【ポケットの中の博物館】#18 世界唯一!?“頭蓋骨”がテーマの「シャレコーベ・ミュージアム」


世界唯一の、ユニークな私設博物館をオープンした人が兵庫県尼崎市にいる。

 

頭蓋骨をモチーフにした、1階から3階まで全館スカル一色のシャレコーベ・ミュージアムだ。なぜこのような不気味で、縁起でもないものだけを集めたミュージアムを開設したのか。

 

ファッションだけでなく、考古学や文化人類学の勉強にもなる、“恐怖の館”へお招きしよう。



世界各地から集めたスカルが並ぶ館

誰がどこで作ったのか、エルヴィス・プレスリーやマイケル・ジャクソン、マリリン・モンローなどの有名人の骸骨フィギュアがある

 出典  Funmee!!編集部


マイケル・ジャクソンの骸骨フィギュア、スカルのライター、シャレコーベのレプリカなど、頭蓋骨を象った、3階建てのその建物は全館スカルのオンパレード。

 

「昨年世界中のミュージアムを見てきましたが、スカルだけを集めたミュージアムはありませんでした」

 

河本圭司さんは、30年間世界中のスカルグッズを蒐集してきた。コレクション数は約7,400点。そのうちの約1,000点をシャレコーベ・ミュージアムと命名した私設博物館に展示している。



シャレコーベ・ミュージアムには、さまざまなスカルが並ぶ

 出典  Funmee!!編集部


1階は読者が好きそうなバックルやブーツ、Tシャツなど、スカルをモチーフにしたアイテムがびっしりと並んでいる。

 

2階は文化人類学コーナー。ネパールやバリなど、頭蓋骨を祀るヒンズー教の頭蓋骨の模型の他、骸骨のフィギュアなどが飾ってある。

 

3階は、ネアンデルタール人やクロマニョン人、北京原人の他、最古の人類とされるサヘラントロプスの頭蓋骨を集めた考古学コーナー。



ネアンデルタール人、クロマニョン人、北京原人のスカルが並んでいる。「10万年前に登場した人類の祖先の頭蓋骨は、我々とほぼ同じ大きさ」と河本さん

 出典  Funmee!!編集部


なかには本物の頭蓋骨もあるというのだが、これほど悪趣味な博物館はないだろう。「気味が悪い」、「縁起でもない」と怒り出す人もいるが、河本さんはいたって大真面目。

 

「入ってきたばかりの時は怖がっていた子どもが、しばらくすると平気で遊びはじめるようになります。頭蓋骨は怖いものではないことを肌で感じてほしいんです」



2階の一画にある、頭蓋骨を祀るヒンズー教のスカル・コーナー。主に上段がネパールで、下段がバリ島のスカル

 出典  Funmee!!編集部

 

河本さんは、このミュージアムの館長でもあり、関西医科大学名誉教授(脳神経外科)でもある。脳腫瘍が専門の脳外科医として、学術的かつ考古学的な見地から頭蓋骨を蒐集している。

 

昔は仕事の象徴として、頭蓋骨のキーホルダーを集め、愛車のカギに付けるだけで満足していた。ところが28年前、いろいろな動物の骨を扱うサンフランシスコのボーンショップで、チベット産のチベット密教の法具であるチベタンスカル(頭蓋骨)と出会い、ひと目惚れ。



記念すべきコレクションの第1号の「チベタンスカル」。購入後に家族に不幸な出来事が次々と起こった、いわくつき

 出典  Funmee!!編集部


「全身に電気が走りました。目にビー玉を入れるなどの装飾が施された頭蓋骨なんて今まで見たことがありません。大枚をはたいて購入してしまいした」

 

ところが帰国後、矢継ぎ早家族が災いに見舞われた。「頭蓋骨の祟りだ」と家族に非難され、神社でお祓いしてもらったおかげでなんとか災いは収まった。すると今度は本人が“悪性の病”に感染。そのチベット産の頭蓋骨を手に入れたことで、その蒐集に目覚めたのだ。

 

博物館を開設しようと決意し、それから15年後の2003年、自宅にミュージアムをオープンした。



医療機器メーカーが再現してくれた河本さんの頭蓋骨。「これのおかげで死後、自分の頭蓋骨はミュージアムに飾らずに、火葬してもらえそうです」

 出典  Funmee!!編集部

 

頭蓋骨はけっして怖いものではない


その昔から世界では骸骨が親しまれてきた。たとえば古代エジプトでは、饗宴の席に骸骨を飾っていたという。「木製の骸骨を棺に入れ、『死んだらこうなるのだ』と言って、参加者に酒をすすめた」と書かれた文献が残っている。

 

「死を忘れるな、いつ死ぬかわからないのだから、生を楽しめという思想が欧州には根付いています」



シャレコーベ・ミュージアムは外観もスカル

 出典  Funmee!!編集部


世界には、頭蓋骨や骸骨に関してさまざまな思想や風習がある。そのことを河本さんはこのミュージアム通じて、啓蒙したいと考えているのだ。

 

そのスカルが、いまやTシャツやアクセサリーなど、デザインとしてファッションの世界にも浸透している。



気味が悪く、思わず目を背けたくなるようなバックル。いったい誰が身に着けるんだろう?

 出典  Funmee!!編集部


「昔はアウトローが、自分たちの反社会的な生き方の象徴としてスカルグッズを身に付けていました。一方、近年のスカルブームには思想的な背景はほとんどなく、ファッションとして親しまれています」

 

1階でファッションのスカルを見た後、2階に上がると驚くかもしれない。子どもが喜びそうなカラフルなハロウィン人形が並んでいるのだ。ボタンを押すと「トリック・オア・トリート」としゃべったり、歌って踊るカボチャの形をした人形もある。



2階のハロウィン・コーナー。ボタンを押すと、歌いながら踊るスカルや骸骨人形が展示

 出典  Funmee!!編集部


しかし、なぜシャレコーベ・ミュージアムの文化人類学コーナーにハロウィン人形が置いてあるのか、その理由がまったくわからなかった。

 

「ハロウィンのカボチャはスカルをモチーフにしているんです。秋の収穫祭だから、カボチャがたくさん採れる。それをくり抜き、スカルに見立て、ロウソクなどを仕込むのが、ハロウィンの伝統でした」

 

子どもたちに恐ろしそうな骸骨を見せることで、怖いものの存在をアピールし、馴染ませるのが、ハロウィン人形本来の目的だった。



清の時代、裁判で死刑が決まると書類に押されたという印鑑。怨念がこもっていそうで、本物の頭蓋骨以上に怖い

 出典  Funmee!!編集部


昨今日本でも10月になるとハロウィンの仮装パーティーの風習が定着しつつある。が、なぜハロウィンにカボチャが登場するのかその理由を知らず、ただお祭り騒ぎをしている人が多いと河本さんは指摘する。

 

ハロウィンの本当の意味を教える意味もあり、このミュージアムでは毎年10月の最終日曜日にハロウィンフェスティバルを開催している。

 

「仮装フェスティバルには子どもが大勢参加します。なぜハロウィンにスカルをモチーフにした仮装をするのか、その文化的な背景を理解した上で盛り上がってほしいんです」



ブラックデス、すなわち黒死病(ペスト)という名の酒。左からウォッカ、テキーラ、ジン、ラム、スピリッツ

 出典  Funmee!!編集部

 


■プロフィール

河本圭司さん

 

スカルグッズ蒐集家、シャレコーベ・ミュージアム館長、関西医科大学名誉教授(脳神経外科)。30年に渡り、スカルに関連したグッズや、古代の人類の頭蓋骨などを蒐集。脳腫瘍が専門の脳外科医でもある。

 

シャレコーベ・ミュージアム

兵庫県尼崎市浜田町5-49

TEL:06-6417-7069

開館時間:10時~17時(日曜日のみ開館)

入場料:中学生以上500円、小学生200円

 

 

===

文:中島茂信(Shigenobu Nakajima)

写真:藤田修平(Shuhei Fujita)

 

 

■注記

本企画はライフスタイル誌「Lightning(ライトニング)」(枻(エイ)出版社)の連載「ポケットの中の博物館」の再掲載になります。



最新情報はこちらから フォローやいいね!をして最新情報を受け取ろう

Funmee!!編集部

Funmee!!編集部

TOP