【趣味人ジドウシャ部】#06 シトロエン・2CV(ディテール編)


クルマの新旧や機能だけでなく、趣味性の高いクルマ、さまざまな趣味への汎用性が高いクルマを紹介する連載「趣味人ジドウシャ部」。5台目に登場するのは「シトロエン・2CV」です。


映画『ルパン三世 カリオストロの城』でルパンが乗ったことでも知られる「フィアット500(チンクェチェント)」をこの企画の#04で紹介しましたが、「シトロエン2CV」は同じ映画でヒロインのクラリスが乗っていたクルマ。監督の宮崎駿さんの愛車としても有名です。


後編ではドライビングフィールやメンテナンスなどについてご紹介します。



キャンバストップを開ければ開放的な気分に

ボンネットの一番前方に設置されている空冷式水平対向エンジン。トランスミッションはその後方にセットされています

 出典  Funmee!!編集部


「シトロエン・2CV」の「2CV」とは、フランス語で「2馬力」を意味します。もちろん実際にエンジンの出力が2馬力しかないわけではなく、2CVがデビューした1948年当時のフランスの自動車税の課税基準のうち、出力が「2CV」カテゴリーに該当することに由来しています。



2CVのエンジンは、空冷水平対向式2気筒OHVエンジンです。1948〜1954年までは排気量375ccで、最高出力はわずか9HP/3,500rpmでしたが、1955年から排気量425cc、最高出力12HP/3,500rpmとなりました。そして1968年以降は排気量602ccとなり、出力は最終的には29HP/5,750rpmとなっています。


ユニークなのは、このエンジン、手動で始動することが可能な点。映画などで、戦前の旧いクルマのエンジンを手回しクランクをグルグル回してかけるシーンを見たことはありませんか? あれと同じことができちゃうんです。



手動でエンジンをかける際は、冷却ファン中央部に見える穴に、タイヤレンチを兼ねたクランキングレバーを差し込んで回転させます

 出典  Funmee!!編集部


2CVは4ドアでボディサイズは全長3,830×全幅1,480×全高1,600mm。フィアット500やクラシックMINIと比べると少しゆとりのあるサイズです。ルーフがこんもり丸みを帯びているせいもあって、外から見るとサイズ以上に大きく感じますが、運転席に乗り込むと、コンパクトに感じます。フロントウインドウの上下幅が狭いことが、それを強く感じさせる要因です。



天地幅の狭いフロントウインドウ。雨さえ降っていなければ積極的にキャンバストップを開けて走りたいところです

 出典  Funmee!!編集部


しかし、2CVの屋根はキャンバストップなので、くるくると後ろへ巻いてしまえばオープンになり、とたんに開放的な雰囲気になります。キャンバストップになっているのは、軽量化およびコストダウンのためでもありますが、フィアット500などと同様に、室内にこもるエンジン音を外に逃がすためでもあります。


と書くと、察しのよい方はおわかりでしょうが、このクルマ、走っているととってもうるさいです。エンジンが602ccとなった以降のモデルでも車重はわずか590kgと徹底的に軽量化されていることもあってか、エンジン音だけでなく、あちこちからガタガタ音がします。



幌をこのように後ろに巻くとオープンカーに。巻いた幌は横に渡されたバーにベルトで固定することで、前席上だけを開けることもできます

 出典  Funmee!!編集部


ただ、この軽量化のおかげで非力なエンジンでも思いのほかキビキビと走ってくれます。さすがに高速道路で時速100km以上で巡航することは無理ですが、街なかでは十分流れに乗って走ることができます。またMTでエアコンがついていないこともあって、燃費はリッターあたり15km前後と、旧いクルマにしてはなかなか優秀です。



一見クセがあるようでじつはとても素直な操作性

ハンドル横ににょっきりと突き出たシフトレバー。左右に倒しつつ押し引きして操作するのが独特で、始めはとまどうかもしれませんが、すぐに慣れます

 出典  Funmee!!編集部


大衆車とあって、インパネまわりは非常に簡素。必要最低限のものしか付いていないものの、1本スポークのステアリングを始め、何とも独特のデザインで、「ああフランス車だなぁ」と実感させられます。


また、シフトレバーがフロアからではなく、ダッシュボード下から手前に向かって水平に突き出ているのも特徴的です。ニュートラルからレバーを左に倒し、手前に引くと1速。逆に前方に押すとバックです。そしてニュートラルから前方に押すと2速で、手前に引いて3速。ニュートラルに戻してレバーを右に倒して前に押し込むと4速です。要は一般的なHパターンなのですが、あらかじめ知っていないとまず操作できません。


ハンドリングなどにはクセはなく(ただし、もちろんパワステではありません)、慣れてしまえばフツーに運転しやすいクルマですが、デザインや操作方法などがいちいち変わっているのが、やっぱりフランス車らしいところ。乗ってみて気に入るかどうかはその人次第ですが、「何だコレ?」と思いつつも「でもおもしろいじゃないか」と思ったなら、きっと長く乗れる愛車になることでしょう。   



パワーや静粛性など、今どきのクルマと比べるといろいろ足りないのですが、その足りないところが楽しいクルマです。ちなみに撮影車両は1988年製

 出典  Funmee!!編集部


実際に所有するとなると、気になるのはメンテナンスについて。しかし他の国の国民車と呼ばれるクルマ同様に、長く製造されていた大衆車だけに壊れにくく、また壊れても直しやすいクルマです。もちろんこれも他のクルマ同様に、壊れて立ち往生するような状況に陥る前に、消耗部品を交換するなどこまめにメンテナンスすることは必須です。


「シトロエンはクセのあるクルマが多いですが、2CVはつくりがシンプルなので扱いやすいですね。カンタンにバラバラにできちゃいますから」と語る、欧州車の整備・販売を手がけるミヤマエ・オートの冨岡文雄さん。



ミヤマエ・オートでは、販売車両や整備から手がけるようになった車両を含め、現在も50台ほどの2CVの面倒を見ているそうです。「2CVには根強いファンがいますね」と冨岡さんは語ります

 出典  Funmee!!編集部


シトロエンといえば、エア&油圧式の「ハイドロニューマチック・サスペンション」が有名で、快適な乗り心地の反面、壊れると直しにくいために旧いシトロエン乗りにとっては悩みの種でもあります。しかし2CVのサスペンションは「前後関連懸架」と呼ばれる独自のシステムながら、しくみとしてはコイルスプリングサスペンションなので、そうした心配はありません。


ただし、キャンバストップということもあって気密性は皆無なクルマなので、保管方法には要注意。屋外で雨ざらしにするのは避けたいところです。また雨の日に走った際に室内に多少水が入ってしまうのは、そういうものだと思って気にしちゃいけませんが、カーペットを濡らしたままにしておくのは厳禁。湿気でボディが錆びやすくなり、放置するとフロアに穴が空いてしまうことも。逆に言えば、もしこれから2CVを購入しようと思う方は、そうしたボディの錆はしっかりチェックしておきましょう。   




■取材・撮影協力

ミヤマエ・オート

1985年創業。フランスやイタリアの小型欧州車を中心に、輸入車全般の車検、整備、販売を行う。旧車を得意としつつ、高年式モデルまで対応できる整備技術と部品供給ルートを持ち、欧州車オーナーにとって“困ったときの駆け込み寺”的存在。


神奈川県川崎市宮前区菅生2-4-7

TEL:044-976-3576

営業時間:10:00〜20:00

休み:日曜、祝日、第2土曜



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文:和田達彦(Tatsuhiko Wada)

写真:銭田豊裕(Toyohiro Zenita)



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Funmee!!編集部

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