「キャンプ」よりも、「海外」よりも、刺激的。 『ソルトワールド』編集長・大本英則さんの釣りライフ


海のルアーフィッシング専門誌『ソルトワールド』編集長の大本英則さんは、「刺激」を求めて様々なアクティビティを体験。そして行き着いた究極の刺激が、「釣り」でした。

いにしえより人類を魅了してやまない「釣り」の魅力を、大本さんの人生を通して語ってもらいました。読めばきっとすぐにでも、海に出て竿を動かしたくなるはずです!

死の恐怖に打ち克った 12歳時の釣り体験

 出典  Funmee!!編集部

 

―― 釣り専門誌の編集者として20年のキャリアを誇る大本さんですが、もともと釣りを始めたのはいつ頃なんですか?

 

小学校低学年の時かな。父親がアウトドア志向で、子供の頃からスキーとかキャンプに連れて行ってもらっていたんです。その中でも、比重が高かったのが釣りで。地元・池ノ上の商店街のおじさんたちが船釣りに連れて行ってくれたんです。

 


―― 10歳そこそこで船釣りデビューですか! 船酔いはしなかったんですか?

 

もちろん最初は酔いましたよ(笑)。今考えると良かったのですが、一緒に行っているメンバーはあまり子ども扱いしなかった。酔っているからって丁重に看病されるなんてことはなく、釣りに夢中の大人たちを横目に、ゲーゲー吐いて寝ている感じ。

 


 出典  Funmee!!編集部


―― それでも釣りがいやにならなかったのはなぜですか。


そうですね。やっぱり魚を釣り上げるときの感動というか刺激は、学校生活にはないものでしたからね。あと、酔わなくなったターニングポイントがあったんです。

 


―― というのは?


今でも覚えているんですが、小学校6年の時に釣りに出た銚子沖でのこと。その日はとんでもない大荒れで。波で船が揺れ激しく上下し、小さい僕は身体が浮いてしまい、船にしっかりつかまっていないと海に投げ出されてしまうような状況です。大人も酔って伏せているから、僕が海に落ちても誰も気づかないし、助けてくれないと感じました。本当に死の恐怖に襲われた。でも、それと同時に「ヒラメを釣るぞ!」という強い気持ちがあって。生死の境で、釣りに集中できた自分に出会って、それ以来なぜか酔わなくなりました。



“感情をコントロールできないほどの刺激”は、釣りにあった。


―― それ以来、ずっと釣りを趣味としてきたのですか?


いや、じつは一回釣りから離れたんです。中学でサッカーにハマって、あと思春期は父親とも距離感ができるじゃないですか。だからどんどん釣りのウェイトは低くなっていった。そして高校に入るとDJやったり、卒業後はキャンプもやって、渓流釣りもその時始めた。でも、それも楽しいは楽しんだけど、夢中にはなれなかった。どこかで、満ち足りない気持ちがあった。刺激がほしかったんです。

 


―― まだ“刺激欲”は満たされなかったんですね。


その後は海外へバックパッカーとして、お金を貯めては放浪するようになって。最初はニューヨークだったんですけど、やっぱり都会の水は肌に合わなくて(笑)。東南アジアをめぐって、ヒマラヤに登ったりもしました。今振り返ると、「見たこともない景色」や「会ったことのないような人」をひたすらに求めていたんですね。

 


 出典  Funmee!!編集部

―― そのまま海外に“沈没”してしまってもおかしくなさそうですが、23歳で日本に戻ってきました。帰国したのには理由が?


うーん……海外にも刺激はたくさんあったんですけど、一生の仕事として刺激があるものを見つけたかったというか。旅行中は写真に凝っていたから、カメラマンを志して今の出版社の門を叩いたら、編集兼カメラマンならいいよ、と。ちょうど釣りの編集部に入れて、そこでソルトウォーターフィッシング=海でのルアーフィッシングに出会ったんです。

 


―― それは、これまでハマったアクティビティとは違ったんですね?


はい。雑誌づくりを通して、自分でもいろいろと体験するうちに、その奥深さにどんどん魅了されて。大きい魚を釣るも良し、繊細な魚を釣るも良し。「特定の魚を狙うか、量を狙うか」というさまざまな楽しみ方があって、それぞれに異なる戦略がある。釣りの過程では、クジラ、イルカ、マンタなどに出会うことも。だから、飽きが来ないんです。ゴールがない。



 出典  Funmee!!編集部


―― ソルトウォーターフィッシングの醍醐味はどんな点ですか?


何と言っても狙い通りに釣れたときの快感です。例えば、こんな光景がたまに船では見られるんですが、ずっと狙っていた一匹を手にした釣り人は、身震いしたり、時には涙を流している。大の大人が日常生活で感涙にむせぶことなんてなかなかないでしょう。僕も8キロのマダイを獲った時は武者震いしました。釣りは、そんな体験が「気軽に、しかも一生できる趣味」なんです。


中国の古いことわざにこんな一節があるんです。

「1時間、幸せになりたかったら酒を飲みなさい/3日間、幸せになりたかったら結婚しなさい/8日間、幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい/永遠に、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい」


本当にその通りだと思います。

 


―― 大本さんが人生をかけて求めてきた刺激とは、一言でいうと何なのでしょう?


「感情をコントロールできないほどの体験」ですかね。自然と泣いたり、笑ったりしてしまうような。さっき言ったように、釣りにはそれがあるんです。新しい場所に行き、とんでもない生き物を手中に収める。その感動は毎回新しく、繰り返しはないんです。



すぐにでも始められる! 意外と簡単な船釣りの方法

 出典  Funmee!!編集部


―― まったくの初心者は、船釣りをどう始めるのが良いでしょうか?


何事も同じで、最初は先生が必要です。船釣りでは、船長が先生。乗合船という釣り専用の船に乗れば釣れやすい場所に連れていってくれるし、釣り道具もすべてレンタルできます。もちろん、釣り方も教えてくれる。

 


―― 場所はどういったところがおすすめですか?


東京近郊にお住まいの方ならば、東京湾や相模湾といった近海がオススメです。波が静かで船酔いもしづらいですから。東京湾ではタチウオ、相模湾ではアジなどが獲れますよ。

 


―― 初心者でも釣れるんですね! では、船釣りの一日を教えてください。朝が早いイメージがあります。


早朝の方が魚が獲れるので、どうしても朝型になりますね。だいたい朝6時くらいに船に乗り出発、昼過ぎに港に戻るケースが多いです。夕方には帰宅し入浴し、釣ってきた魚をさばいて晩酌のツマミにする。最高でしょう(笑)。

 


―― 最高です!


釣りの良いところは、準備から楽しいということなんです。まず、訪れる場所をリサーチし、そこに合ったルアーなどの道具をそろえる。次に、戦略づくり。イマジネーションを持って、仮説をたてるんです。ただノープランで糸を垂らしても意味が無いので、これが実に大切。戦略の有無が、釣りの楽しさを左右します。それも経験によって選択肢が広がります。



 出典  Funmee!!編集部


―― なるほど。テクニックも必要なんですよね?


そうですね。ルアーでいえば、上手に動かして、魚に餌だと騙すことが肝心。いかに自然に見せるかが問われます。だから、短気な人の方が向いているんですよ。状況に応じて手を変え品を変え、常に動かす「攻める釣り」が必要だから。

 


―― それは意外です。なんとなく、釣りというと長閑なイメージを浮かべがちですから。


もちろん、堤防でのエサ釣りなどはそういうスタイルです。自然をより楽しめる渓流釣りなど、種類によってまったく異なる魅力があるのが釣りのいいところ。ただ、共通点はあって、どれも釣りの最中は「余計なことを考えない」ということ。だから、日常をリフレッシュするのにぴったりです。

 


―― 最後に、約40年前から海釣りをしている大本さんは、最近の海や釣りの状況をどう捉えていますか?


やはり、海の環境は10年前、20年前より悪くなり、魚は確実に減っています。僕が言いたいことは、「必要以上は獲らない」ということ。自分が食べる分だけ持ち帰り、あとは逃しています。もし傷ついてしまって、仮に放してすぐに死んでしまうことがあっても、海の栄養になる。


釣りは、生き物を捕え生命を奪うわけです。奪う以上は無駄にしないで、大切にいただく。その点では、お子さんの食育にも役立つ趣味なんです。




■プロフィール

「ソルトワールド」編集長

大本英則さん

1974年東京都生まれ。幼少時からアウトドアに親しみ、バックパッカーとして世界を回った後、海のルアーフィッシング専門誌『ソルトワールド』(エイ出版社)編集者に。現在は同誌の編集長を務め、釣りの魅力を発信している。プライベートではエサ釣りも楽しみ、釣った魚での料理も得意とする。

 




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企画・編集協力:枻(エイ)出版社

文:鈴木聡(Satoshi Suzuki)

写真:大本英則 (Hidenori Omoto)



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Funmee!!編集部

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