントになる


—— どうやってコレクションを掘っていったのですか?


僕はまず最初に買ったモノが200番や250番、350番と呼ばれる定番モデルだったので、それらの年式違いを集めるところからスタートしました。そのうち、生まれ年の個体を探すようになったり、絵柄でシリーズをコンプリートするようになっていくうちに、いつの間にかあらゆるモデルを集めるようになってしまいましたね。


コレクションというのは、関連するあらゆるテーマを幅広く広げていく横軸と、一つのテーマをとことん深く掘り下げていく縦軸があると思うんですが、僕の場合はその両方にハマってしまい、全部網羅したくなってしまったんです。本当にバカみたいですよね(笑)。


ZIPPOに関しては、研究も収集もほぼ網羅できたと思っていますが、実はまだ入手していないアイテムもいくつかあるんです。でも、それらが世界のどこにあって、誰が持っているかは、おおよそ把握しています(笑)。


ZIPPOには見慣れたポケットサイズのものだけでなく、テーブルモデルも存在する
 出典  Funmee!!編集部
ZIPPOには見慣れたポケットサイズのものだけでなく、テーブルモデルも存在する


—— ヴィンテージのZIPPOは何種類くらいあるんですか?


ZIPPOは構造がすごくシンプルなライターで、長年に渡って基本的な作りは変わっていないので、形のバリエーションというのはそんなに多くはないんですよ。装飾・デザインについては、企業アドバタイジング、軍モノ、定番シリーズなども合わせたら本当に無数にありますね。

 

 

—— 渡部さんが好むヴィンテージと現行のモデルはどんな違いがあるのでしょうか?


今の個体は製造ラインのオートメーション化が非常に進んでいるので、品質は均一化されているんですが、昔の個体というのは、オートメーションの導入が始まった頃のモデルであっても、最終的な仕上げや調整段階の部分にはきちんと人の手が入っていました。なので、開閉や着火がとてもスムースに感じますね。クルマのエンジンに例えるなら、量産エンジンとチューナーが手を入れたエンジンみたいな違いですかね。


現行モデルのケース部分は全て真鍮で出来ているのですが、年代によっては鉄や銅といった異なるマテリアルで製造されたモデルが存在していたり、戦時中には軍需物資として軍に供給された特殊な仕上げのモデルが存在していたり、時代ごとにその社会背景が感じられるところが面白いですね。また、創業ごく初期の’30年代のモデルたちは全てがハンドメイドで、独特の渋く温かい風合いがなんともたまらないんですよね。


’30-’40年代のモデルには薄く加工した金属のプレートをライターに貼り、エナメル塗料を流し込んだメタリケという装飾手法が用いられた。メタリケはコレクターズアイテムとして人気が高い
 出典  Funmee!!編集部
’30-’40年代のモデルには薄く加工した金属のプレートをライターに貼り、エナメル塗料を流し込んだメタリケという装飾手法が用いられた。メタリケはコレクターズアイテムとして人気が高い


―― 渡部さんのコレクションはどれも状態が良さそうですが、どのような手入れをしているのですか?


コレクターの中には「as is」でなければならない! と言って、使い込んである雰囲気やパティーナをそのまま大事に残したいという人もいれば、徹底的にレストアして(中には改造もして)愉しむという人もいます。僕はその両方とも賛成で、要はその人が満足できればそれで良いのでないかと。個人的には、デッドストックのものについては使用せずにそのまま保存しますし、使い込んであるものについては必要に応じて修理します。やはり道具である以上は使ってなんぼですから、ここにあるものは全て使える状態になっています。それも自分のこだわりといえばこだわりですかね。

 


—— これだけの数をどうやって集めたのですか?


僕はebayをはじめとしたネットオークションの恩恵を一番最初に受けた世代なので、1998年以降はebayで入手したものが一番多いですね。それ以前はFAXを中心として国内外のコレクターやディーラー達とやりとりしていました。でもFAXだと写真が潰れてしまってライターの状態がよくわからなくなっちゃうんですよ。だから最終的には紙焼きの写真を手紙で送ってもらって交渉したりしてましたね。PCメールがある今の時代では信じられませんが(笑)。


ZIPPOコレクターのこれから


—— 日本でライターのコレクタークラブを立ち上げたそうですが、どんな活動をされているのでしょうか?



『FEEF(FAR EAST ETARNAL FIRE)』という名前のクラブを5年前に立ち上げました。そこでは年に1回コンベンションを開催して、コレクター同士の情報交換はもちろん、売買や交換もできるようになっています。またクラブメンバーであるコレクターに万が一の事態などが起きた場合に、コレクションをフェアにトレードしてご家族に還元できるようなシステムや組織を作りたいと考えたのもクラブを作った動機の一つですね。


またコンベンション会場では毎年オリジナルのZIPPOライターを数量限定で制作販売しているのですが、これらは全てZIPPO社のオフィシャルのライセンス認可のもとで加工されたものなんです。本社からのオフィシャルな許可はそう簡単には降りるものではないので、これも今まで30年間バカをやり続けてきた賜物ではないかと自画自賛しています(笑)。

 

 


渡部さんが創設した日本のオイルライタークラブ『FEEF(FAR EAST ETARNAL FIRE)』のオリジナルZIPPO。5つのモデルが存在している
 出典  Funmee!!編集部
渡部さんが創設した日本のオイルライタークラブ『FEEF(FAR EAST ETARNAL FIRE)』のオリジナルZIPPO。5つのモデルが存在している


—— コレクションにはゴールがあるんですか?


どうでしょうね(笑)。人それぞれに、それぞれの価値観があるからなんとも言えないですよね。中には数にこだわってコレクションする人もいるし、数というよりも質の高さや希少性にこだわる人もいます。僕も気が付けば30年間集め続けてきましたが、独身だった頃はそれこそ稼ぎの全てをつぎ込んでました(苦笑)。ここまでのめり込むと、誰にでも理解してもらえる範疇の事ではないと思うので、結局のところは自分自身が満足できるところがゴールということなんでしょうかね。研究をすればするほど、ZIPPOを知れば知るほど、欲しいと思ってしまうものはどんどん増えていくので、なかなか満足できないですけどね。


僕はライター本体だけではなく、ライターが販売されていた時の箱やパッケージなども収集していますし、クラブを立ち上げてからはZIPPO以外のオイルライターも収集の対象になっているので、たぶんゴールは無いのかもしれませんね(笑)。




世界中のファンに愛されてきたライターの逸品、ZIPPO。強風をものともしない着火性。戦場でも愛用された堅牢性。極めてシンプルな構造によるメインテナンスの容易さ。80余年の歴史を彩る名作の数々にインスパイアされた、限定のコレクションを毎号お届けしている。


■プロフィール

渡部 達也さん

 

大学生の頃アメリカを旅行中にZIPPOと出会い収集をスタート。コレクションの熱意が高じてZIPPOの歴史を解明することに没頭。やがてそれらの資料は本社からも評価されるまでになる。1998年に発売された「創業65周年記念モデル」のパッケージには、自身の「顔写真」が掲載されている。



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文:金原悠太(Yuta Kinpara)

写真:澤田聖司(Seiji Sawada)



2018年3月22日
Funmee!!編集部
Funmee!!編集部

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