【趣味人ジドウシャ部】#14 ランチア・デルタHFインテグラーレ・エボリューション(ディテール編)

クルマの新旧や機能だけでなく、趣味性の高いクルマ、さまざまな趣味への汎用性が高いクルマを紹介するこの連載。14台目は「ランチア・デルタHFインテグラーレ・エボリューション」です。

 

スペック編ではWRC(世界ラリー選手権)を戦うために生まれてきた背景をご紹介しましたが、ここではそのディテールと試乗記をレポートします。また、スポーツ性が強調されがちなモデルですが、そのクラシックな趣は次世代に残すべき稀代の名車といえます。



フロントフェンダーのエアアウトレットは市販モデルはダミーですが、こうした部分もホモロゲーション取得に必要となります。サイドのHFエンブレムには象が4頭描かれます

フロントフェンダーのエアアウトレットは市販モデルはダミーですが、こうした部分もホモロゲーション取得に必要となります。サイドのHFエンブレムには象が4頭描かれます

 出典  Funmee!!編集部


WRCのルール改正に合わせ急ピッチで開発されたランチア・デルタHF は、モデルイヤーごとにスペックが異なります。勝利の方程式に則り年次改良が行われるモデルだけに、デザインもスペックも常に進化し続けます。大まかなアウトラインをご紹介しましょう。

 

最初期の生産モデルは1987年に登場し、車名は「ランチア・デルタHF 4WD」。2ℓ直列4気筒ターボエンジンは最高出力165hpで、4WDシステムはセンターデフとLSDがトルセンタイプでした。

 

1988年シーズンを睨み開発されたモデルが「ランチア・デルタHF インテグラーレ」です。エンジンはタービンを変更しインタークーラーを大型化。それにともない冷却系も改善し最高出力は185hpに向上。また大きなディスクローターとワイドタイヤが必要となり、結果的にブリスターフェンダーを採用しています。



スクエアなデザインのコンビネーションレンズがシンプルでクールな印象を作ります。ブルーのインテグラーレのエンブレムが際立ちます

スクエアなデザインのコンビネーションレンズがシンプルでクールな印象を作ります。ブルーのインテグラーレのエンブレムが際立ちます

 出典  Funmee!!編集部


1989年シーズンはさらなる出力向上が望まれ、エンジンを従来の8バルブから16バルブに変更。エンジンヘッドが大型化したため市販モデルのボンネットが盛り上がった形状になります。最高出力はついに200hpを獲得し、車名は「ランチア・デルタHF インテグラーレ16V」に。

 

1992年のファイナルシーズンを戦うために送り出されたのが今回の撮影車両でもある「ランチア・デルタHFインテグラーレ・エボリューション」です。外観上はより広げられたトレッド(2インチ幅広のタイヤを履くため)に対応するブリスターフェンダー、新デザインの前後バンパー、可変式テールゲートスポイラー、5穴のハブが特徴となります。



応力分散性と放熱効果に優れたホイールデザイン。こうした手抜きのないデザインが機能美を作り出しています

応力分散性と放熱効果に優れたホイールデザイン。こうした手抜きのないデザインが機能美を作り出しています

 出典  Funmee!!編集部


ボディも大幅に強化され、またエンジンの最高出力も210hpに向上。ボンネットのエアアウトレット数を追加し、またフェンダーにも冷却効率を高めるためエアアウトレットを新たに設けています。

 

ワークス活動終了後も人気の高さから市販モデルは継続生産されました。そのモデルが1993年から1995年まで販売された「ランチア・デルタHF インテグラーレ・エボリューションII」です。



モデル毎に増え続けたのがボンネット上のエアアウトレット。コンパクトなエンジンルームだけに、冷却面に配慮した設計です

モデル毎に増え続けたのがボンネット上のエアアウトレット。コンパクトなエンジンルームだけに、冷却面に配慮した設計です

 出典  Funmee!!編集部


エンジンはさらにブラッシュアップされ最高出力215hpに。シート形状が見直されよりサポート性の高いレーシーなデザインとなります。販売台数も多く中古車市場でも中心となるのはこのモデルとなります。



スピードメーターは45分、タコメーターは15分の位置から始まる点にご注目。競技車両なので基本的にはタコメーター優先です。実にスパルタン!

スピードメーターは45分、タコメーターは15分の位置から始まる点にご注目。競技車両なので基本的にはタコメーター優先です。実にスパルタン!

 出典  Funmee!!編集部


さて、実際にエボリューションIIに乗った経験から申し上げますと、街中の実用域ではラリーでの活躍をイメージするほど速くはありません。シフトストロークも大きめで、そのシフトフィールも期待以上にカチッとしたものでもありませんでした。

 

しかし、イタリア流に倣い最高出力を発生する5,750rpm付近までキッチリ回してやると、なんと気持ちのいいことか。実にファンな走りを披露してくれます。2,500rpmで最大トルクの308Nmを発生する2ℓターボとはいえ、さすがイタリア車というべきか、自然吸気エンジンのように、回してこそその真価が表れるのです。



市販モデルであるエボリューションのレッドゾーンは6,500rpmと自然吸気エンジン並みの設定となります。ちなみに過給圧は1.0barです

市販モデルであるエボリューションのレッドゾーンは6,500rpmと自然吸気エンジン並みの設定となります。ちなみに過給圧は1.0barです

 出典  Funmee!!編集部


ボア×ストロークは87mm×90mmと、若干、ロングストロークなディメンションをもつエンジンですが、圧縮比は8.0:1と現代車両と比較すれば低く、そんな点も影響しえいると思われます。

 

そして、走れば走るほどファンな気持ちにさせてくれるのは、その濃縮されたボディサイズです。全長3,900mm×全幅1,770mm×全高1,330mmでホイールベースが2,480mm。抜群にコーナーワークが軽快なのです。



ワイルドなフォルムのボディに対し、シングルテールのマフラーエンドが羊の皮をかぶった狼のようであり、マニア泣かせのディテールかも知れません

ワイルドなフォルムのボディに対し、シングルテールのマフラーエンドが羊の皮をかぶった狼のようであり、マニア泣かせのディテールかも知れません

 出典  Funmee!!編集部


ご参考までに現代車両で比較すると、ポルシェ911Tで全長4,525mm×全幅1,808mm×全高1,285mmでホイールベースが2,450mm。現在は安全基準などの観点から比較すべきではないでしょうが、ランチア・デルタHF シリーズのオーバーハングの短さが際立ちます。



ボディカラーはロッソ・ウィナーという希少性の高い純正色です。撮影車両は歴代オーナーが屋内ガレージ保管という非常にコンディションのよい車両でした

ボディカラーはロッソ・ウィナーという希少性の高い純正色です。撮影車両は歴代オーナーが屋内ガレージ保管という非常にコンディションのよい車両でした

 出典  Funmee!!編集部


今回、取材で訪ねたのは千葉県船橋市にある「ヴェローチェ」。1988年から輸入車事業部でイタリア車を専門に手掛けるランチア・デルタHF 世代ど真ん中の頼もしいショップです。

 

「弊社でもデルタは数多く取り扱いました。1995年の最終モデルでは国内でも取り合いのような状況で、それでもなんとか仕入れお客様にお納めした思い出があります」と語るのは同社の小林英司さん。ご自身もランチアファンで、過去にはテーマ・ワゴンに乗っていたそうです。



ガラスに刻まれたエンブレムとサプライヤーのマーク。ユーズド物件を見る時は全面チェックして車両の良し悪しを判断したいところです

ガラスに刻まれたエンブレムとサプライヤーのマーク。ユーズド物件を見る時は全面チェックして車両の良し悪しを判断したいところです

 出典  Funmee!!編集部


ガレージを拝見すると、ちょうどメンテナンスを終えたユーザーカーがあり、かなり惚れ込んで乗っている状況が伝わってきます。

 

「新車からお乗りいただいているお客様なのですが、オドメーターは10万kmを超えて、それでも日常的に使われています。いまなお変わらぬ愛情を注がれている姿を拝見し、こちらも身が引き締まる思いです」



最終モデルでさえ20年以上を経過していますが、いまなおその魅力は輝き続けます。文化遺産として末長く乗り続けていただきたいモデルです

最終モデルでさえ20年以上を経過していますが、いまなおその魅力は輝き続けます。文化遺産として末長く乗り続けていただきたいモデルです

 出典  Funmee!!編集部


荒れた個体の多い中、年々コンディションのいい個体が少なくなり、撮影させていただいたエボリューションも海外から引き合いがあると小林さん。しかし、新車で納め歴代オーナーすべてがガレージ保管してきた管理車両だけに、海外には決して出さないとも。

 

あらためて見る「ランチア・デルタHFインテグラーレ・エボリューション」は、僅かなヘッドライトの隙間を利用してより多くの空気を取り入れようと工夫するなど、エンジニアの試行錯誤が見え隠れする稀代の名車と断言できます。



歴代ランチア・デルタHFシリーズのなかでも、クラシックな趣をもつエボルツィオーネ。アルカンターラ仕様もありますがレザー仕様の雰囲気はまた格別かも知れません

歴代ランチア・デルタHFシリーズのなかでも、クラシックな趣をもつエボルツィオーネ。アルカンターラ仕様もありますがレザー仕様の雰囲気はまた格別かも知れません

 出典  Funmee!!編集部


また、エボリューションIIはサイドサポートの張り出したシート形状ですが、エボリューションは贅を尽くした高級車のようなシートであり、クラシックな趣が同居する風情ある室内空間が魅力です。

 

振り返ればデビュー当初のスマートなボディもまた魅力的であり、世界的人気の上昇もうなずけるものがあるのです。



輸入車の扱いを得意とする「ヴェローチェ」。ランチアのほか、アルファロメオやマセラッティも

輸入車の扱いを得意とする「ヴェローチェ」。ランチアのほか、アルファロメオやマセラッティも

 出典  Funmee!!編集部

ハセガワ 1/24 ランチア デルタ HF インテグラーレ 16v プラモデル

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■撮影協力

ヴェローチェ


フィアット、アルファロメオ、ランチア、マセラティなど、さまざまなイタリア車を扱う専門店。車両販売は本国直輸入の新車まで幅広く対応でき、メンテナンスで預かった車両は、作業終了後に屋内保管するなど、丁寧な対応を心掛けています。レアなパーツのストックもあり、イタリア車オーナーを万全のサポートで迎えてくれます。

 

千葉県船橋市習志野5-2-3

TEL:047-472-8777

営業時間:9: 00~18: 00

休み:水曜、祝祭日、GW/夏期/年末年始休業



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文:教重誠一(Seiichi Norishige)

写真:新井康介(Kosuke Arai)



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Funmee!!編集部

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