【ポケットの中の博物館】#16 めざせ!“ゴム”ガンマン!! 本気の遊びが競技になったゴム銃


なぜ人は蒐集するのか。彼らのポケットの中を覗くことで、趣味を人生の中心に据えるに至った価値観をつまびらかにしよう。

 

割り箸鉄砲なんてもう古い? 子どもの頃遊んだ懐かしいゴム銃が、木製モデルはもちろん、アルミを加工したスタイリッシュなゴム銃など大変なことになっている。

 

単発銃やショットガン、マシンガンなど、さまざまな機構を取り入れたゴム銃まであり、競技を行なっているというのだ。そんな訳で現代のゴム銃を取材した。



劇的に進化を遂げた平成のゴム銃

中村理事長(中央・キャップ姿)が2000年になかば洒落で「日本ゴム銃射撃協会」のHPを立ち上げた。「1年で会員が100名も集まり、これは本気モードになるしかないと悟り、競技会を実施することにしました」

 出典  Funmee!!編集部


割り箸鉄砲で遊んだ経験がない少年はまずいないだろう。割り箸に輪ゴムを巻きつけて作ったゴム銃は、少年だった頃の宝物だった。そのゴム銃が近年劇的に進化している。昔ながらの割り箸製もなくなないが、木材と金属を併用したゴム銃や、アルミを加工したモデルガンのような秀作も登場している。

 

「単発銃もありますが、マシンガン、ライフル銃、セミオート連発銃など、凝ったゴム銃を自作する人が増えています。中には木の薬莢が飛び出すギミックを取り入れたゴム銃もあります」と語るのは、日本ゴム銃射撃協会の中村光児理事長だ。



半年かけて作ったバルカン砲「ステンレスモンスター」を抱え、気分はシュワちゃんだけど、腰にきます

 出典  Funmee!!編集部


かと思えば、映画『ターミネーター2』でシュワちゃんが使ったようなバルカン砲もどきの機関銃を製作した人もいる。スイッチを入れるとステンレスの銃身が音を立てながら回転し、輪ゴムが飛び出す。この最大500発装填可能な12㎏の力作は、腰で持たないと扱うことができない。作者の柴田将行さんによれば、「命中率は低い」そうだが、見た目のインパクトは抜群。思わず吹き出してしまった。



柴田将行さんが作った「ステンレスモンスター」。2週間で組み立て、その後改造を繰り返し、完成までに半年かかった。内蔵の電動ドリルで紐を巻き取ることで銃身が回転し、輪ゴムを連続発射。姿こそ仰々しいが、音は意外と可愛らしい

 出典  Funmee!!編集部


その他、雨どいを加工したショットガンや、TV特撮ドラマ「仮面ライダードライブ」に登場した銃のおもちゃを改造したものなど、ゴム銃の範疇を遥かに超えた作品を同協会の会員は本気で手作りしている。



一見やばそうだが、すべてゴム銃。コルトなどの既成品のトイガンを自分で改造したゴム銃を愛用するメンバーも多い。左は金属を加工した、イングラム風のサブマシンガン

 出典  Funmee!!編集部


「馬鹿なことを大真面目にやるのが楽しいんです。実はそうした面白おかしい銃を作りながら、年に20回ほど射撃競技を行なっています。その際自慢のユニークなゴム銃を持ち寄り、ゴム銃談義に花を咲かせつつも真剣に射撃競技をしています」

 

中村さんは、2000年に同協会を発足させた。現在各都道府県はもちろん、海外にも支部があり、会員は3,200人以上いるという。



協会では3種類の公式競技を実施


協会では3つの公式競技を行なっている。ひとつは、1.6m先に並べたマッチ箱ほどの大きさの的を5つ倒す「マッチボックス」。ふたつ目は、5つの小さな的を1m離れた場所から打つ「フライシュート」。



5つの小さな的(5×5×10mm)を1m離れて打つ「フライシュート」。レーザーポインター付きゴム銃でプレー中の藤橋みどりさんは、飲み友達だったメンバーが見せてくれたゴム銃に魅せられて入会

 出典  Funmee!!編集部


共に動かない的を狙う競技だが、動く標的を打つ「コインペンドラム」という競技もある。1.2m先に釣り糸で吊るした5円玉を1分間に何発当てるかを競うゲームだ。もちろん輪ゴムが当たれば5円玉が動く。この暴れる標的を射抜くのはかなり難しい。ところが、輪ゴムを当てた反動で、5円玉の揺れを抑える技を身につけた猛者もいるという。



釣り糸で吊るされた5円玉を1.2m離れて打つ「コインペンドラム」。コインか、釣り糸に命中するとポイントになる。1ラウンド1分の競技を3ラウンド行う

 出典  Funmee!!編集部


これら公式競技には連発銃は使わない。スコアを上げるため、ある程度重みがあり、命中率が高いオーソドックスな単発銃を使用する。勘だけが頼りだった割り箸鉄砲と違いレーザーポインターや、ダットサイト(ドットサイトとも)と呼ばれる照準器を装着したゴム銃で参戦する人が圧倒的に多いのだそうだ。



本物の拳銃やライフルはもちろん、エアガンにも採用されている、光学照準器のダットサイトを配した競技用のゴム銃。ガラス面に投影される赤い点と標的を合わせることで、より正確に照準動作を行なえる

 出典  Funmee!!編集部


毎年開催される全国大会には、全国から有志が馳せ参じ、腕を競う。年間チャンピオンになるとハワイ旅行こそないものの、賞状の他、みんなが持ち寄った賞品と名誉を手にすることができる。



ゴム銃の性能と射撃の正確性を競う「マッチボックス」。1.6m離れて、マッチ箱程の大きさの的を5つ打つ種目だ。1ラウンド5分以内で5ラウンド競技し、その合計点で競う

 出典  Funmee!!編集部


「競技の成績は年齢には関係ありません。親子で参加し、子どもに負ける親もいます。目がかすみ、手が震えるシニアも少なくありませんが、老若男女誰もが気軽に楽しめるのが、ゴム銃射撃の魅力です」

 

命中率はゴム銃の性能もさることながら、輪ゴムそのものの精度に左右される。寝かせた際輪ゴムの一部が浮いたり、楕円形になるものは、弾道に狂いが生じやすい。また、未使用のものよりも一度伸ばしたほうが伸縮率が一定になり、命中率が向上するのだそうだ。



「アルミサッシの加工を仕事にしているメンバーが作ったもので、性能も命中率もピカイチ」と語るのは、プレー中の奥野裕達さん

 出典  Funmee!!編集部


「ところでゴム銃の初速はどのぐらいあると思いますか? 以前NHKが撮影してくれた高感度カメラの画像を元に計算した結果、なんと時速150㎞もあることがわかりました(ちなみにバレーボールのサーブの初速は、世界最速レベルで時速約125㎞)」

 

コインペンドラムの場合、銃身が長いと弾の勢いがありすぎてコインの振りが大きくなりすぎる。そのため銃身が短いゴム銃が最適だ。



競技のときは皆真剣な目つきに。入会のきっかけは人それぞれ。ネットで協会の存在を知り、「こんなことを本気でやっている人がいるのか」と感化され入会したメンバーも

 出典  Funmee!!編集部


「輪ゴムを縦に装填するゴム銃の場合、輪ゴムは垂直に飛びます。マッチボックスのような競技にはそれでもいいのですが、吊り下げたコインやその釣り糸を狙うには、輪ゴムがフリスビーのように横回転したほうが命中率が高い。そのため輪ゴムを横掛にするゴム銃を使います」

 

コインペンドラムで高得点を狙うなら、1分間に輪ゴムを30発装填する技(これが難しい)と、数発しか外さない程度の腕を磨く必要がある。



シューティングも楽しいけれど、自分で作り上げる喜びもある。中学3年生の松岡璃玖君が先輩の作品を模して作った電動機関銃。リリーサーと呼ばれる電動装置がスライドして、銃身上部ののこぎり状のフックにかけた輪ゴムを連射する

 出典  Funmee!!編集部


エアガンの射撃競技経験者の遠藤秀夫さんによれば、ゴム銃はエアガンよりも安心して遊べるだけでなく、エアガンの射撃競技と同じぐらいプレッシャーを感じるという。だからこそゴム銃に取り憑かれたと語ってくれた。

 

「本物の銃と違いゴム銃には規制もないし、カッコいいわ。それに何よりも競技の緊張感が堪えられないの」とゴム銃射撃歴3年の藤橋みどりさんは微笑んだ。




■プロフィール

日本ゴム銃射撃協会

 

ゴム銃射撃の普及と、愛好者の親睦、情報交換を趣旨として2000年に結成。3つの公式競技種目をもつ大会を定期的に開催し、日本各地に約3,200名の会員がいる。公式競技の特典の高い順に「世界ランキング」も発表。

 

 

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文:中島茂信(Shigenobu Nakajima)

写真:藤田修平(Shuhei Fujita)

 

■注記

本企画はライフスタイル誌「Lightning(ライトニング)」(枻(エイ)出版社)の連載「ポケットの中の博物館」の再掲載になります。

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Funmee!!編集部

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