【ヘンアイ国産自動車の会】#05 トヨタ・セラ (スペック編)


最近は路上で見かける機会も少なくなった、でも鮮烈に記憶に残る、少し変わった日本発のクルマたち。そんなクルマとの毎日を楽しんでいるオーナーさんに愛車の魅力を語ってもらう「ヘンアイ国産自動車の会」。今回は「トヨタ・セラ」です。

華やかなバブル時代に、若者たちがつくったクルマ


トヨタ・セラが発売されたのは1990年。1987年の東京モーターショーに出展された「AXV-2」というコンセプトカーがベースになっています。つまりバブル経済華やかなりし頃に企画され、市販されたモデル。



バブルの時代に発売されたセラ

 出典  Funmee!!編集部


当時、トヨタには「Yプロジェクト」と呼ばれる開発チームが存在していました。「Y」とはヤングの意味で、つまり若手開発スタッフが集まり、若い人に向けた商品を開発するチームです。


「セラ」および「AXV-2」は、この「Yプロジェクト」が開発を担当したモデルでした。



小さな車体に、大きな翼


セラの特徴は、なんといってもそのドアの開き方にあります。厳密にはバタフライドアと呼ばれる形式ですが、ここではトヨタがそう呼んでいたように、ガルウィングドアという呼び名で統一したいと思います。


ガルウィングというドアの形式は、古くは1950年代のメルセデス・ベンツ300SL(石原裕次郎や力道山が乗っていたことで有名です)や、‘80年代に一世を風靡したランボルギーニ・カウンタックなど、スーパーカーに採用されるケースがほとんどでした。もともと車高の低いスポーツカーでも乗り降りがしやすいように開発されたドアの形式だったからです。



扉を閉めると、ベーシックなコンパクトカー

 出典  Funmee!!編集部


けれどもセラは、トヨタの当時のベーシックなコンパクトカーである「スターレット」をベースに開発したモデル。こうした小型車にガルウィングを採用したことが、大きな話題となりました。


邂逅編で「Yプロジェクト」についてふれましたが、当時は良くも悪くも「おもしろいモノを作れ」という浮わついた雰囲気があったことがうかがいい知れます。



「未来に向けてはばたく」という願いを込めたモデル名だったが……


トヨタ・セラの発売当時のコンセプトというか売り文句は、「全天候型のオープンカー」というものでした。ルーフ(屋根)までガラスで覆われていたことから、天候を問わずにオープンカーの感覚が味わえたのです。ただし天気が良い日には車内の温度が上がり過ぎてしまうことから、日を遮るサンシェードも用意されました。



1.5ℓの直列4気筒エンジンが積まれている

 出典  Funmee!!編集部


エンジンは、ベースとなったスターレットに積まれたのと共通の1.5ℓの直列4気筒エンジン。出力と高効率を両立するために開発した、トヨタが「ハイメカツインカム」と呼んだエンジンです。ただし最高出力は110psなので、動力性能はフツーのコンパクトカーと同等。格好ほど速いクルマではありませんでした。


駆動方式もスターレットを踏襲してFF(前輪駆動)。トランスミッションは4ATと5MTをラインナップしましたが、現在は5MTはかなりタマ数が少なくなっています。


ボディサイズは、全長×全幅×全高=3,860×1,650×1,265mmと、現在の軽自動車規格よりひとまわり大きい程度なので、実にコンパクト。特筆すべきは890kgという軽さです。1990年代に入るとクルマは衝突安全性能を高めるために大きく、重くなったので、この軽さは貴重です。



当時発売されていた、『別冊モーターファン』でも特集が組まれていた

 出典  Funmee!!編集部


ちなみに車名はフランス語「entre(〜である)」の未来形から、「未来に向けてはばたく夢のあるクルマ」という意味を込めて命名されたもの。


ただし、マニアには受けたものの若者全般に広まったとは言い難く、1代で生産は終了となりました。未来に向けてはばたくことはかないませんでした……。




■プロフィール

鈴木真人さん


1960年生まれ。出版社に勤務、女性週刊誌やファッション誌、自動車専門誌などの編集に携わる。現在は独立してフリーランスのライターやエディターとして活躍する。



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文:サトータケシ(Takeshi Sato)

写真:鳥居健次郎(Kenjiro Torii)


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